表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

その日、サキュバスは夢を見た

雪降りましたね…。

…………


「起きないね。」


「とても疲れているのよ。ふふふ。」


吸血鬼が言い、鬼が応える。


「…雪…。」


「ほんとね。ふふふ。」


「お父さんは寝ちゃったし…。」


3人が外で降っている雪を見る。静かにシンシンと降り積もる。


「…静かだと眠くなるよね。」


「夜行性だけどね。」


「そろそろ寝るわよ?ふふふ。」


「「は〜い。」」


サキュバスは吸血鬼たちと同じ部屋で寝るようだ。


…………

夢の中


(私は夢魔…。他人の夢の中に入り込むことが出来る能力を兼ね備えている…。けど、奥底でその人のことを思わないと入れない…。)


サキュバスが夢の中で思う。


(この者の中に入ろうかな…。)


適当に夢に繋がる穴へと入ると…。


「ふふふ…。サキュバスちゃん…。」


(吸血鬼お姉さん…。…!?私の人形がたくさん…!?怖い!普通に怖い!というより、金の延棒だらけだし…。欲望に塗れてるよ…。)


サキュバスが微妙な顔をする。他人の夢に入っていると、姿を見せようと思わなければサキュバスは姿を見せない。そんな感じで辺りを物色していると…。


(…?)


写真かけだ。しかし、存在がブレている。


(ブレているのは、本人も忘れそうな記憶の奥底のもの…。)


その写真に写っているのは親と妹の写真…。


(……。吸血鬼お姉さんも…。そうだよね。)


それを見た後、サキュバスは次の夢の穴へと入った。


…………


(次は誰だろう?)


またもや入ると、雪原に出た。


「皆んなでピクニックに来るなんて珍しいな。」


(D!?)


「サキュバスちゃんも来てくれて嬉しい!」


(私もいる…。誰の夢なんだろう?)


狼女が夢の中のサキュバスの頭を撫でる。


「う〜…。儂にはちと寒いのう…。」


「竜姉さんは寒いのに弱いんだから〜。」


「うるさい…。」


吸血鬼も竜もいた。というより、皆んないる。


「狼女、皆の楽しめることを考えて実行したことはすごいぞ。」


「えへへ〜。」


Dに頭を撫でられて嬉しそうにする狼女。


(…狼お姉さんの夢か…。…少し悪戯しちゃおうかな…。)


そこで何を思ったのか、サキュバスが姿を見せた。


「あれ?サキュバスちゃんが2人…。」


「こっちは本物だよ。夢に入り込んできた。」


「ふぇっ!?え、えと…。これは…違うの!違うから!そんなんじゃないから!」


狼女は慌てて否定する。


「というより、何で入って来たの…?というより、何で姿見せたの!」


「う〜ん…。何となく。」


「もう〜…。」


狼女が恥ずかしそうにする。実際、その恥ずかしそうにする姿が見たかったがために姿を見せたのだ。


「さ、続けて。狼お姉さん。」


「続けるって…。もう!さっきから!私の夢から出てって〜!」


…………


(あれ?強制的に次の夢に来ちゃった…。て、ことは起きちゃったのかな?…。…悪戯されないよね…?)


そんなことを思いながらも夢の中を物色する。あるのは酒樽、そして昔ながらの家だ。その家の中から酔って騒いでいる声が聞こえる。


(…多分、鬼お姉さんの夢?)


「またあの悪夢…。ふふ…。」


(!?)


鬼が隣にいた。もう何が起こるか分かっているような顔をしている。そこに…。


ボァァァァァァ…!


(!?)


周りが炎に包まれた。昔の家も含めて何もかもが焼き尽くされてゆく。逃げ惑い、悲鳴をあげる鬼たち。逃げ惑う鬼を淡々とYとその仲間たちが狩って行く。


「…やめて…やめて…やめて…。」


鬼はその場で頭を抱えて、耳を塞ぐように縮こまり、その言葉を連呼する…。相当な過去だ。そこに、Yか鬼の目の前に立つ。


『終わりだ…。』


Yが大鎌を振り下ろす。


「終わらない!」


「!?」


サキュバスが姿を表して、Yに体当たりした。鬼は突然現れたサキュバスに驚いていた。


「サキュバスちゃん…?」


「鬼お姉さん…。勝手にごめんなさい…!でも…。」


サキュバスは夢だと分かっていても、放っておけなかった。


「…そうね。ふふふ。終止符を打たないとね。ふふふふ。」


「?」


すると、周りが真っ白になった。何もなかったかのように。


「…ありがとう。サキュバスちゃん…。あそこで一族の末裔である私が死ぬことが悪夢なの…。私は一族の者たちから託されてるから…。それを奪われるのがとても嫌なの。…助けてくれてありがとう。サキュバスちゃん。ふふふふ。」


鬼が不敵な笑みで言う。


「鬼お姉さん…。」


「…同情はいらないわ。ふふふ。」


「……。」


サキュバスは次の夢の穴へと行った。


…………


(次は誰の夢なんだろう…?)


