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 硬い黒光りしたうろこに覆われたドラゴンは、俺の想像よりもはるかにかっこいい姿で、リュウコが女の子だと知っていても憧れるくらいに好きな姿だ。

 だが、それは姿だけ。威圧するような声を想像していたが、実際は甲高い女の子の声を出すリュウコ。人語を話すことにも驚いたが、この姿で高い声を出し親しみやすくもあったのは驚きだ。声を上げて笑う姿も、アンバランスが強調されると思う。


「キャハ。なぁに、マモマモ。ウチのことが知りたいってこと?それはぁ、もしかしてウチに気があるってことぉ?」

「え、そうなのですか、守様!?な、なんでこんな凶悪な顔をしたドラゴンを・・・」

「いや、それはブーメランだぞウサミ。」

「そ、そんな・・・」

「ウサミ、悪いけどマモマモは、ウチのことをかっこいいって思っているんだよ?ウサミは、恐怖でしかないみたいだけど、ウチはかっこいいのぉ。」

「そんな・・・」

 ドスンっと、地面に膝をつくウサミ。鋭い爪が地面をえぐって、力の差を見せつけられた俺は、怖くなってリュウコの後ろにそっと隠れた。


「守様、ひどい・・・」

「で、リュウコ。お前は今まで何してたんだよ?」

 話がそれてしまったので、軌道修正してリュウコに聞くと、恥ずかしそうにしっぽを振って、ごまかすように笑った。

 ちなみに、表情では恥ずかしがっているかなどはわからない。リュウコは、顔よりもしっぽに出るタイプだ。ウサミのうさ耳のようなものが、リュウコのしっぽだ。


「そうだねぇー、いずれは話したいと思っているけどぉ?」

「話す予定なら、今話してもいいと思うけど?」

「う~ん・・・もうちょっとさぁ、雰囲気を大事にして欲しいって、女の子としては思うんだけどぉ~」

「あー、もういいよ。話したくなったら話せばいいよ・・・はぁ。」

 面倒になった俺は、リュウコを問い詰めるのをあっさりとやめた。これだけ隠されるときにはなるが、ここでしつこく聞くと「これだから未使よ」などと言われるからな。

 俺は最後まで言わせない。たとえ、俺の頭の中でも!


「えぇ、もう諦めちゃうの?そんなんだから、いまだに使えないんだよ?」

「・・・どっちにしろ言われるんかい!」

「うん?」

「はいっ!守様、私がいますよ!もう、いっそのこと使いましょう!一度使ってしまえば、もういじられることはありません!」

「絶対嫌だ!今度はそのことで一生いじられるだろうが!」

「まぁまぁ、よいではないですか。」

「よくねーわ!ほら、馬鹿なこと言ってないで、行くよ。」

「守様、恥ずかしがらなくても・・・」

「・・・悪いけど、恐怖でしかないから。」

「ひどい・・・」

「だから言ったんだよぉ?ウサミは恐怖でしかなくってぇ、ウチはかっこいいんだって!」

「かっこいい・・・でも、かわいいではないですね。かっこいいっていうのは、確かにドラゴンに向ける形容詞としては、普通の、何も特別な感情ではありませんね。」

「まぁそうだけどぉ、恐怖よりは、いいと思うけどぉ?キャハ。」

「かっこいいよりも恐怖の方が、強い感情だと思いませんか?ふふっ。」

「なー、もう行こうよ。」

 いつまで経っても進まない女の子2人に、俺は呆れたまなざしを送って先に進む。

 俺は、このダンジョンに慣れ過ぎていたのだ。そう、ダンジョンはハイキングコースではなく、修行道のような場所ということを忘れていた。


 ぴしっ。

 足元から嫌な音がしたと思ったときには遅く、俺の体は落下し始めた。


「マモマモ!」

「守様!」

 俺を心配する声はすぐに届かなくなって、暗闇の中へ放り込まれた。


 ダンジョンには罠というものがあり、おそらく俺はそれに引っかかった。このような古典的な罠・・・落とし穴に引っかかるとは。


 足が地面につくが、落ちるのは止まらない。急な坂を滑り落ちている状態なのだろう。


「いたたたたっ!あしぃ!おれるぅ!!」

 滑り落ちているせいで足への負担が大きい。早く止まってくれ!

 そんな俺の願いは届かず、さらに負担をかけるようなないかが俺の足を引っかけて、俺は何処かへと飛んでいく。

 上か下かも判断つかない。ぐっとシャツの背中部分を引っ張られて、俺はつるされた格好になった。


 目を開けると、先ほどの暗闇はなく、ダンジョンない独特の薄暗い光景が広がっている。


 俺はつるされている状態だったが、飛び降りても問題ない高さにつるされている。


「ひどい目にあったな・・・まぁ、ここで待っていればリュウコたちが迎えに来てくれるか。それにしても、俺のシャツ丈夫だな。」

 かなり勢いよく飛んだ俺を支えたシャツ。破れてもおかしくないというのに、しっかりと俺を支えているシャツに視線をやって、息が止まった。


「ワシャワシャ」

「む、でか、ムカデぇ!」

「ワシャワシャ」

「いやーーー!!」

 俺は、大きなムカデの足の一本に引っかかっていた。

 バタバタと手足を動かして、ムカデの足から逃れた俺は地面に追突する。痛いが、そんなのにかまっていられない。少しでもムカデとの距離を取らないと!


「ひぃ!」

「ワシャワシャ」

 ムカデの鳴き声なのか?不気味な音が俺の背後から聞こえ、俺は震える足を叱咤して距離を取ろうとするが、動けない。


「な、なんだよ・・・」

「ワシャワシャ!」

「ひぃ!やめ・・・あっ!」

 ものすごい力で引っ張られ、身体を拘束される。俺の背後からムカデが俺を拘束し身動きを封じる。逃げることができない俺は必死に暴れるが、背後から拘束しているムカデにダメージを与えることはできないし、拘束されている身では大して暴れることもできない。


「リュウコ!ウサミ!誰か、たすけ」

 ぐちゃっ。





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