オークなんて殺し飽きた
戦闘に入ります。
※残酷な描写があります! 注意してください
セインの村に着いたアリアは、早速族長が呼び集めた全村人に、アリアの事を、待ち望んだ救世主が来たと伝えた。
反応の大小の違いはあったが、皆、喜んでその到来を歓迎した。
そして今は、族長の住む家に招かれ、伝承と現状を聞いていた。
「この村では、代々、強き女性を女王として崇め、女王の指導の下で繁栄を続けておりました。
先代の女王、『ネーノス』様は、強さと賢さを併せ持った偉大なお方で、我らセインの民は、皆幸せに暮らしておりました。
・・・ところが、今から10年程前のことです。
オークの軍勢が、この村を襲い、ネーノス様は、村の者たちをお救いするため、自ら犠牲となって奴らに連れ去られてしまったのです・・・。
ですが、ネーノス様は、自らの命を代償にして、オークの軍勢を岩の下に封印することが出来ました。
しかし、ネーノス様の後継になれるような女性は、村の者たちの中にはおらず、残った女性も魔物との戦いや病で命を落とす者が多く、今では数えるほどしかおらんくなってしまい、ワシが代理で今日まで村の者たちを纏めておりました。
ですが今、アリア様と出会えたことはまさに奇跡!
どうか我らを、お救いしてください!」
「分かってる分かってる。 つまり、あたしにはその女王をやれってんだな?
で、まずは何をすればいいんだ?」
「おお! 頼もしきお言葉! では、最初にまずあなた様には、『儀式』を執り行っていただきたいのです。 ほれ、新たな女王にならせられるアリア様に挨拶を・・・」
族長は、自分の隣に座っている少女に、礼を促す。
アリアよりも、2~3くらい年下の少女が、アリアに深くお辞儀をする。
「この村に残っておる、若い女性で、先代女王ネーノス様の遺児の一人、『リン』という者です」
「先代女王様の娘、リンです。 アリア様、お目にかかれて光栄です」
「そんなにかしこまらなくても、どうせ外部の人間だし。 で、この子と儀式が何の関係が?」
「はい、アリア様には、このリンと・・・」
族長が言葉を発する前に、村の老人が、慌ただしく家の中に入ってきた。
「たたたたた、大変じゃああ!! お、オークの奴らが!!」
村人たちが、悲鳴上げながら逃げていく、その後ろから、武装したオークの軍団が、家や柵を壊しながら進撃してくる。
村の若い衆が、槍を持ってオークを迎撃するが、簡単に薙ぎ払われてしまう。
「ギャハハハハ! 無駄ダ、人間共! ドンナニ足掻イタトコロデ、俺タチ二殺サレルダケダゼ!」
「ったく、こんな島にもオークのクズ共がいるのかよ」
騒ぎを聞きつけたアリアは、うんざりした顔をしながら、普通にオークの方へ向かっていく。
「あ、アリア様!? 危険ですぞ! お止め下され!!」
かつて、自分たちを守るため、自分を犠牲にした、先代女王ネーノスの姿がフラッシュバックした族長は、必死にアリアを制止しようと呼びかけた。
だが、アリアは止まらない。
ずんずんとオークに近づいていく。
「ン? ナンダァ? 自分カラ来ルトハ、威勢ノ良イ雌ダナ! ヨーシ、他ノ人間ノ雌ヲ犯ス前二、最初二オ前カラ可愛ガッテヤルゼェエエ! ギャハハハハハ(ズギャッ!)ゲハッ!?」
突如、体を襲った強い衝撃に、オークは高笑いの途中で咳込んだ。
それから、段々と激痛が走り始め、目の前の人間の女の方を見ると、
赤く濡れた手に、紐のようなものがいくつか付いた、赤い袋を持っていた。
直感が生命の危険を、今までにないくらい警告してくる中、オークは、激痛の中血反吐を吐きながら、女に尋ねた。
「ゲ八ッ! ゴバッ!? ガッ! ソ、ソレハ、一体、ナンダァアアア・・・?」
「自分の身体見てみろ」
女にそう言われ、オークは、先ほどから、強い激痛を感じている、自身の胸の辺りを、恐る恐る見る。
そこには・・・・・・・・・
本来あるはずの皮膚がなくなり、剥き出しになった自らの骨と赤い肉体と、どくどくと血を噴き出している、ぽっかり空いた胸の穴だった。
その穴から伸びているいくつかの管を辿っていくと、女が手にしている、微かに脈動している、赤い袋ーーーーーー
ーーーーーーーーーー自らの心臓であった。
その光景を目にし、そして理解したオークは、恐怖に飲まれた。
「ヒィイイイイイイイイイイ!?!?!? ヤ、ヤメ」
だが、そのオークが、言葉を発する前に、アリアは、オークの心臓を上に掲げて、握り潰した!
