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聖騎士対兄


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 二年生のトーナメントは、ランドルフ先輩が順当に優勝した。やはり現役学生騎士。圧倒的な強さだった。


(まあ、想定の範囲内だわ。順当勝ちってやつよね)


「素晴らしい試合だった。俺の試合も見てくれた?」

「ランドルフ・リーフディア侯爵令息殿?馴れ馴れしくうちの妹に近づかないでもらえるか?」

「ふふ。また来るよ。ディルフィール?」


 なぜか学年優勝したあと、ランドルフ先輩が再び私に挨拶しにきたが、敵意剥き出しの兄に追い払われていた。しかしランドルフ先輩、メンタル強い。


「お兄様。誰でも敵意剥き出しは感心しませんわ」


「うっ。すまない」


「でも、やっぱりお兄様のこと一番応援します。頑張ってくださいね」


「……うれしいよ」


 でも、妹以外に一番応援してくれる人を探さないと、ディルフィール公爵家存続の危機ですよ。私は兄が心配です。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 それから、兄は強かった。こんなに強い人だったなんて、予想以上で驚いてしまう。この間の騎士団総当たり訓練の時とは全く動きが違う。


(……この短期間にどれだけ、努力したんだろう)


 でも、確か兄は剣よりも風魔法が得意なはずなのに、なんで使わないのか、違和感を感じる。


(だって、その実力なら風魔法も使えば、そんなふうに怪我しなくても済むでしょう?)


 そしてディオ様は、圧倒的に強かった。たぶん誰も敵わない。兄だってきっと敵わない。……私はそう思ってしまった。


 ディオ様にも勝って欲しいのに、こんなに複雑な気分で応援するなんて思わなかった。


 決勝戦まで勝ち残ったのはディオ様と兄だった。


「フリード……どうしたらこの短期間で、そこまで強くなれるんだ?」


「努力の二文字だけだ。俺は天才ではないからな」


 それでも兄の目は全く諦めていない人間のそれだった。三年生でディオ様とまともに打ち合えるのも兄だけだった。


 それでも段々と兄は、闘技場の端へと追いやられていく。


「お兄様!」


 思わず私が叫んだ瞬間、兄の口が弧を描いた。


「――――くっ?!」


 闘技場のディオ様の足元にいくつもの旋風。それでもディオ様は、完全に姿勢を崩すことはなく。


「フリード、まだ甘い!」


 ディオ様が兄に斬りかかる。これで終わりだと誰もが思った。


 ――――ギインッ


 模擬刀が、宙を舞う。……しかし、それはディオ様のものだった。


 ディオ様が天高く舞う模擬刀を見上げてつぶやく。


「はぁ……自分に直接風魔法を纏わせるとか、どんな無茶するんだフリード。初見殺しだよ」


「俺のっ……勝ちだ」


 傷だらけの兄が地面に倒れ込む。だが、先に剣を手放して判定負けしたのはディオ様だ。


「お兄様……お兄様っ!」


 無茶ばかりする、目が離せない兄のそばに走り寄る。足がもつれる。


「ははっ。見たか?ディオに勝ったぞ?まあ、リアナには学年優勝を捧げるからこれで許してくれ?」


 回復魔法を使おうとして、兄に腕を掴まれる。


「リアナの足は引っ張りたくない。魔力を無駄に使うな。俺はこれで棄権するから、あとで……な?」


「お兄様は、本当に自慢のお兄様です!!カッコ良すぎませんか」


「惚れるか?」


 こんな時まで兄は妹に何を言ってるのか。……言う相手を間違えてますよ、兄?でも、今日の兄、カッコ良すぎです。


「こんなの普通にどのご令嬢でも惚れるでしょう?」


「…………そうか」


 兄が担架で運ばれても、私はあまりの兄の男前さに心揺さぶられたままだった。私ももっと強くなろう。努力がまだまだ足りない。


 本戦は、全員参加の乱戦形式だ。兄の分まで戦い抜くと私は決意を固めた。

最後までご覧いただきありがとうございました。


『☆☆☆☆☆』からの評価やブクマ、感想いただけるととても嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] フリード様がんばりました!よかったです*\(^o^)/* 冷静に自分の力量を見極めて、これしかないという戦い方でした^_^ 残念なことにリアナは兄としてしか見ていないですよね〜 モブ令嬢に…
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