聖女の力の真髄
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禁書庫を出て、強い決意だけが私の瞳を七色にする。七色のままの瞳。神官たちが、膝をついていく。それが、聖女の証。いつでも、具現できるようになることが聖女の覚醒。
「リアナ。ここに入るときは、必ず俺もつれてくるって約束してもらえませんか」
「ディオ様。むしろお願いしたいくらいです」
もう、学園の首位がどうとか、誰に勝ちたいとかどうでもいい。私は力を得てみせる。二人聖女がいるなら、世界樹の呪いだってきっと解呪できるはず。
神殿の前の重厚な作りの扉。ここから先は、己の一番弱い部分を攻めてくるステージ。最後の部屋は、強ければ強いほど難易度が高くなる。
「ディオ様……ちなみに、強い人と一緒だと難易度上がるんですよね」
ゲーム通りの設定ならば、最高レベルのキャラクターに難易度が設定される。
「……そうですか。それでも、一緒にいたい。守って見せるから。ダメですか?」
「たぶん、ディオ様なしには私の願いは叶いませんから」
それなのに。ステージに入った途端、ディオ様がつぶやいた。
「確実に俺だけよりも難易度が上がってますね」
「はえ?!」
「先ほどの理論によると、リアナの方が強いってことになりますね?」
たしかに、戦闘能力とレベルは違う。え!そうなの、私の方がレベル高いのにディオ様とこの戦闘力の差なの?やるせない……。
んん?ということは、カンストしてるんじゃないかと思っていたディオ様は、まだ伸び代があると?!
相変わらずディオ様の持つステータスはずるい。
「こうなったら聖女最高魔法を……手に入れて見せます」
「そう。リアナに抜かれてしまうのは嫌だからもっと頑張らないとね」
「命懸けとかやめてくださいね?」
「リアナがそれをしないなら約束できるけど」
ふむ?でも、兄にしてもディオ様にしても、しょっちゅう命懸けでしょ?私が命をかけないなんてありえないよね?
「じゃ、お互い守り合いましょう」
「心強いですね」
私は、いつも自分にかけていた身体強化をディオ様にかける。自分の役割は、強くなることだけじゃない。仲間を強くすることなのだから。
ディオ様が、自分の手のひらを見つめる。
「すごい……な?まさかここまで違うなんて」
それは、ディオ様の基礎ステータスが凄すぎるからだと思います。基礎ステータスに身体強化の向上量は依存するから。
軽やかに舞うように、幻獣を屠るディオ様。本当は私が戦おうと思っていたけど。私が強くなるよりよっぽど強い。私は仲間を守るのが、強くするのが聖女の力の真髄なのだとやっと理解した。
(今まで、なぜ自分だけが強くなることに囚われていたのかしら)
確実に自分だけが強くなるよりも、仲間の力になる方が何倍も強いのに。
(ミルフェルト様、もう手段は選びません。私、何としても呪いを解除してあなたを!)
兄も私が正しく力を使ったなら、もっともっと強くなる。そう、ライアス様も。ここに、みんなで来る。それが呪い解除への道標。
ああ、それにしても戦うディオ様が尊い。何て美しく戦うんだろう。こんな場面、自分が戦っていたら見ることはできないわ。……役得。聖女の役得だわ。もっと、補助魔法をもっと鍛えよう。そうしよう。
私は密かに、自分の能力のこれからの強化方針変更を決意した。
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