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「僕は我慢なんてしていない」そうだ。僕は我慢なんてしていない。

「ふふ、もしかして、怒った?」

「怒ってない」

「そうかな? 僕には怒っているように見えるけどな?」

 僕はもう一度「怒ってない」と少し強い調子で声に言った。

「わかったよ。そういうことにしておくよ。君は怒っていない。今はそれでいいんだね」

 声は明らかに僕をからかっていた。僕は声のことが少し嫌いになった。だから言葉をしゃべることをやめた。僕はずっと黙っていることにした。

「僕は君とお話をしにきたんだよ」僕は言葉をしゃべらなかった。

「これはとても大切なお話なんだ。君にとっても、もちろん、僕にとってもね」僕は横目でちらっと声の様子を伺った。声はじっと、真剣な眼差しで僕を見ていた。声の目はとても澄んでいて、綺麗で、どこか優しい感じがした。

「僕は君が大好きなんだ」僕は黙っている。

「君は僕のことが嫌いなのかい?」

「好きでも、嫌いでもないよ」と僕は声に言った。声は僕が会話をしたことで、とても嬉しそうな顔をした。

「世界を救ってみないかい?」

「世界?」

「そう。世界」と声は言った。

「救わない」と僕は言った。

「どうして?」

「この世界が嫌いだから」それは本当のことだった。僕は世界が嫌いだった。

「君はこの世界が本当に嫌いなのかい?」

「嫌いだ」と僕は答えた。

「この世界のどこが嫌いなんだい?」

「全部」と僕は答えた。

 すると声は優しく微笑んで、それからそっと空を見上げた。

「ほら、空を見てごらん」

「空?」僕は声の言う通りに空を見上げた。するとそこには、いつの間にか満天の星空が広がっていた。

「綺麗だね」と声は言った。

「うん」と僕は答えた。

 その風景は本当に美しかった。たくさんの星と少しだけ青みがかった透明な夜がそこには広がっていた。それはきっと冬の夜だ。星座の位置と形で、僕にはそれがわかった。

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