主人公と兄
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次の日、兄と二人で学園に登校した。なんだか、女生徒たちの視線が痛い。なぜか男子生徒も。
(なぜか兄は手を繋いだまま離してくれないけれど、見ての通りの兄妹ですから!何もありませんよ?!)
それから、実家で朝食を食べている時に、なぜか兄から「次の学期は必ず首席になる」と宣言された。
確か『春君』でも、兄が主人公のために頑張って首席になるという下りがあった。
頑張って欲しいけど、兄のあんな台詞やこんな台詞は、記憶から消去しようと思っているので、たびたび蒸し返すのはやめて欲しい。妹としては居た堪れないので。
それと、いつか兄が好きになった人に言う台詞がなくなってしまうと困るので、妹に放出するのは控えて欲しい。私は本当に兄を心配してます。
それに、三年生にはゲームには存在しなかったディオ様がいる。首席……厳しいかな?と思ってしまったのは秘密だ。それでも、この気持ちは間違いない。私は軽く頷くと口を開いた。
「お兄様を応援しています」
親身になって重い相談に乗ってくれた兄には感謝しかない。おかげさまで少しだけ心が軽くなったのも事実なわけで。感謝の気持ちはちゃんと伝えないとね。
兄の笑顔が眩しい。攻略対象者たちは、どうしてこんなにカッコいいのか。いや、ときめいてしまったわけじゃない。兄妹だもの。
「リアナ様、おはようございます!」
「フローラ!相変わらず、元気ね」
主人公の挨拶は爽やかで気持ちがいい。ピンクブロンドの髪が、春の風に揺れる。可愛い。ずっと見ていたい。そう思ったのも束の間、フローラの頬に僅かに赤みがさした。
「あの、このお方は……もしやリアナ様の」
「兄のフリードよ」
「フリードだ。リアナの友人か?困った妹だが、仲良くしてやってくれ」
「はい!もちろんです。こちらこそ本当にリアナ様には良くしていただいています」
これは、これはもしや淡い初恋の始まりなのでは?とドキドキしていたのに、フローラは平常運転だった。
「その立ち居振る舞い。かなりの強さと見ました。いつか手合わせ願いたい」
「「え?!」」
「あっ、つい本音が。失礼いたしました」
さっき頬を染めていたのは、ライバルを見つけたせいだったのか!返して私のときめき!
しかし兄は表情を変えることなく平然とつぶやいた。そう、基本兄はクール系なのだ。最近私にはデレが強いが。
「やはり、変わり者の友人は所詮変わり者か」
「はい!リアナ様とも手合わせするお約束をしています!」
話が噛み合ってないのにも関わらず、なぜか二人は頷き合って固い握手を交わしている。
ライバルが誕生する瞬間を、私は今日見てしまった。
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