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聖騎士の祝福を兄は上書きする


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 王宮図書室から、先ほどのディオ様の言動にひどく混乱して、ほとんど無意識に家まで帰ってきた。


「おかえり」


「おっ、お兄様!きょ、今日はお早いお帰りですね」


「そうだね……」


 家に帰ると、少し苛立たしげに腕を組んだ兄が玄関ホールの柱に寄りかかりながら立っていた。

 私はここのところ立て続けに起こった、兄とディオ様からの行動を思い出し、なぜか挙動不審になってしまう。

 そして、兄の顔が近い。私の顔のすぐ近くで、なぜか頬をじっと見つめている。


「お兄様?」


 少しだけ、溜息をついた兄。


「リアナそれ、聖騎士の祝福?」


「え?聖騎士の祝福?」


 身に覚えがないけれど、聖騎士といえばディオ様のことですよね?


 私の頬に触れ、そっと指で撫でながら「気づいてないのか……」と、眉を寄せたまま兄がつぶやいた。指先で撫でるのは、くすぐったいからやめて欲しい。


 もしかして、さっきのアレは聖騎士の祝福ってやつだったのだろうか。


(それじゃ、私の……考えすぎ?)


 いや、でも愛しいって。ん?それは以前から言われ続けていたような?


「ディオから聞いていたし、リアナが助かる可能性が上がるなら、俺は構わないけど。でも、あからさまな場所にわかりやすく牽制されると、それはそれでイラッとするな」


「お、お兄様……?」


 兄とディオ様は、事前に打ち合わせを?私の混乱は、増すばかりだ。


「――――俺だって、リアナのためなら」


 そこまで言うと、兄は口元を手で押さえて顔を背け、言葉を呑み込んだ。


「ごめん、俺もこの間から冷静じゃないみたいだ」


「お兄様、私ちゃんと続きが聞きたいです」


 いつかの記憶のように、最後の最後に何か大事なことを言うなんて悲しすぎるから。


 なんでも抱え込んでしまう兄は、それでも自分の力で解決してしまうからすごく頼りになる。でも、その分傷ついているんじゃないかと、時々とても私を不安にしてしまう。


「――――リアナ?」


「心に留めすぎるから、いけないんだと思います」


 その時に見た兄の表情を、たぶん忘れることはもう出来ない。まるで焦がされそうに強い瞳のまま、私を切なげに見つめた兄の顔。


「リアナは、俺に鈍感って言ったけど……」


「えっ、それ言ったの私じゃなくて黒いほう……」


「リアナのこと、護りきったら全て伝えるって決めているんだけど、俺の願いを言ってもいいのなら」


 兄の唇が、頬に触れる。ディオ様の口づけを、まるで上書きするように。


「それまで、誰のものにもならないで?」


 兄は、先ほどまでの表情を隠し、いつも通りの笑顔を見せた。


 ちなみに、鏡を見たら頬にキラキラ輝く白銀の魔力の跡が付いていた。

 兄が言ってたのは、これの事だったのね。次の日目が覚めたら、そのキラキラは無事消えていた。


 


最後までご覧いただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] フリード様、護りきったら伝えると決めているんですね 上書きの後の一言にクラクラです\(//∇//)\ お二人の攻勢に、困りました、どうしましょう?という感じです。いやワタシが困ってどうする…
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