第参話 剣士イルス
役逆ミニ紹介!
No.4 サガ・エルドラゴ
年齢 441歳(アルガァ没時)
性別 男
職業 魔王軍大幹部
好きな食べ物 鶏肉(よく買い溜めしている)
嫌いな食べ物 トマト
得意魔法 雷魔法
しばらくして、俺が魔導書を読んでいると、イルスは目を覚ました。
イルスは身体を起こし、周りを見渡した。
「ここに運んでくれたのは君かな?」
「ああ、そうだ。俺が運んだ。」
イルスは頷くと、立ち上がり、俺の目の前に移動した。
「ありがとう…。えっと、君の名前は?」
「アルだ。」
ん?気絶している間に俺の名前、忘れていたのか?
「そうか、アルね。…アル、助けてくれてありがとう。おかげで僕は死なずに済んだ。」
見ている側からしたらかなり大袈裟だが、俺達にとっては大袈裟ではない。
実はこのあたり、人食い狼が出て来るのだ。一体だけならまだしも、奴らは集団で襲ってくる。
だから、あそこで倒れたままでいると、狼に食い殺されてしまうのだ。男のことも気になるし、何よりもかなりの凄腕剣士だ。あそこで食い殺されるのは勿体なさすぎる。
「気にするな。何せ、俺はお前が気になったからな。」
俺がそう言うと、イルスは首を傾げた。
「僕の何が気になるんだい…?特にそういったものは無いと思うけど…?」
当然、聞いてきた。俺は仕方なく、イルスの剣を指差した。
「お前の剣術だ。戦った時、お前の剣術に違和感を感じたん
だ。…そうだ!お前の剣、今ここで見せてくれないか?」
イルスは「あ、あはは…。」と言うと、後頭部を掻いた。
しばらくして、イルスは立ち上がり、すぐ近くの木に向けて剣技を放った。
「<牙狼>!」
イルスの剣が木に二回当たった。だが、これはただの二連撃ではない。
一回目は速いが力が入っていない。どうやら単なるフェイントだ。本命は二回目の攻撃。二連撃目は木に大きな傷を与え、大きく揺らした。衝撃が大きすぎて、木の上の鳥達も飛んでいったくらいだ。
…今まで見た中で、一番特殊だ。でも何か引っかかる…。
「どう?これが僕の剣術だよ。」
「ああ、凄い。他の流派とは全く違う!」
イルスは嬉しそうに少し剣を振り、鞘に収めた。
…む?今の剣の収め方…、俺が知っているあの剣士に似ているな…。
俺がそんなことを考えていると、イルスが俺に近づいてきた。
「そういえば、アルだっけ?君はどこへ向かっていたんだい?」
…やはり聞かれるか。正直に言って、イルスには言いたい。言って、俺の旅に同行してほしい。が、その後ろにあの人間達がいるのが厄介だ。
見た感じ、あの人間達にとってイルスは、「奴隷」なんだろう。
少し話して分かったが、イルスは断れない性格だ。それだけではない。俺と話している時、彼の目には光があった。
彼は何かしらを奴らに掴まれているんだろう。そうじゃなきゃ、俺とは戦わないだろう。
「お前が俺と一緒に来るんだったら話そう。」
イルスは俺の言葉を聞くと、首を傾げ、頷いた。
「分かった。僕は君と一緒に行こう。元々、あの人達のとこ
ろに居たかったわけじゃないしね。それに…。」
イルスはそう言うと、俺のことを指差した。
「僕だって、君のことが気になるからね。」