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おい、それお前の妄想日記じゃねぇのか

やがて、アリアの元に、村の者に連れられた、族長と司祭らしき二人の人影ーーーどちらも村人の服装とは違いがあり、動物の毛皮で出来た服に、骨や羽根を加工した派手な装飾品を身に着けていたーーーがやって来た。

地に付きそうな長く白い髭と、ぼさぼさの毛深い白い眉毛を持つ、木の杖をつきながら歩く、村のーーーというより部族のーーー代表である族長と思わしき老人が、アリアの目の前に来て、顔を見つめた。

すると、突然、眉毛で覆われた両目を急にカッ、と見開いた。


「おお・・・! そのお姿、預言の通りじゃ・・・! お待ちしておりました、我らの救いの主さま・・・!」


神々しいものを見るかのように目を輝かせ、自分の前に跪く老人を見て、アリアは困惑した。


「なんだよ爺さん、急にどうしたってんだよ?」

「おお、これは失礼を・・・。 わしは、この島に住む「セイン」の村の者たちを纏めております、

『ロウ』という者ですじゃ。 あなた様のお名前は・・・」

「あたしは、アリア。 ついさっきこの島に来たばかりだ」

「おお、アリアさま・・・! 我らをお救いするため、よくぞおいで下されました・・・!」

「おい、待てよ。 なんだよその、救いの主ってのは・・・?」

「おお、それですじゃ。 なんのご説明もなく、申し訳ございませぬ。 司祭どの、預言の書を」


族長ロウは、司祭ーーー族長が毛皮と羽根中心の装いなのに対し、こちらは骨中心の装いをしていたーーーに命じ、預言の書と呼ばれる、おそらく木皮紙の束を読み上げる。


そこには、こう書かれていたーーー



母なる海の生き物たちが、力強く泳ぎ始める季節。


遥か海の地平の彼方より


巨大な木の方舟に乗りし、救いの主が


この地に降り立つであろう。


その者の姿は、


緋色の髪をした、美しき女性にょしょうの姿をしている。


その者は、我らを窮困から救いあげ、


我らを導き、


そして、我ら、セインの民に永劫の繁栄をもたらすであろう・・・




・・・ここまで聞いて、アリアは、はっきり言って胡散臭いとかなり思った。


しかし、自分が遠く離れたバイス王国から、軍艦でここまで来たことは確かだし、

その予言の救世主も、アリアと同じ緋色、赤い髪をしていると書かれていて、

実際、王国にいた頃のアリアは、周囲に「黙っていれば美人」と言われるほど、容姿の評価は高かった。


「でもだからと言って、あたしが救世主なわけあるかぁ?」

「はい! このロウ、この目でしかと見て、あなた様であると確信いたしました! どうか、我らを、お救いしてくれませぬか・・・?」


ロウは、アリアの前に跪き、他の者たちもそれに従った。


アリア自身は、自分がそんな大層な人物だとは思ってなかった。

だが、自分に救いの手を求めるこの島の人間の願いを蹴るようなこともしようとは思わなかった。

戦場で戦いまくっていた時も、助けを求める村町をその力で助け、しかし、あまりにも自分に依存するようなら、戦力になる人間を、強制フル強化し、自分たちの力で解決できるように鍛える、それを何度もやってきたのである。

だから、目の前の問題を片付けたら、この島の人間を、自分たちで守れるくらいに強くする、と、アリアは決心していた。


「分かった。 力しか能のないあたしで、どこまで役に立てるか、やってやるよ」

「おおおおお!! ありがとうございます! ありがとうございます、我らの救いの主さま!!

 では、そうと決まれば、早速村にご案内いたしましょう。 村の者たちも、あなたがいらっしゃるのを心待ちにしておられますじゃ!」


アリアの力強い返事に、ロウを始めとした村の人間たちは希望に溢れた顔で大いに喜び、救世主の登場を祝福した。


村へ向かう途中、司祭が、「・・・まさか、本当に予言が当たるとは・・・」、という小さな呟きをアリアは聞き逃さなかった。

アリアは、ますます預言が胡散臭いと思った。


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