王宮の図書室
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私たちは、ボロボロの騎士服を脱いでお風呂に放り込まれると、磨き上げられた。擦り傷がしみて痛いので、そっと治癒魔法をかける。
(兄にもあとでかけてあげよう)
久しぶりのドレスに身を包む。新しいドレスが、ちゃんと用意されていた。私が好きな、淡いグリーンのドレス。背中に妖精の羽のようにレースがついていて可愛い。
普段、聖女の格好か制服、部屋着しか着てない。それで良いのか、私は一応公爵令嬢の端くれのはず。むしろゲーム内の悪役令嬢リアナは、学園でもドレスを着ていたのに。
ドレスを着てエントランスに出ると、すでに準備を終えた父と兄が待っていた。
兄の正装も久しぶりに見たけど、黒いジャケットとそろいのベスト。金の髪と青い瞳が映える。
我が兄ながら素敵過ぎるカッコいい!!スチル!
「相変わらず、綺麗だな」
(――――兄!!そういう台詞は妹に言ってはダメなやつです!)
「――っ。お兄様も素敵です」
でも、嬉しかったから褒め返しても良いよね。はい!そんな嬉しそうにしないで下さい。兄!!
それから、寂しそうな顔しないで父!!
「お父様も皆様に自慢したいくらい素敵ですわ」
本当にうちの父はダンディなイケオジだと思う。そして素直に嬉しそうな父。ちょっと可愛い。
自分で言うのもなんだけど、悪役令嬢リアナは綺麗だ。まあ、中身が中身なので醸し出すオーラは残念かもしれないけれど。
父と兄とともに馬車に乗り込む。たぶん、王宮では王家の呪いについて進展があるはず。そんな予感を三人とも持っているのだろう。
助かる方法があればいいのに。でも、王族ですら解決できない呪いだ。あまり期待はしないでおこう。
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王宮は相変わらず荘厳だった。金色が多く使われているのに、その装飾が繊細なものが多いせいで上品にまとまっている。
「――――よく来たな。リアナ」
「ライアス様……王太子自らお出迎えですの?」
ライアス様の目元が赤い。いつも明るいが、決して本心を表情や佇まいには出すことがないのに。泣いて、いた?
「それはそうだ。俺は今回のことは当事者だから。知らなかったでは済まされない」
「ライアス様」
ライアス様にエスコートされ王宮の中を進む。私が入ったことのない、奥にその部屋はあった。
ドアを開けると、貴重な本が高い書架にぎっしりと入っている。図書室だった。
「……父上はこの奥だ」
この扉、どこかで見たことがあるような?そう思いつつ扉を開けると、先日嗅いだばかりのカビ臭い匂いが一瞬鼻腔を掠めた。
「ミルフェルト様……」
王太子も、父も兄も国王陛下すらミルフェルト様の前に跪いている。
「えっ、あの?!」
私も慌てて周りに習おうとしたが、苦笑したミルフェルト様に止められた。
「あ、ボクそういうのいいから。特にリアナは今までのようにして欲しい。みんなそこらに座って」
ミルフェルト様はとても偉い人だったのかもしれない。あんなテンションで関わってしまった。ディオ様、止めてくれなかったし。
冷たい汗を感じながら、ミルフェルト様に手招きされたのでその隣の椅子に腰掛けた。
一同「ミルフェルト様の隣に手招きされて座った!!さすが聖女というか怖いもの知らずだリアナ!」
リアナ(皆さまの視線が痛い!それにミルフェルト様笑うの我慢してますよね?!)
多分ミルフェルト様、とても偉い人でした。
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