王家の呪い
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ちょっと今回はシリアス展開です。
「あと一人来るから待ってて?」
「はい」
ミルフェルト様が笑いかけてくれるから、私もニコニコと笑顔を返す。すると、周囲の人たちが息を呑んだ気配がした。
「気にしなくていいんだよ。ボクのリアナ?」
「はい、あのミルフェルト様?あと一人って」
「……ほら、もう来たよ」
――――ガチャ
扉から入ってきたのはディオ様だった。今日は黒で統一された正装に身を包んでいる。
(えっ……我が生涯に一片の悔いなし!!)
なんだかディオ様の背後が輝いてる。私は握り拳を天に向けたい衝動に駆られたが、ギリギリ自重した。
それくらいカッコいいのだから仕方ない。カッコイイしか言えない!
「見ていて飽きないよね。ディオ?」
「同意いたしますミルフェルト様。皆様お揃いですか。遅くなり申し訳ありません」
「ふふ。座りなよ」
「では、失礼して」
ディオ様は当然のように私の隣に座った。やはり、周囲が息を呑むのがわかる。
「ふふ!……さ、本題に入ろう」
ミルフェルト様が、楽しそうで何よりだ。そうそう、楽しいお話をする約束もあるし、ネタは仕入れてある。今日は日記帳も持ってきてあるのだ。
「王家の呪いについてだけど、みんなどこまでわかってるのかな?まあ、いまやディオが一番わかってるかもね。説明してあげなよ」
予想通りの話の展開だった。父のほうをチラリと見たら青褪めて少し震えている。大丈夫だろうか?
「王家の呪いは、スプリングフィールド王家の長男が受ける呪いです」
ここまでは、乙女ゲーム『春君』のシナリオと同じだわ。貴重なディオ様のモノローグ!!メモしなくちゃ!日記帳でいいか。メモメモ。
「王家の呪いは18歳で死ぬというもの。長年研究されていますが、まだ解くことはできません。ただ、別の器に移す儀式があるだけで」
おそらく、ディオ様はその器に選ばれたのだ。そして呪われた騎士として、ゲームのシナリオ開始前に命を落とした。
ミルフェルト様は、ツインテールをクルクルと指先で弄びながら話を聞いていたが、そこまでディオ様が話すと口を開いた。
「今回は、呪いを受けたのがライアス。器に選ばれたのがディオだったということだよ。……これは王家でも一部しか知らない極秘事項だ。国王の時は、ディルフィール家の長男だったよね」
父が次男で、父の兄は早くに死んだことは、お母様が生きていた時に聞いたことがあった。そんな理由だったのね。
国王陛下が、重々しく口を開く。
「はい……器は王家と血のつながりがある公爵家の長男から選ばれます」
つまりベルクールとディルフィール。二つの公爵家の長男であるディオ様か兄が、器に選ばれる可能性が高かったのね。
「ベルクール公爵家には、すでに次男が生まれていた。必然的にディオが選ばれたんだよ。まあ、フリードはどちらにしても。選ばれるにはあまりにもね?」
どういう、意味かしら?チラリと兄を見ると、困ったように微笑まれた。あとで話してくれるだろうか?
「さ、リアナ。ここまではみんな知っていることの再確認だ」
えっ?初耳でしたが!?私だけ知らなくて、皆さんご存知だったんですか?!
信じられない気持ちで、まわりを見渡すと何故か注目されていることに気づいた。
(ひえっ。なんで全員こちらを見るんですか?やめて欲しいです)
「リアナ。今の君の状況が知りたいみたいだよ」
「え?」
「君は自分のことになると察しが悪くなるよね。……その心臓のことだよ」
私は胸に手のひらを当ててみた。ミルフェルト様と契約したおかげか、痛みはそれほどでもない。
「ディオ様の呪いを解除しようとしたら、失敗して私の心臓に呪いの蔦が絡みつきました」
「リアナ!」
――――ガタンッ
ごめん父……。でも急に立ち上がるから椅子、倒れちゃいましたよ?座って座って。ジェスチャーで伝えると、父は唇をかみしめながら、椅子を起こして座った。
「……それについてのリアナなりの考察を教えてくれるかな?」
「私の、ですか。…………わかりました」
まわりを見渡してみる。みんな悲痛な顔をしてる。そんな顔して欲しくない。ここにいるのは私の大事な人ばかりだから。
大事な人ばかりだからこそ、私もきちんと話そう。まあ、流石に乙女ゲームなんて言えないけど。
「私は7歳の時に、予知夢を見ました。私は光魔法の素質に目覚め聖女候補としてライアス様の婚約者になり、その後学園に行きます。でも、人生は繰り返されるのに、必ず18歳で死んでしまうんです」
父が息を呑んで、震える唇で言葉を紡ぐ。
「だから、7歳の時に世界樹の塔に引きこもったのか」
「そうです。でも、やはり18歳で破滅する運命からは逃げきれなかったみたいです。この呪いに私がかかるのは、決まっていたのだと思います」
だから、誰のせいでもないんですよと言いたい。言いたいのに。なんで、なんでみんな泣いちゃってるんですか。
……おや?ミルフェルト様だけは楽しそうですね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
それから、誤字報告ありがとうございます。
修正しました。
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