惨状
「・・・ナンダ・・・コレハ・・・!?」
血まみれの岩穴と、バラバラになった同胞の死体を見て、オークたちは自分たちの巣穴の前で愕然とした。
自分たちが、地上に帰還し、人間たちを襲撃する部隊と別れたのが、日が空の真上にいた頃。
地中の暗闇の中で、喰いつ喰われつした、魔モグラや魔蟲以外の肉にやっとありつけたその日の夕刻、
狩猟を終えて巣穴に帰還する途中、自分たちの住処の方角から、これでもかという血の匂いが漂ってきていた。
襲撃部隊は、かなり派手に殺ったと、そう思って家路につくと、そこには凄惨な殺戮の痕があるだけだった。
巣穴の周りを探っても、住処の底まで探しても、転がっているのは、同じオークの死体ばかり、人間の姿は、どこにもなかった。
「ミンナ・・・ミンナ、死ンデヤガル・・・! ドウイウコッタ!?」
「マサカ、人間二、殺サレタノカ・・・!?」
「バカナ! ソンナワケハネェ!」
「ダガ、モシ、ソウダトシタラ・・・クソッ、人間ドモメ! フザケタ真似ヲシヤガッテ!
オイ! オ前ラ!」
混乱と動揺が広がるオークたちに、部隊長のオークが声を張り上げる。
「俺タチノ仲間ヲ、殺シタ奴ハ、マダ近ク二イルハズダ! 今スグ行キタイトコロダガ、腹ガ減ッテハ戦エネェ! 飯ヲ食ッテ、寝テ、朝二ナッタラ探シ二行クゾ!」
部隊長の言葉に、オークたちは雄たけびで答えると、巣の中でそのまま食事が始まった。
獲った獲物の肉を焼いて、もしくは生のままかぶりつく。
言葉は無く、ただひたすら、黙々と食べ進める。
「オイ、ガキ! テメェハ、コレデモ食ッテロ!」
部隊長のオークは、子供のオークに、肉が僅かについた骨や内臓を投げ渡した。
オークの世界は弱肉強食、力を持たない者は喰いっぱぐれ、淘汰される。
だが、仲間の半数を殺された今の状況では、力ない若いオークも戦力の一端。
食えるものを分けられるだけ、まだ優しかった。
子供のオークは、骨をしゃぶり、苦い内臓を食べづらそうにしていたが、それでも腹の中に納めた。
満腹になったオークは、そのまま流れるように眠りにつく。
同胞の仇を討つ、力と体力を温存するために・・・・・・・・・。