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3/15

二度とその面見せんな

「で、あのバカは今どこに居んだよ?」


大騒動が起きた、その翌日。

時刻は午前・正午前。


そこそこ人通りの多くなった通りを、アリアが、前を先導する騎士を睨みつけながら歩いている。

アリアは、肩にロープを背負っており、その後ろ先には、大雑把にぐるぐる巻きにされた、5人程の騎士の遺体・・・遺体と断定出来ないが、道の真ん中に赤い一本線を描きながら引きずられる様は、生きているとは思えなかった。

先導している騎士も、子犬のようにびくびく怯え、この状況から一刻も早く抜け出したいという意識から、後ろを振り返らず、早歩きで目標地点へ向かっていた。


時は遡ること、数分前・・・


アリアの処遇を決めるため、国王との会議に向かう父親を見送った後、屋敷の窓から騎士の一団が向かってくるのが見え、荷物をまとめて、強襲のように荒々しく玄関から入ってくる騎士たちを出迎えた。

先頭の騎士が、こう告げた。


「アリア・クランガル、貴様を拘束する。 我々と来てもらおう」


「てめーらみてーなカスの護衛なんかいらねぇよ。 自分で行くから場所教えろ」


アリアがそう返答すると、騎士たちは何の警告もなく剣を抜き、切っ先をアリアに突きつける。


「貴様、図に乗るなよ! 侯爵令嬢風情が、我々第一騎士団に楯突くのか! 貴様は罪人らしく大人しくついて来れば良いのだ!」


「嫌だっつったら?」


その言葉を合図に、先頭の騎士が、剣を構えてアリアに突撃する。


が、アリアは騎士の剣を手刀で弾くと、そのまま顔面にパンチを打ち込んだ!

顔面が鎧兜ごと凹んで、頭から血が噴き出す!

と同時に騎士たちが一斉に突撃してくる。

だが、アリアは、それを高く飛んで回避すると、天井の梁を蹴って飛び出し、一人一人仕留めにかかる。

一人目の騎士に肉薄すると、左フックを脇腹に喰らわせ、体をくの字に折り曲げ、

二人目の騎士の頭目掛けて回し蹴りを決め、頭をボールのようにして、窓にゴールを決め、

三人目の騎士をサマーソルトキックで打ち上げると、空中で何発を打撃を与え、アッパーでフィニッシュし、

四人目の騎士の攻撃をよけると、心の臓に正拳突きを喰らわせ、命を奪った。


あっという間に5人の騎士の遺体が出来上がり、残ったのは、血を見て腰を抜かした若い騎士だけとなった。

アリアは、その騎士を睨みつけて、こう言った。


「てめぇらに命令した王子サマは今どこにいる?」




「この船か?」


港に停泊している軍艦の前で止まった騎士に、そう問いかけると、騎士は顔を縦に何回も振って、逃げるようにその場から立ち去った。

アリアは、騎士たちの遺体を波止場に放置して、その船に飛び乗った。


甲板に飛び乗ると、そこには大勢の兵士と、重症を負って包帯ぐるぐる巻きのマーティンがいた。


「フン! 自らここに現れるとは、ご苦労なことだな、アリア!」

「ずいぶんみずぼらしい姿になったな、王子サマ。 あの後階段から転げ落ちたのか?」

「アホか! お前にやられたんだお前にーーー!!

 だが、貴様は気付いておらんようだな・・・

 自ら罠にはまったことになぁ!


 皆の者、出港せよ!!」


マーティンの声を合図に、船の錨が上がり、帆が張られ、船が進み始める。


「ふはははは! どうだ! これで貴様はもう陸には戻れまい!」

「いや? んなこたぁ、全然。 てか、そのセリフは沖合に出た時のセリフだろ、まだ港からも出てないぞ」


その通り、船はかなりノロノロ進んでおり、まだ船首が波止場から少しはみ出たくらいしか進んでなかった。


「ぐっ・・・! なにをしておる!? もっと速く進めんのか!?」


マーティンが兵たちに怒鳴り散らすと、オールを漕いだり、風魔法で帆に風を送ったり、使役獣で船を引っ張ったり、皆船を速く動かそうと、努力した。


「次のセリフ、沖合に出るまで待っててやるから、速めにな」

「貴様ぁ! 何故落ち着いていられる!? こうしている間にもどんどん岸が離れてゆくぞ!?」

「いや、沖合からでも普通に泳いで帰れるし・・・」


兵のみんなが頑張って努力した結果、20分くらいで沖合に出ることが出来た。


「で、こっからどうする? あたしを殺して、海に死体遺棄でもするか?」

「無理無理・・・」

「だよな」

「貴様ぁ! 給料減らすぞ! ・・・まあ、それは良い。

 ふふふふ・・・ アリア、貴様は自分がどのような目に会うか分かっておらぬようだな?

