聖女の強さとお昼寝
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その日、闘技場には激震が走った。
ライアス様が、膝をつく前に聖女リアナが息を乱すこともなく立っている。
私にとっても、驚きの連続だった。もしかして、ライアス様は手加減をしているのではないかというほどに、剣の軌跡がはっきりと見えたから。
「お前っ、何をどうやったら数時間でここまで強くなる」
「それは……」
私は校舎の3階へと視線を移した。ディオ様と目が合うとこちらへと手を振ってくれた。
一年生の席には弟君がいる。
「まあ、真の力ってやつですかね?」
ライアス様は、悔しそうだ。私だって、魔力を呪いへの対応に使わなくていいだけで、こんなに違うとは思わなかった。
「でも、今だけですよたぶん」
毎日、あんなふうに弟君に魔法を使ってもらうわけにもいかない。
どうも、制限時間があるらしいのは、だんだん強く締め付け始めた蔦の存在が教えてくれる。
残念ながら、そろそろ制限時間が終わってしまうようだ。そうすれば、たぶんもう動けなくなってしまいそう。
「学年優勝はいただきました。本戦は棄権します」
「な……勝ち逃げか!いや、理由があるんだなリアナ」
「ライアス様はさすがですね。ご理解いただけて良かったです。では、帰りますね?」
「ああ……今度またすべてが片付いたら一緒に戦ってくれるか?」
私は、ライアス様に本気の笑顔を見せる。
今までいろいろ悔しい思いをしてきたのに、全力で戦うことができてすっきりした。
さ、早くディオ様と一緒に帰ろう。
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「素晴らしい戦いでした」
「目に焼き付けましたか?」
「ええ、女神のような姿を焼き付けましたよ」
相変わらず甘い台詞を全開で投げかけてくるディオ様も笑顔だ。
それでも、窓にもたれかかったままのディオ様がここから動くのは難しそうだ。
生徒会室のソファーに逆戻りするしかないだろうか。
「さ、行きましょう」
ディオ様に肩を貸そうとすると、息を弾ませたライアス様が現れた。
「あー。やっぱりこういうことになっているか。ディオ、ほら」
ライアス様に肩を貸してもらって、ディオ様が立ち上がる。
なんだか、スチル……心に焼き付けました。私こそありがとうございます。
生徒会室のソファーにディオ様を寝かせると、ライアス様は「本戦に遅れるから」と私たち二人を残して去って行ってしまった。
ディオ様のことは心配だけれど、呪いを押さえてくれていた弟君の魔力が抜けきって、もう私も動けそうにない。
「ディオ様……少しだけ眠くなってしまいました」
「そうですね。俺も……」
私たち二人は、お互いがとても負けず嫌いで強情だっていうことが分かった。
仰向けに眠るディオ様の胸に突っ伏して、私も強い眠気に逆らうことができなかった。
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