サキュバスが降り立ったのは雪の降る場所だ。近くに墓がある。そこに2人、墓の前にいる者がいた。サキュバスが近づく。するとそこにいたのは…。


『…D、またそこにいるのか?』


(!?)


そこにいたのは立っている、猿の仮面をつけた男と、割れた狼の仮面が添えてある墓の前でしゃがんでいるDだ。


「G…。俺はCを助けられなかった。」


『あの場合は誰でも助けることは出来なかった。』


「だが…。俺の相棒だった…。死なせないための相棒だ。なのに…。」


『あまり自分を責めるな。こうなることも覚悟しての組織所属だ。突然死んでも当然だ。殺しているなら殺されもする。悔いは無いはずだ。』


「……。なぁ、G…。」


『?』


「Cは雪が好きだったな…。いずれは雪原で皆んなと一緒に食事をしたいだとか…。」


『この組織に所属した時点でもう叶わぬ夢だ。自分を知っている者は記憶を消され、世間から存在を消される。それに暇もない。』


「…そうだな。…だが、俺はCの夢を叶えさせてやりたい。」


『?』


「俺がその夢を継ぐ。相棒として。友として。」


『…そうか。…このことは上部へ報告しないでおく。…Cの夢を踏み躙るな。』


「分かっている。」


Gが姿を雪にくらまし、最後にDが懐から取り出した蜂の仮面をその墓に添えた。その途端…。


「サキュバス…。いるのは知っている。姿を見せろ。」


(!?)


Dが言い、驚くサキュバス。


「いつから知っていたの…?」


「最初からだ。入ってきた途端に精神が覚醒して、夢を見ているが見ていないようになるからな。」


そして、世界が真っ白になる。


「で、何故来た?」


「…頼まれたのよ。」


「頼まれた?」


「姉妹たちのことをどう思っているのかとか。」


「ふむ…。どう思っている…か。家族だ。この上ない大切な存在だ。」


「…その中では誰が1番好みなの?」


「妖怪と人間での交配は禁止されている。好みもない。」


「…そう。」


「なぜ聞いた?」


「朴念仁!」


「?」


サキュバスはさっさと夢から出て行った。


…………


「……。」


サキュバスが目覚める。


(狼お姉さんのこの恋は思っている以上にハードだ…。)


サキュバスは夢から覚めて思う。周りを見ると抱きついたままの吸血鬼がいた。台所から良い匂いがする。サキュバスは巻き付かれている腕をどかして、部屋のドアを開けた。マンションのため、部屋の感覚がせまい。


「おはよう…。」


サキュバスは目を擦りながら台所へ行く。割烹着を着た狼女が朝食を作っていた。


「ふんっ。」


狼女は頬を膨らませてプイとする。昨晩の夢のことだろう。


「狼お姉さん〜。」


「知りませんっ。」


「許してよ〜。」


「…もうしない?」


「うん。」


「じゃぁ、許す。本当にしないでね?」


「うん。」


許してくれるのだから、本当に優しいのだろう。


「鬼お姉さんから話も聞いたし。」


「?」


「夢で助けてくれたんでしょう?」


「…うん。」


「とても喜んでいたよ?ありがとうだって。」


「…うん!」


狼女が笑顔で言い、サキュバスも少し頬を緩ませて頷いた。


「あっ、そうだ。冷蔵庫の中にえのきがあるから出して欲しいな。上から4番目の引き出しにあるから…。」


「これ?」


「そう!ありがとう。」


「手伝う。」


「本当?ありがとう。」


狼女が笑顔で言い、サキュバスが隣でえのきを切る。もうすぐ朝ごはんだ。

Dの過去を一部…。人間とはなんなのだろうか…。


登場人物紹介コーナー

鬼…いつも不敵な笑みをこぼす。集落を襲われた日からトラウマとなり、よく悪夢を見る。その悪夢を打ち消すかのようにお酒を飲んでいる。

G…組織の者。猿の仮面を被っている。

F…組織の者。かつてのDの相棒。狼の仮面を被っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