記憶と少しの勇気
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その時、私たちの瞳は七色に輝いていたらしい。歴史上、世界樹の聖女が二人誕生したことはない。それでも、たしかに二人ともに七色の瞳だったと全員が証言した。
「私、どうしてここに?あれ、ライアス様までどうしているんです?」
フローラが交互に私とライアス様を見ている。不思議そうにしているその瞳はすでに、いつもの蜂蜜色に戻っていた。
「大陸中の図書館とこの部屋は繋がっているから」
ミルフェルト様は、禁書庫にいながら、大陸中と繋がることができるらしい。
「さて、今の出来事を説明してくれるかな?ボク、とても研究したいんだけど」
私とフローラ、ディオ様は黙ってしまう。それぞれ見たものは違うのかもしれない。
ちなみに、ディオ様はまだ離れてくれない。何を見てしまったのだろうか。よほど怖いものでも見てしまったのかもしれない。抱きついて口をつぐんだまま、喋る様子がない。
「ディオ様?」
「……もう少しだけ。たしかにリアナがここにいるのが信じられるまで」
そう言ってすがるように見てきたディオ様の瞳は、まるで雨に濡れた仔犬みたいだ。
――――えっ、これにダメって言える人間、世界中探してもいる?!
「じゃ、私から話します!」
ダメという人間はいないけど、空気読めない子はいた!!
「何故か黒っぽい衣装のリアナ様と戦っていました。命をやりとりする本気の戦いで燃えました」
それって、フローラの感覚ではそうなるのかもしれないけど、もしかしてゲームのラスボス戦じゃないの?!
「でも、やっぱりリアナ様とは仲間がいいので一緒に戦いたかったですね!」
たぶん、今回はフローラと戦うことはないだろう。そうでありたいと私も願うよ。
でも、小さい頃友人だったらしいフローラと私の画像。『春君』には、あんなスチルなかったはず。
そこからの、あの人を返して……。
「なんだか逆に謎が増えてしまいました」
「ふーん。そうなの?ボクにも今、教えてくれるのかな?」
ミルフェルト様が楽しそうな様子でこちらを見てくる。でも、今はそれよりもディオ様の様子が心配だった。
「もう少し情報を整理してからお話ししたいです。今日は帰っても、いいですか?」
ミルフェルト様が、片眉を上げる。
「まあ、多分それだけのものを見たんだろうね。いいよ!でも、絶対話しに来てね?」
「ミルフェルト様に、聞いてもらいたいです」
「わあ、本当君って素直で可愛いよね?まあ大丈夫だよ?……待つのには慣れてるから」
待つのに慣れたらダメだと思います!必ずまた会いに来ると、ミルフェルト様を笑わせようと心に誓う。
「ディオ様。お許しが出たので行きましょう?」
「…………え?」
抱きしめられたままだから、まるで内緒話みたいな体勢になった。
「ディオ様のお話を聞きたいです。ここじゃ話しにくいですよね?二人だけで世界樹の塔に行きましょう」
私からディオ様の手を掴むのは、初めてかもしれない。いつも、私が困るとディオ様が手を差し伸べていてくれたから。
フローラらしき少女がくれた花冠が、私に少しだけ歩み寄る勇気をくれた。
兄と父「リアナのやつ、陛下を無視してことを進めた!」
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