涙のあとには
「もう、大丈夫です。ありがとうございました」
たくさん泣いて、少しだけ心の整理がついた。ディオ様を随分付き合わせてしまった。少しだけ、ディオ様を押しのけて離れようとしたら、なぜかもっと強く抱きしめられた。
「まだ、ダメだよ」
ディオ様があの日のように、私の肩に顔を埋めた。柔らかい髪の毛が頬に触れる。
「え……?」
「こんな状態のリアナを離せない。それに……今の俺は、リアナのためだけに生きているんだから」
「ディオ様?」
(私に助けられたからですよね?)
そう言いたかったのに、喉が渇き切ったようにその言葉を言うことができなかった。今まで簡単にいうことが出来ていたはずなのに。
「……ディオ様が、ディオ様のために生きてくれると嬉しいです」
私は何とか代わりにそれだけを言い切った。かなり声は掠れてしまったけれど。
「じゃあ、なおさらリアナのために生きていたい」
よく、わからない。私のために生きることがディオ様が自分のために生きることとどう繋がるの?
それでも、断片的な記憶の中で、ただディオ様を求めていたのは確かで。私もディオ様のために生きていたいと思うのも事実で。
「愛しい人って、ずっと言っているよね?」
「それは、責任……感じて」
私の言葉をディオ様が首を振って否定した。
「最後に会いたいのは、リアナだけだった。その結果、こんなことになったのは悔やんでも悔やみ切れないけれど。……ずっと、ずっと、好きだった」
胸がひどく痛い。黒い蔦が蠢いて私の心臓を硬く締め付けている。
「……答えられないですよ」
呪いのせいだけでなく、どうしても18歳で死ぬのに。ただ、死ぬだけならまだしも、大切な人たちを巻き込んでしまうのに、どうしてこうなんだろう私の運命は。
ディオ様が、震える私から少しだけ体を離しはっきりと宣言する。
「リアナを死なせない。俺たちも死なない。これならどうかな?」
私はこの時初めて顔を上げてディオ様の目を見た。その瞳は、揺らぐことなく私を見ていて、自信を感じさせる微笑みで。
「ディオ様……私もそれがいいです」
それを聞いて初めて私は、笑うことができた。いつもの私に戻れそうな気がした。
「もう、大丈夫みたいだね。送っていくよ。今日はちゃんと家に帰ろう?」
ディオ様が、いつも兄がしてくれているように手を引いてくれた。その手がとても暖かいから、この手を信じてもう少し頑張れそうだと思った。
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