呪い解除への道標
「ふふ。これは王家にとっては僥倖かもしれないよ」
「何を言って……結局俺の身代わりにディオとリアナは巻き込まれたってことだろう」
ライアス様が、拳を血が出るんではないかというくらい握りしめる。ライアス様、正義感強いものね。きっと、今のライアス様の治世は素晴らしいものになるのだろう。
「まあ、表面だけ見たらそうだけど。長い歴史の中、呪いが移せるのは一度だけだった。それに女性が呪いを受けたこともない。解除のヒントがどこかにあるかもしれないじゃないか」
『イトシイ、ヒト』
切なく歪んだあの声が心の奥底から聞こえてきた気がして、胸を押さえる。
あの声の主が呪いをかけた人なのだろうか。響いていてわかりにくかったけれど。そう、女性の声だった?
胸が痛い。なぜだろう、無性にピンクブロンドの髪をした、いつも底抜けに明るい友人に会いたくなった。
「フローラ……」
――――ガチャンッ
「あれっ?ここどこですか?!」
扉が開いて出てきたのは、フローラだった。
「あ!リアナ様じゃないですか。ん?胸が痛いんですか?!大変!」
まわりの状況が見えていないらしいフローラが、凄い勢いで私のそばに走り寄った。その瞳の色がたしかに七色に煌めく。
そのままフローラが寄せた手が、私の胸元でほのかに七色に輝き、光が私の胸に吸い込まれていく。
「おやおや、これは」
そう呟いたミルフェルト様の声が聞こえた気がしたが。刹那、禁書庫は眩い光に包まれた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
多分この草原は禁書庫の奥にあったミルフェルト様のプライベートスペースだ。
なぜか私は今、ゲームをプレイしているらしい。画面の向こう側で草原にペタリと座った二人の少女が花冠を被せあって笑っている。
ピンクブロンドと金色の髪をした二人の少女。
「「ずっと友達だよ?」」
しかし次の瞬間には、豪華な部屋に場面が移る。
少女たちは泣いていた。静かに涙を流すピンクブロンドの少女の頭上には輝くティアラ。画面の中の金髪の少女が床に座り込んで泣き叫ぶ。
「あの人を返して!」
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あの人って、誰だっけ。とても大事なことだったはずなのに。それにあんな場面、ゲームの中に出てこなかったと思う。
「リアナ」
優しい声のあの人。
「リアナ!」
気がつくと、目の前にディオ様がいた。というより抱きしめられていた。本日の正装が麗しいディオ様に。
「えっ?!ディオ様!」
慌てて離れようとしたのに。
(は、剥がれない!!)
密着した体が、無性に恥ずかしいから剥がそうとするのに剥がれない!!
「ディオ。わかったから一旦離れような?」
そう、兄が声をかけるとようやくディオ様の表情が見えた。なぜか、私を見ているようで見ていないその瞳。
「……愛しい人、俺の」
「ディオ様?」
無性に私のことを見てくれないディオ様に対して、悔しさを覚えてしまった。
むにっ。ディオ様の頬を両手で包み込む。
驚いたように瞠目したディオ様が、こちらに視線を合わせる。
「リアナ!」
もう一度、抱きしめられて、今度は兄が剥がそうとしてもディオ様は、なかなか剥がれてくれなかった。
フローラ「あれ?街の図書館の見慣れない扉開いたら、ここ、どこ?!」
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