封じられてたもの
アリアが、島の先住民たちの村に向かっている頃。
村から離れたところにあるとある丘で、問題が起きようとしていた。
いくつもの岩が積み重なって出来た大きな丘。
その積み重なった岩の中心付近の岩が、ゆさゆさと、まるで人の鼓動のように、後ろから人に押されているように、揺れ動く。
岩の揺れはどんどん大きくなり、そして、ゴロリと岩が、岩肌から剥がれ崩れ落ちていき、その次の瞬間、大音響を上げて、沢山の岩がガラガラと崩落した。
砂埃が収まると、岩肌がそびえたっていたところには、大きな洞穴が現れ、その中からいくつもの人影が、姿を現す。
その陰は、人間のものではなかった。
緑色の肌に、大きな体躯、豚と人を掛け合わせた顔は、オークと呼ばれる魔物のものだった。
洞穴から出てきた、オークの一匹が、雄たけびを上げる。
「オオオオオーーー!! ヤッタゾ! ツイ二外二出ラレタ! ソレ二シテモ、アノ人間ノ雌メ! 無駄ナ、アガキヲシヤガッテ! 自分ヲ殺シテ、俺タチヲ道連レ二、コノ狭イ洞窟二閉ジ込メヤガッテ! フザケタ真似ヲ、シヤガッテ!」
雄たけびと共に、自分たちが、閉じ込められた原因、人間の村から攫ってきた女への恨み節を吐き捨てる。
「ソレデ、コレカラドウスルンダ?」
「決マッテンダロ! アノ、人間ノ雌ノ、同族ガ、マダイルハズダ! 俺タチ二コンナ事シヤガッタ仕返シ二、奴ラヲ、皆殺シ二シテヤルノダー!! オ前タチハ、俺二続ケ! 奴ラノ住処ヲ、蹴散ラシテヤル! ソレカラ・・・」
そう言うと、オークは、自分たちが出てきた洞穴の方を振り返る。
「オイ! ガキ! 速ク出テコイ!」
オークが怒鳴った先には、まだ若い、子供のオークが、不安定な岩場を、息も絶え絶えに上がってくる。
「チッ! ノロマガ・・・。 サッサトシロ! コノ、クソガキガ! ・・・オ前タチハ、今日ノ晩飯ヲ、狩リ二行ケ! ・・・オ前モダ、クソガキ! モタモタスルナ!」
オークが、別のオーク達に指示すると、オークの一団が、森に入っていく。
洞穴から這い出た子供のオークも、その後を追いかける。
「残リノ奴ハ、巣穴デ留守番ダ! サア、行クゾ! 人間ヲ一人残サズ殺スノダー!!」
そうして、武器を持ったオーク達が、村に進撃して行った。