隠しステージのレベルが何故か高すぎるのは
たまに読み返して修正するのですが、誤字報告いただけてとても助かってます。
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朝からライアス様、ディオ様、フローラ、兄と私は神殿に集合した。
王太子であるライアス様を側近たちは必死で説得したらしいが、隠しステージに挑戦すると言う決意は揺るがなかったらしい。
本日のライアス様は、王族だけが着ることを許されている紫を帯びた深い紺色に金の縁取りがされた軍服だ。
王族限定の軍服……えっ、なにこれ。ライアス様の好感度が最高になった時に戦いになるとお召しになるやつじゃないですか。
こんなにカッコよかったの?あまりに尊い。こんなの世界中の軍服好き女子たちがみんな惚れてしまう。
しかし、レイド先生が着てもとてもかっこいいんですよね……。いつか見てみたい。
「元々は俺が受けた呪いだ。他のやつに任せて自分だけ安全なところにいるなんて、俺にはできない」
なんとなくフローラと作戦会議と称しては戦ってばかりのイメージだが、ライアス様は、やはりメイン攻略者なのだ。
アッシュブラウンの髪にエメラルドの瞳、軍服でさらに魅力が上乗せされている。さらにその生き方に台詞までカッコいい。
そんなライアス様の横から、フローラがぴょこりと顔を出す。ふわふわとしたピンクブロンドに聖女が戦いの時に着る短い裾の白いドレス。蜂蜜色の瞳は慈愛に満ちているように見える。
その姿は完璧にヒロインらしくて、今のライアス様の隣に並ぶと本当に絵になる。王太子ルートを進んでいるの、フローラ?
――――ちょっとだけ、そう思ってしまったのに。
「私、すごく強くなったんですよ?ロイド師匠に感謝です!」
なんとなく、すごく強くなったんだろうな?と一目でわかる佇まいのフローラは、今日も平常運転だ。でも、一人で敵陣に突撃するのはやめようね。チームワーク大事だからね?
「行きましょうか」
全員で強くなる。特に、私とフローラは聖女の覚醒イベントと最高魔法の習得のために必ず最後の部屋をクリアする必要がある。
しかし、神殿奥の隠しステージに進むと、どうも様子がおかしい。
「ちょ!強すぎ!」
「リアナ!いや、それにしてもなんでこんなに強くなっているんだ?」
危ういところで、ディオ様が幻獣の攻撃を防いでくれる。スピードが前回と段違いだ。
「え?隠された修行の場というからではなく、何かがおかしいのか?リアナ」
そのままその幻獣を風を纏わせた剣で倒した兄に聞かれるが、素直におかしいとしか答えようがない。
というより兄、いつのまに剣に風とか纏わせることが出来る様になったんですか?伝説級じゃ無いですか?
でもたった一つ私には思い当たることがある。そう、このステージの難易度は、最高レベルのキャラクターに合わせられるのだ。
(最高レベルの、キャラクターに)
私は、兄の方を振り返る。もしかして、もしかしなくても原因って……。
「おかしいほどの努力、文官なのに戦闘でのバグの如き強さの皺寄せが今ここに?!」
「いや、なんで訳わからないこと言いながら俺を見るんだよ」
何があっても諦めない、人には真似できない努力という才能。
もし、ディオ様よりも私のレベルが高いという仮説が正しいなら、努力することを決してやめない兄のレベルはきっと……。
私は長い息を吐く。困ったことになったけれど、努力の積み重ねでそこまで強くなった兄のことが誇らしい。
――――私の自慢の兄だ。
「お兄様、そんなお兄様が私は大好きですよ?」
「えっ、どうしたんだよ急に?!」
「だから、このまま一緒に進みましょう」
「――――お前がその笑顔する時には、大概ロクなことがない。…………だが、付き合うよ」
兄が笑う。この顔を兄がしている時に、期待を裏切られたことも、守ってもらえなかったことも一度もない。
私の中で、強くてカッコいい兄は信頼の塊なのだ。
それに希望もある。このステージでは、難易度が上がるほど報酬の期待度も上がる。
きっと、最後の部屋をクリアできれば、聖女の最高魔法だって手に入るに違いない。
「とりあえず、進むということで良いですか?良いですよね?」
なぜか七色の瞳を輝かせているフローラ。聖女としての覚醒はまだのはずなのに、どこにその瞳になるほど気持ちが高まる要素があったのだろうか。
フローラが予想通り、単身幻獣に突っ込んでしまったので、私たちも後を追う。
なんだか、兄の訓練に付き合った時にこんな構図を見た気がする。
フローラは、ロイド様との訓練のおかげかたしかに強くなったけど、魔力が最後まで保つのか心配だ。
デジャヴだわ。『春君』は、こんなキャラクターいなかったと思うのに、みんな脳筋になってしまって。
――――いったい誰の影響なんだろう……。
そんなことを思いながらも、私たちは奥へと進んでいった。
ミルフェルト「ボクの研究によると、リアナのせいでみんな面白くなったんだと思うよ?」
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