心臓から破れ出た、赤い血が、アリアの、腕を、髪を、顔を、身体を濡らした。
僅かな血液が、握った掌から、だらだら流れ出るだけになった心臓を、地面に叩き捨てると、アリアは呟く。
「オークなんて、殺し飽きてんだよ」
「バカ野郎! 人間ノ雌ゴトキ二、殺サレテンジャネェ!」
弱肉強食の世界で生きているオークにとって、仲間を目の前で殺されてもーーーそれが群れの中で一二を争う程の実力者であってもーーー恐怖は感じなかった。
むしろ、死んだ者への罵声と共に、自身の力への、自信と慢心が高まる一方だった。
「マァ、イイ。 セッカクノ、生キノ良イ獲物ダ。 タダ、犯スダケジャ、物足リネェ。 オ前ノ肉ヲ、ソコラジュウニ、撒キ散ラシナガラ殺シテヤルゼェ! ギャハハハハハ!」
「そりゃあ、つまり。 こういう事か?」
アリアは、オークが言い終わった瞬間、オークのその贅肉の詰まった腹を、丸い饅頭を半分こにするように、抉り取った。
腹に溜まった脂肪を皮ごと剥ぎ取られ、包みがなくなった腸が、でろでろとオークの中から飛び出してくる。
「ブヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」
豚八割・人二割どころか、100%豚の悲鳴を上げるオークの内臓剥き出しの腹に、アリアは何の躊躇もなく両手をそこに突っ込み、そのままオークの身体を軽々持ち上げると・・・
「オラァ!!」
自分の頭の上で、オークの身体を上下に裂いたァッ!!
おびただしい量の血と共に、ぶつ切りの肉片と内臓が、辺り一面に飛び散った。
「ブヒャヒャヒャ! 情ケネェ奴ラダ! コノ女ハ俺ガイタダクゼェ!!」
三匹目のオークが、棍棒を振りかざして、アリアに襲い掛かる。
が、アリアはそれを余裕で避けると、オークの顔面を、ガッと掴み、
スパイの変装マスクを剥がすように、ベリッと剥がした。
ただ、オークの顔面は、マスクではなく、生皮なので・・・
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 顔ガァ~!! 俺ノ顔ガァ~!!」
オークの顔全体が、人体模型の半分側のようになっていた。
赤くなったオークの頭部に、アリアは情け容赦なく、チョップを脳天に叩きこむ。
すると、頭部はスイカのように真っ二つになり、オークの身体は、フラフラとバランスを取った後にバタンと倒れ、魚のように暫く痙攣していた。
「ウ、ウワアアアアアアアア!? ナンダコイツハアアアアアアアア!?」
「バ、バケモノダアアアアアアアア! ニゲローーーーーーーーー!!」
立て続けに三匹も仲間を殺され、やっと身の危険を感じ取った残りのオークたちは、その場から逃げようとした。
「クズが、逃がすか」
そう言うと、アリアは、手刀で自身の目の前を払った。
一見、何もないところをただ扇いだように見えるが、そうではない。
実際、手刀で薙ぎった後に、刃の形をした空気の波が、オークたちの背中に向かって飛んでいたのだから。
真空波が、オークの身体を音もなく通り抜けたかに見えた、その直後、オークたちの上半身が、ぼとり、ぼとり、と地面に落ちる。
残された下半身は、上半身がなくなったことに気付かずに走り続け、数メートル走ったところで、それに気付いて、バタンと倒れた。
この数分にも満たない虐殺劇に、村人たちは、ただ、呆然としていた。
自分たちですら歯が立たなかったオークの大群を、たった一人で殺し回った村の新たなる女王の姿を、恐怖よりも尊敬の眼差しで見ていた。
「ウオオオオ! 死ネェ、人間!! グエッ」
不意打ちを仕掛けようと襲い来るオークも、アリアはなんの苦も無く首根っこ掴んで拘束した。
首を絞める力を緩めずに、アリアはオークに詰問する。
