正座の妹と兄の懇願
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世界樹の塔の前で、ディオ様とようやく泣き止んだフローラにお詫びをしてから別れた。
そのまま世界樹の塔に戻ろうと思ったが、今日も兄は手を放してくれず、公爵家まで手をつないで帰ることになった。
食事を食べて、お風呂に入る。その後、自室に行こうとすると兄に手を掴まれて笑顔で首を振られた。わかります。怒っているんですね?
兄のお説教は、かなり長かった。思わず正座で聞いてしまったため、お説教が終わった時には足が痺れて立ち上がれなくなった。
「……仕方ないな」
苦笑した兄が情けなく床に這いつくばる私を、お姫様抱っこしてくれる。なんでこんなに私のことを甘やかすのだろう兄は。
「重いでしょうに……」
「羽根のように軽いよ」
そんなことを言って微笑みかけるなんてことは、妹じゃなく他の人にしないといけないのに。
そう思って、顔がずいぶん近い兄を見つめていると、微笑んだままの兄が口を開いた。
「新しいことにチャレンジするときは、必ず何か起こすのがリアナだ。始める前に一応声くらいかけてくれ……」
もう、足の痺れも取れたというのに、兄が下に降ろしてくれない。
なんだか父が、羨ましそうに見ているし、使用人達の生暖かい視線もツライ。
これは何か、新手のお仕置きなのだろうか。
「リアナに何かあったらと思うだけで、寿命が縮まる気がする」
――――兄はこんなにも心配性だっただろうか。
私の部屋までお姫様抱っこをしたままだった兄は、足でドアを勢いよく開けた。
そんなにワイルドでしたか?そんなことする兄、初めて見ましたよ?
でも、ドアの開け方とは対照的に壊れ物を扱うかのようにベッドに降ろされる。
「何があっても必ず助けるから。その前に傷ついたり居なくなったりしないと約束してほしい」
跪いたままの言葉。
それはまるで、愛しい人への懇願のようで。
俯いたままの兄の長いまつ毛が影を落とす。
いつもなら、妹にそんな態度ダメだと心の中で線引きをすることができるのに、なぜか今はその態度を否定することができない。あまりに兄の言葉が真剣だったから。
少しだけ動揺しながら「約束します」と伝えると、ようやく兄は立ち上がった。
「今日はもう遅い。ゆっくり休むといい」
「あの、お兄様は」
「――――ちょっと、職場に行ってくる」
あれ?いつも超絶忙しい兄は、もしかしてフローラに呼ばれてから一日近くああして私が出てくるのを待っていたというのだろうか。
「あの、仕事は……」
有能な兄がいないと、最近の極秘文書管理室は回らないとうわさになっている。
仕事が兄の有能さによりどんどん捌かれているならいいのだが、兄のスピードに周りが巻き込まれてブラックな職場に変貌しているのではないかと、思わず同僚や上司たちの健康を世界樹に祈ってしまう。
「…………気にするな」
その沈黙!ダメなやつじゃないですか。兄が私に言いたくないことがあるときの間でしたよ。
さては、これから寝ないで働く気ですか?
「じゃ、いってくるから」
「――――いってらっしゃい」
そのまま背中を向けた兄の裾の長い服をベッドから降りて掴む。
「お兄様も、無理して何かあったら嫌ですよ」
「……そうだな。可愛い妹を泣かせたくないから、上手くやるよ」
笑顔で私の頭を軽く撫でると、兄は仕事へと出かけてしまった。
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