兄と同僚
どうして兄はいつも、危険なことばかりするのだろうか。そんなことを聞いたら、また乙女ゲーム世界のような兄の台詞を聞くことになるのかもしれない。
「お兄様、何をしていたんですか。こんなに傷だらけで」
「フリードが帰ってくる時は、いつもこんな状態だよ?妹ちゃん」
兄が同僚さんを、氷点下の瞳で見つめる。
兄を煽らないで!
でも、同僚さんが聞き捨てならないこと言った!
「リアナに余計なことを言うな。それに、何としても部屋に入れずに引き止めろと頼んだはずだが?」
「いや、余計なことを知って秘密裏に処理されるとか嫌だよ?妹ちゃんが多数ヤバい情報を持っているのを知った時点で、すでに抱えなくちゃいけない秘密として重すぎるよ?!」
普段であれば、同僚さんに詰め寄る兄、仲が良い二人の姿を堪能したいほどだけれど、あいにくそんな余裕が持てなかった。
「そうか……ならばこうしよう」
兄が同僚さんの左耳に顔を近づける。
内緒……話?えっ、やっぱり堪能したい!
見る間に同僚さんの顔が青ざめていく。
「ぐあっ!フリードお前っ。何でそれを俺に教えるんだよ!?それ、王家の重要機密だろ?!」
「ここまで来たら、お前にも巻き込まれてもらう」
「いっ、嫌だ!命がいくつあっても足りないじゃないか?!」
「ふぅん?じゃあもう一つ」
嫌がる同僚さんに無理矢理秘密の話をする兄。
同僚さんが次の瞬間固まって、ギギギ……と音がしそうな勢いで私の方を向いた。
「――――力になってくれないか」
「それ聞いて、ヤダって言えるほど人間辞めてない……だけど、ずるいぞフリード」
二人が話した内容は、もしかしたら、もしかしなくても私に関係しているのかもしれない。
だとしたら、関係ない人を巻き込むのは本望ではない。
「あの、ごめんなさい。同僚さん?巻き込むわけにもいかないので、兄が言ったことは忘れてください?」
「…………妹ちゃんがいい子すぎる!いや、俺は妹ちゃんの力になりたい。ならせてくれ!」
同僚さんこそいい人だ。
でも、兄は同僚さんに何を吹き込んだのだろうか。
「じゃ、情報頼む。そうだな、見返りはさらに上の情報でどうだ?」
「さらに上があるのかよ!もう聞かないからな!」
同僚さんは、走り去ってしまった。
あっ、名前聞き忘れた。
「あいつ……いいやつだよな」
兄がつぶやいた。
そんないい人を平気で巻き込んでフラグを立てていく兄に若干引く。
「お兄様……そういえば毎回そんな姿で帰ってくるって同僚さんが言ってましたね」
「あっ、それは……いや、リアナ?」
「……今日はもう、帰りましょう。そして、今日は私の部屋で語り明かしましょう」
「そ、それは流石に?いや、むしろご褒美でしかないんだけど?!それとも忍耐を試されている?!」
このあと、兄にむちゃくちゃお説教した。
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