禁書中の禁書って
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禁書庫の扉の奥は、なぜか草原だった。……さすが乙女ゲームの世界!でも、こんな設定あったのかな?隠しステージだろうか。
――でも、なぜだろう、ひどく懐かしい。
「ミルフェルト様。お招き頂き光栄です」
ここはミルフェルト様のプライベートスペースに違いない。ありがたき幸せ。私は淑女らしく礼をして感謝の気持ちを伝える。
「ああ。本当に危機感がない。帰るための扉もないんだ、ボクは君をもう帰さないかも知れないよ?」
この草原にミルフェルト様と二人きり。しかし、基本引きこもりとしては、少し広い以外心安らぐ空間だ。
「何その笑顔。ディオが気の毒になってくるな」
「……なぜここでディオ様?」
「ま、いいか。とにかくこれを見てよ」
そう言ったミルフェルト様が出してきたのは、一冊の日記だった。
(まさか……それ)
胸の奥がザワザワとして、少し薄れていた記憶の中から答えが浮かび上がる。
「リアナの手記」
私が思わず呟くと、ミルフェルト様の瞳が弧を描いた。
「読めるんだね?この文字が。しかも君の名前が入ってるなんて運命的だね」
「そう……ですね」
ファンブックの中で少し語られただけの、リアナの手記の現物がなぜここに。しかも、この文字は日本語だ。なんだか世界観がおかしい。
「君の秘密を今ここで暴くのもいいけど。まあ、あとの楽しみにとっておこうかな?」
「読んでも……いいですか」
「もちろん。そして聞かせて?」
なぜか日記はとても古びている。今にも朽ちてしまいそうなページを慎重にめくっていく。
ほとんどインクが薄れてしまい、残念ながら読み取るのが難しいが、記憶を辿りに単語を補いながら紐解いていく。
――――王家の――で、あの人が居なくなったことを知ってしまった。
せめて―――だけでも助けたいけれど、――に絡みついた蔦が私を――にしてしまう
「うん。字がわかっても掠れすぎていて意味がわかりません」
「分かったところだけでも、読み上げてみてくれるかな?」
私は素直に今読んだページを読み上げた。黙って聞いていたミルフェルト様はなぜか思案顔だ。
「王家の……呪いか?なぜ、漂流物にそのことが書いてある」
「ひょうりゅうぶつ?」
「他の世界から時に流れてくる。王家の一部とボクくらいしか知らない秘密だよ」
どこかで、この世界は乙女ゲームの色々なルートや前の世界と繋がっているということなのだろうか。
王家の――の解除には、――――が必要。でももう私には永遠に見つけられそうもない。
かろうじて開くことができた最後のページには、走り書きのような字でそんなことが書いてあった。
(えっ、なに?ここでもリアナが不憫すぎる破滅フラグの香りしかしないわ)
残念なことに新たな情報はなかった。でもたぶん呪いの解除に何かが必要なことだけは確からしい。
「……そろそろ帰ろうか。だいぶ時間が経ってしまった」
ミルフェルト様は、そういうけれど三十分もいなかった気がする。まあ、ディオ様をお待たせするのはよろしくない。早く帰ろう。
しかし、禁書庫に戻ると少し青ざめたディオ様が待っていて「良かった!」となぜか抱きしめられた。
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