「てめぇらの巣穴はどこだ?」
「・・・グ・・・ゲェ・・・ガ・・・!」
オークは、首を絞められて喋ることが出来ない様子だった。
それでもアリアは、力を緩めることはせず、逆にさらに固く締め上げた。
「まあ、喋らなくてもいいや。 てめぇらが逃げようとした方角で、大体の場所は分かるからな、こっちだな」
そう言うと、アリアは、オークを引きずりながら歩いていく。
情報はないに等しいが、問題はない。
幼い頃から、戦いを求めて野山を駆け回ったアリアは、未発見の魔物の巣やダンジョンを探し当てる術を熟知していた。
村から出て僅か数分後、アリアは、オークの巣穴を発見した。
「ナンダ、コノ臭イハ? 血ノ臭イダ、ダガ、人間ノ臭イジャネェ」
巣の外から流れてくる異臭に、異変を感じた留守番のオークたちが、巣の外に出てくる。
「どうやらここで当たってたみたいだな」
「オ前、人間カ! コノ臭イ・・・、俺タチノ、仲間殺シヤガッタノカ!」
「そうだ。 村の奴らに害をなすようなてめぇらみてーなカスは、皆殺しにしねぇといけねぇからよ。 悪いが、死んでもらうぜ」
「クソッ、ソウ簡単二殺セルと思ウナ! 野郎共、アノ人間ノ雌ヲ、ブチ殺セェエエエ!!」
オークの号令と共に、オークたちが手製の槍を投げつけてくる。
アリアは、それを、手にした「肉の盾」で防ぐ。
「グギャア!!」
数本の槍が身体に刺さり、盾にされたオークは絶命した。
盾にしたオークを、巣穴のオークに投げつけると同時に、アリアは、オークに向かって突撃肉薄する。
投げつけられたオークは、3匹のオークを巻き込むようにぶつかり、そのまま一緒に壁にぶつかって合い挽き肉になった。
その間にもアリアはオークの首を、アッパーで殴り飛ばし、股間を蹴り上げ股から真っ二つにし、頭部に拳骨を喰らわせ胴体の中に沈めた。
次々と殺されていく仲間の姿を見て恐怖を覚えたオークたちは、逃げ場もないのに穴の奥へと逃げていく。
「コラァ! 逃ゲルナ! 戦エェ!! 臆病者ドモガ、コウナッタラ俺ノ手デ殺シテヤル!!」
「面白い、やってみろ」
オークの宣言を聞いたアリアは、腕組をしてその場に仁王立ちをする。
攻撃を腕で防ぐ素振りも見せず、余裕の表情だ。
「テ・・・テンメェー!! フザケテンノカァーーー!? ナメンジャネェエエエエエ!! 死ネェエエエエエエ!!」
オークは、手にした石斧を、アリアの頭目掛けて振り下ろす。
だが、石斧の刃先が、アリアの頭にちょんと着くと、その瞬間、石斧は固まった砂の塊のようにバラバラに崩れ去った。
刃先のなくなった武器の柄が、空しく空を切る。
あまりの出来事に、オークは困惑し、何度も石斧だったものを見直した。
「で、その程度か」
「ク・・・クソガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
どの感情を出せばよいのかも分からないくらい混乱したオークは、やけっぱちに両腕をアリアに振り下ろす。
が、簡単に掴まれてしまった。
「グ、コノオオオオオオ・・・! ハナセエエエエエエエエ・・・!」
「いいだろう、言う通りにしてやる」
アリアは、オークの言葉の通り、 オークの両腕をオークの身体から『放して』やった。
ブチィッ!!!
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 俺ノ腕ガアアアアアアアア!!!」
両腕を切り離されて、叫ぶオークの顔面に、アリアは何の躊躇いもなく、正拳付きを放った。
オークの顔に突き刺さった自身の腕を引き抜くと、顔に大穴が開いたオークの死体は、巣の底に続く坂道を転がり落ちていった。
その後、巣の奥まで逃げ込んだオークたちを、アリアが一匹残らず虐殺したことにより、オーク騒動は幕を閉じた。