担任と生徒会
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「じゃ、点呼とるぞ?」
壇上には細身の眼鏡に茶色い癖毛、少し渋い感じのイケメンが立っている。担任のレイド先生だ。もちろん攻略対象者のため、極力関わらないようにしてきたのだが。……なぜか話しかけられています。
「リアナ。お前今回も首席だな?とりあえず、二学期からは一年生も生徒会活動が始まるから、ライアスは会計、リアナは書記しろよ?俺、生徒会担当だから」
「えっ?」
そこはフローラとライアス様じゃないんですか?いや、完全に成績で決めるなら私たちでしょうが……。いや、地位から決めても私たちでしょうが……。うん、普通に考えて私たちだった。
「だって、どう考えてもお前たち二人だろ?異論あるやついるかぁ?」
シ――――ン
「じゃ、決まりだな」
「えっ、聖女として放課後は仕事……」
「ライアスも公務で忙しいな。ライアス、異論はあるか?」
「王族として当然ですから」
ライアス様の裏切り者!これはもう断れない。公爵家令嬢であることをなんだか久しぶりに自覚したわ。
「喜んで受けさせていただきますわ」
「じゃあ、放課後生徒会に集合な」
公爵令嬢の仮面を久しぶりに被ってみる。レイド先生が笑い堪えている気がする。そういえば、授業中、時々笑いを堪えていると言う設定があったわね。
……こうなったら、笑わせてやるから!でも、その前に。私は頬に手を当てるとコテンと首を傾げた。
「でも、困りましたわ。本日の放課後はミルフェルト様と会うお約束をしていますの」
レイド先生が固まったのがはっきり分かった。そう、今日の放課後はミルフェルト様と約束があるんだから!
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「……それでみんなで来たの?」
「……ご迷惑だったでしょうか?」
「いや。面白いから歓迎するよ。今までの永遠の退屈さえ忘れそうだ。それにしても久しぶりじゃないかレイド」
「は、ご無沙汰しております。ミルフェルト様」
何故か生徒会室役員が、全員禁書庫に集合している。生徒会長の兄、副会長のディオ様とランドルフ先輩、会計ライアス様、書記の私だ。
ランドルフ先輩は首席だし、ライアス様とディオ様は王宮図書館から禁書庫に入ることができる。レイド先生は、首席卒業しているので資格があるそうだ。
「――――えっ?絶対首席卒業したい」
「え、リアナ?」
ミルフェルト様が、意外とでもいうような声を上げた。あれ?ご迷惑だっただろうか?
「――それって、卒業後もボクに逢いたいからとかいう、うれしい理由なのかな?」
「そっ、そうですけど。ご迷惑でしたか?」
「ほんとリアナは可愛いよね?うれしいに決まってるよ?でもキミは聖女なんだから王宮の図書館も申請すれば入れるでしょ?」
ということは、学園に入る前からミルフェルト様にお会いすることが出来たと?!まあ、多分引きこもっていたから会えなかったけど。
「新情報です……」
「キミ、聖女になったとき説明受けてないの?まあ、リアナが願うなら世界樹の塔の最上階に常設の扉を作ったっていいよ」
「えっ?!良いんですか?!」
ミルフェルト様にいつでも会えるなんて、ありがたき幸せ。世界樹の塔に扉があったら毎日のように会いに行きますけど良いのですか?
チラリと役員たちの顔を見ると、ディオ様と兄以外が心底驚いた顔をしている。
(そういえばミルフェルト様、たぶん偉いお方だった。不敬だと思われてるのかしら?)
「リアナだけは変わらないでよ?」
ミルフェルト様が意味深な笑顔でつぶやいた。そう思っていただけるなら変わりません!!
しかし、生徒会役員は、なんと全員が知っている顔ぶれだ。というより兄は会長ですものね。そして来年度はランドルフ先輩が会長になるはずだ。再来年はライアス様。
「久しぶりだね、ディルフィール。会えて嬉しいよ」
「ありがとうございます。私もランドルフ先輩にお会いできて光栄ですわ」
貴族令嬢として、社交辞令的な挨拶をしていると、兄に手を引かれた。
「リアナ、こっちに来い。ランドルフ、気安くうちの妹に近づくな」
「フリード殿は過保護がすぎますね」
そう言いながらも、ランドルフ先輩は私から距離をおいた。そうなのだ。兄はいつも過保護なのだ。
「まあ、立ち話もなんだから座りなよ。あ、もちろんリアナはボクの隣ね?」
私がミルフェルト様の隣に座ると、当然のようにディオ様が私の隣に、兄が向かいの椅子に座ってきた。
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