 はっきり言って一思いに処刑したいところだが、それでは一瞬すぎる・・・

 貴様には、我が妻、マリアを苦しめた分、存分に苦痛を受けてもらわなければならぬからな・・・」


「いつまでももったいぶってると、この船沈めるぞ」

「はい! マーティン王子陛下は、ここからさらに半日行ったところにある無人島に、あなたを島流しにする予定です!」

「こらぁ! 貴様ぁ! それはこいつに絶望を煽ってから告げる手筈だろう!?」

「え、だって、我々も死にたくありませんし・・・」


兵士は、命欲しさに、段取りを無視してアリアに刑を言い渡す。


「へー、島流しねぇ・・・

 まあ、いいさ、その島とやらに着くまでは大人しくしてやる。

 なんかしてきたら、王子の無事なところから殴るからな」


そう言うと、アリアは、甲板の日当たりの良いところに寝転んだ。

そんな余裕綽々な態度が癇に障った王子は、大声で怒鳴り散らす。


「父上がお前を国外追放に処すと仰ったのだぞ! どうだ、自分の信じたものに裏切られた気分は!?」

「どうせ、王様が断片的に言ったのを、お前が勝手に都合よく解釈しただけだろ。

 それにその発言、自分とこに対する国家侮辱罪だろ」


「貴様、自分が貴族である自覚に欠けているのではないか!? この恥さらしめ!」

「お前が言うな。 未来の王様気取りてぇならそれらし・・・

・・・いや、お前には無理か。 女相手に身勝手に撒き散らして気持ちよくなるような男がよぉ」

「誤解を招く発言すなーーーーーっ!!!」


結局、島流しの島に到着するまで、アリアは、潮風を感じながら昼寝をした。

途中、マーティンが海水掛けてきたので、王子の親知らずを二本手に入れた。



そして、船は、問題の無人島へと到着した。



桟橋すらない、砂浜の浅瀬に、アリアは水飛沫を上げながら降り立つと、船の甲板から、マーティンが、またガタガタ言い始めた。


「きふぁむぁあああああ! ふぉんほおにわはっていふのふぁ!? きさふぁは我がくひをついほぉふぁれはんはほ!? これふぁふぁいふぉふぉふぁんふは、ふみふぉふいはらふぁへへは、ふいほうふぁへはふぁんへんひへふぁふぉお!」


麻酔無しで親知らずを二本も抜かれたマーティンは、もう何を喋っているのか解らなくなっていた。


「ガタガタうっせぇぞ、下顎砕くぞてめぇ。

 いいか、あたしはもうてめぇみたいなクズの世話も尻拭いも、もうゴメンなんだよ。

 そうやって高い所から偉そうに自分の都合の良いことばかりほざいて、他人に迷惑かけるようなタコが、この先どうなろうが、もう知ったこっちゃねぇんだよ。

 あたしがいなくなってそれもマシになるならいいが、お前あたしが戦場行ってた間もマトモにしてた試しねぇじゃねぇか。

 妹と結婚したいだと? いいじゃねぇか、すればいいだろ。

 だが、それをやって世間からも家族からも白い目で見られるのは、あたしでもお父様でも、お前の親父や弟でもねぇぜ。


 じゃあな、クソッタレのクズ野郎、二度とその面あたしの前に見せんなよ」




アリアが言葉を終えると、船は出港した時のように、ゆっくりと進みだした。

だが、マーティンが大砲で攻撃しようとしたのを見つけたアリアが、砂浜に落ちてた石を、船体に投げつけ、横っ腹に大穴開けると、沖に出た時の倍の速度で、水平線の彼方へ消えていった。


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