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図書館の主との再会


 その日から、毎日毎日、私は母に詰め寄った。

 だって、どうしても、もう一度ミルフェルト様に会いたい。

 1か月過ぎたころ「ミルフェルト様に会いたい!」と涙ながらに訴えていたら母が「すごくわかる」とつぶやいた。


「行くわよ……」


 そう言って母が連れて行ってくれた先には、目が覚めるような赤い髪の毛とモスグリーンの優しそうな瞳をした男の人のところだった。


「同僚さん、お久しぶりです」


「お久しぶりです。そちらはフォリア様ですか?大きくなりましたね」


 優しそうな男の人だけれど、ミルフェルト様に会うことと関係があるのだろうか。


「聖女リアナの名のもとに命じます。あなたの上司への謁見を申請します」


 私には甘い母が頑なだった理由の一端を感じてしまう。同僚さんと呼ばれた男の人が見る間に固まった。


「え……いつでも会えるでしょうリアナ様は。なんで、極秘資料管理室の奥の扉から入るんです」


「常設の扉は今はそこしかないでしょう?最近避けられているみたいなの」


「その理由ってもしかして」


「それしか考えられないわ」


 二人の視線が私に向かう。え?私が原因なんですか?そんなに嫌われるようなことまだしていません。悲しすぎます。


「……あの、嫌われてしまったのなら私」


「たぶん違いますね。この子の性格ってもしかして」


「そう、フリード様にそっくりだわ」


「わかりました。物理的に首が飛んだとしても、まだ妹を助けて頂いた恩を返していないですから」


 そう言って、同僚さんは私の手を握り「目を瞑っていてください。子どもに見せるには少し刺激が強いので」といって手を引いてくれた。


 ガチャッと、音がして煙のにおいがする室内へ、そしてもう一度扉が開く音がすると少しかび臭い臭いがした。あと、インクの香り……?


「アルベルトの裏切り者」


「名前で呼ぶなんて珍しいですね。何を恐れているんですか」


「ボクは恐れてなんていない」


 ミルフェルト様の声がする。でも、嫌われていたらと思うと怖くて目が開けられない。


「あの、ミルフェルト様。もし私のことがお嫌なのでしたらこのまま帰りますから」


「――――嫌だなんて言ってない。キミはボクにとって大事な観察対象なんだから」


 目を開くと、眉をひそめたミルフェルト様と目が合った。

 その瞬間、また私の心臓が信じられないくらい早鐘を打つ。

 走ったあとだって、こんなにドキドキすることないのに。


「ミルフェルト様、あの時は助けてくださってありがとうございました」


「まあ、半分以上僕の血のせいだからね」


 ミルフェルト様は椅子から立ち上がると、私の傍に歩いてきた。


「仕方ないな……。たまに遊びにおいで」


 本当に……?本当にまた会いに来ていいんですか。


 嬉しくて泣いてしまったら、ミルフェルト様がひどく慌てて私のことを抱き上げた。


「ああもう!キミたちの涙には弱いんだ。勘弁してくれる?」


 抱き上げられた瞬間、魂ってドラゴンが言っていた場所がズキンと強く痛んで、体中が熱くなって、そして最高に幸せになった。


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