先輩におまかせ
生徒会での本日の議題は、今年度の武闘会についてだ。去年度の兄の雄姿は、一年たっても伝説として語り継がれている。これからも語り継がれるに違いない。
「はぁ。なんだかんだ言って、俺とディルフィールしか出席してないじゃないか」
そして、本日は王宮で夜会があるため、そのほかの役員はみんな不参加だ。ライアス様は、王太子なのに準備しないでフローラを連れて行って大丈夫だったのだろうか。というより、私はともかく、ランドルフ先輩は、夜会に参加しなくていいのだろうか。
気になって聞いてみると「ディルフィールをエスコートできるなら参加するけど?」という返答だった。
次期騎士団長が内定している侯爵家嫡男で、どんな女性も誘えば二つ返事のはずなのに、私にまで気を使ってくれるなんて、本当にいい人だ。
しかし、ランドルフ先輩は最近は本当に忙しいらしく、いつも周りを囲んでいた女性陣とも距離をとっているみたいだ。それとも気になる人が居るのだろうか。
――――そう、たとえば兄とか。
兄とかだったらいいのに。
「はあ、またよからぬこと考えてる?……とりあえず今年の武闘会だけど」
「そうですね。私としては、今年は補助魔法メインの人でも活躍できるように、団体戦は絶対やりたいです」
「団体戦か。盛り上がりそうだが採点が難しいな」
「ふふふ。そこはランドルフ様がすべて考えてください」
「――――丸投げか!ほんとそういうところ似ていて嫌だ、この兄妹!!」
結局、エキシビジョンとして紅白合戦が行われることに決まった。ランドルフ先輩が私が適当に出した意見を、ちゃんと使えるように全部まとめてくれた。本当に有能な上にいい人だ。王国の未来は明るいに違いない。
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それから、あの日以降フローラはすっかり元の脳筋へと変貌を遂げた。
「くっ。ライアス様なんであんなに強くなっているんです?!せっかく聖女最強魔法で、魔力回復できるようになったのに。永久機関ですよ?!何で勝てないんですか!!」
そう、聖女の最強魔法は地味だが時間経過で魔力回復できるのだ。地味と侮るなかれ、永久機関となった聖女の力は世界を救うのだ。
あのあと、二人の間になにか花開くような展開があったのかは定かではないが、間違いなくライアス様とフローラの行き先は闘技場だったようだ。
金色の光が闘技場から立ち上っていたとの目撃証言が、相次いでいたから。
さすが、メイン攻略者だ。もしかしたら、二人のそれは友情というものなのかもしれないけれど、まだわからないもの。世界樹に祈りを捧げておくことにする。
それから、フローラは私に抱き着いてきて言った。
「……私のすべてはリアナ様を救うために捧げますから」
いや――――!それ、ライアス様に言ってあげて下さい!!ライアス様向けの台詞を私が根こそぎ奪い続けている!
「私、まだまだ慢心していたようです。強くなってもいないくせに、それでリアナ様やフリードさまを救うことができないなんて。烏滸がましい!私、世界中の誰よりも最強になります!」
最強聖女。そして永久機関から繰り出される回復と攻撃。いや、その力は対複数の仲間たちへの身体強化のために使われるものだから。一人占めしたら、本当に永久に戦えてしまうのではないだろうか……。
「え?世界征服でもするつもり?!」
ほんの冗談で行ったのに、真剣な表情でフローラは頷いてしまった。
「――――リアナ様を救うためにそれが必要なら、世界征服も悪くないですね」
え?暗黒聖女が爆誕してしまう。聖女が世界征服って、どんな未来なの……。止めなくては。そのためにも生き延びなくては。あとで、ミルフェルト様に相談しよう。
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