国王陛下からお呼び出し
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結論から言うと大乱闘は、最終的には騎士団総当たり戦という大合戦に発展してしまった。
現役の騎士の方々は、流石に強い。残念ながら私も兄も早々に負けてしまった。フローラとライアス様は結構いいところまで残っていたが、フローラは魔力切れ、ライアス様は副団長に倒された。
そうこうしているうちに、一人二人と脱落していき最終的にはディオ様と副団長の一騎打ちとなった。
「聖騎士とはいえ新参者に負けるわけにはいかない」
「勝利は我が女神リアナに捧げます」
こんな時にまで律儀なディオ様は、何かを私に捧げようとする。聖騎士の弱みを握った悪役令嬢の構図ではないだろうか。兄と騎士たちの視線が痛いです。
それからつまりのところディオ様が強い、強すぎた。いや、強過ぎるだろう?副団長、歯が立たないように見えるよ?
現役副団長って騎士団でたぶん二番目に強いんだよ?!ラスボス担当もここにいますよ?!
模擬剣を一振りすると、真っ直ぐにディオ様がこちらに向かってくる。そしてなぜか私の前で跪いて模擬剣を捧げてきた。
「勝利の女神よ。どうか受け取ってください」
「あっあの?!」
いや、しかしここで受け取らないのはディオ様に恥をかかせてしまうのではないだろうか?
チラリと兄に助けを求める視線を向けてみるが、早くしろ!というジェスチャーを返されてしまった。
私は覚悟を決める。聖女になるため儀式の練習してきたじゃないか!
そうだ、せめて短い言葉にしよう。模擬剣を受け取って微笑む。
「あなたの勝利に祝福を」
あわわっ。これじゃ女神を演じてるっぽいじゃない?!騎士団みんな静まりかえってしまったよ?逆効果!
私がもうどうしたら良かったのかとアワアワしていると、ディオ様が手の甲に口づけを落とした。
この日もそのあとどうやって実家まで帰ったか覚えていない。気づいたら玄関をくぐっていた。
たぶん、兄が手を引いて連れ帰ってくれたに違いない。兄にはいつもいつも感謝しかない。
そんな面倒見の良い兄が何か言いたそうなのに俯いているので、応援の気持ちを伝えてみる。
「お兄様ありがとうございます。次はお兄様を祝福したいです」
「リアナ!不甲斐ない兄ですまない。必ず強くなってみせる。ディオよりも」
ディオ様より強いと言うのは、騎士団で団長を除いて一番強いってことですよ?兄って文官希望で未来の宰相候補では、なかったですか?!
「お兄様は未来の宰相候補。お兄様の進むべき道を祝福しますわ」
「……そうか。そうなのかもな」
少しだけ明るい表情になった兄にほっとする。いつのまにか大好きになっている頼もしく優しい兄には、いつも笑っていてほしい。
「……でも、一度くらい勝ちたい」
そうですね。男の子ですもんね。兄のこと応援しています。
そんなふうに今までなら考えられなかった和やかな会話を楽しんでいると、とても慌てた様子の父が階段を駆け降りてきた。
「……なんで二人してそんなにボロボロなんだ。なんで国王陛下に呼び出された。お前たち何をやらかした?」
質問多いです父!私たち兄妹はなぜか国王陛下からお呼び出しを頂いてしまったらしい。かなりの大事だ。私も聖女になった時の一回くらいしか呼び出されたことないのに。
――――まさか騎士団での大乱闘が陛下のお耳に入ってしまったのだろうか。
「お父様……」
「噂の真相を確かめたいと仰っていた。リアナ、まさかお前まで」
父に抱きしめられる。親不孝な娘でごめんなさい。噂の真相と言われれば流石の私でも、なぜ呼び出されたか予想がついた。
騎士A「ディオ殿を祝福する聖女殿。相変わらず女神みたいだったな」
騎士B「今回、聖女殿にだけは、無様なところ見せたくなくて頑張った」
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