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2 初めてのテイム



 絶望という言葉を、使ったことがあるだろうか?いや、なかなか使うことないよね~だって、俺たち平和な世の中に生きてるしさ・・・


「グルルル・・・」

「・・・」

 簡潔に言えば、体育館の天井くらいの体長のドラゴンがいた。転移数秒で絶望に突き落とされた。これも、たまちゃんの顔をしゅんとさせた罰だろうか?いや、違う。


「・・・あの女神、キレーだからって、何してもいいかと思ってんのか・・・」

 全部女神のせいであることは明白だ。


 俺がいる場所は、わずかに光を放つ岩壁に囲まれた、洞窟のような場所だ。そこに俺は転移させられ、しかもその場所にこのドラゴンがいた。

 敵意むき出しのドラゴン。俺はどうすればいいのか?もらった力を使うしかないだろう。


「て、テイムーーーーーー!」

「グルルル・・・」

「変化なし!って、これどうやって使うんだよ!」

 使い方を聞いていなかったので、不発だったのか、そもそもテイムできない存在なのかがわからない。確か、自分より存在値が低い相手をテイムできる、自分を信頼している相手をテイムできるという話だった・・・


 存在値、俺がドラゴンを上回っているわけがない。存在値というもの自体は知らないが、このドラゴンより俺が上ということはないだろう。


 信頼。はじめましてのこのドラゴンと俺に信頼関係があったとしたら、俺は今すぐ前世を思い出さなければならないだろう。というか、前世でもこんなドラゴンと知り合ってなんてないと思う。会っていたら、死んでも覚えている自信がある。


「これ、逃げれるのか?」

「グルルルル・・・・」

「・・・とりあえず、唸っているってことは・・・今なら見逃してやる的な?あ、でも逃げたら狩猟本能刺激しそう・・・ゆっくりだ、ゆっくりさがろう。」

 俺は、ドラゴンに目を向けたまま、ゆっくりと後ろに下がっていった。


 最初からこれでは、この先が思いやられる。


「・・・うわっ!」

 何かに足を取られて、俺は尻もちをついた。何を馬鹿をやっているのだと足元を見た時、固まってしまった。


「むむむむかでっ!でかっ!」

 巨大なムカデ、俺の体と同じくらいの太さのあるムカデの体に、俺の足が乗っている。慌てて足を縮めて後ずさる。


 どすんっ。くしゃ。


 ムカデが、つぶされた。もちろん、目の前のドラゴンによってだ。ま、まさか俺を狙って?


「ひぃ、ひぃーーー!」

「さっきから面白いやつぅ~ウチよりも格上なのに、なんで情けない声を出してるのぉ?」

「・・・は?」

 緊張感のない女の子の声、それが頭上から聞こえたような気がした。でも、まさかそんなわけがない。頭の上にはドラゴンしかいないのだから。


 俺は左右を確認して、声の主の人影を探した。だが、つぶれたムカデとドラゴンの巨体があるだけで、他には何も見当たらない。


「え、何かいるのぉ?」

「・・・その、この声は、まさか・・・君が?」

「そうだよ?初めまして、ウチはエンシェントドラゴン。ウチよりもすごいやつぅ、初めてみたぁ~・・・よろしく。」

「・・・俺が、君よりもすごい?まさか・・・」

「だって、さっき言ってたじゃん。テイム・・・あれされたら、ウチは従うしかないよ?」

「成功したのか?」

「?成功も何も、使ってよねぇ~もしかして、使い方わからないの?」

「・・・わからないっていったら、俺を殺すのか?」

「その必要はないよ。ただ、わからないなら教えてあげようかなって、思っただけだよぉ?」

「・・・つまり、チュートリアルというやつ?」

「???」

「君は、俺にテイムされてくれるのか?」

「したいならしたら?でも、ウチは見ての通り地味な感じでぇ・・・そんなウチでもいいのか、それが気になるんだけど?」

「・・・地味、とは無縁に見えるが?というか、かっこいい・・・」

 女の子?に失礼な言葉かもしれないが、ドラゴンをかわいいと思える感性を俺は持っていない。普通にかっこいいか、怖いだけだ。ただ見るだけならかっこいいし、襲われれば普通に怖い。


「かっこいいかぁ・・・初めて言われたよ・・・うん、より気に入ったね~ウチ、テイムされてあげるよ。」

「それは助かる!それじゃ早速・・・何をすればいい?」

「簡単だよぉ、血を混ぜてテイムを発動させればいいから~えいっ。」


 ザシュっ、ぱしゃぱしゃ・・・

 いきなり鋭い爪で自身のしっぽに傷をつけ、血を流すドラゴン。


「うわ、だ、大丈夫か?」

「力加減が難しくて・・・まぁ、すぐ治るから。」

 ドラゴンの言ったとおり、傷はすぐにふさがって、地面に血だまりが残るのみとなった。ここに俺の血を混ぜて、テイムを使えばいいのだろう。しかし、この量は・・・死ぬ。


「これと同量必要なのか?」

「一滴で十分だよぉ?」

「それなら良かった。えーと・・・その爪貸してくれるか?」

「うん。」

 俺の前に鋭い爪が差し出された。俺はその爪に軽く触れて、手のひらを切る。浅く切ったのでじんわりと血がにじむ。

 その手を血だまりの上に乗せた。


「あんまり気持ちのいいものじゃないな・・・」

「もう少しの我慢だよ?あとは、テイムを発動させるだけだから。」

「・・・テイム。」

 俺がそう呟くと、血だまりが光り輝いてドラゴンと俺に向かって動き出し、体の中に入っていくように消えた。


「うぅ・・・別に痛くもかゆくもないけど、ちょっと嫌だな。」

「繊細なんだねぇ・・・えーと・・・ワセマモル・・・マモマモでいいかな?」

「え、なんで俺の名前・・・」

「ウチは、ステータスってのが見えるの。それで名前やなんかがわかるんだよね~ということで、よろしくマモマモ!」

「あぁ、よろしく・・・えーと。」

「名前?マモマモがつけて!ウチはずっと、エンシェントドラゴンって名乗っていたけど、これただの種族名だから、名前欲しいなぁ。」

「あー・・・名前か。リュウコはどうだ?」

「リュウコ!やったーウチの名前~」

 ネーミングセンスを疑われている俺だが、リュウコは喜んでくれているのでこちらの世界では問題ないようだ。というか、きっと俺の周りにセンスのあるやつがいなかっただけだろう。

 俺のネーミングセンスがないわけではなく、周りのセンスがなかったのだ。


 こうして、俺はエンシェントドラゴンのリュウコのテイムに成功した。

 リュウコは、スターテスというものが見えるらしく、これからの冒険に戦力以外でも頼れそうで、俺は女神さまに感謝した。


「あぁ、女神様、キレーだけじゃなく、慈悲深かったんですね。マジ感謝!」

「あれぇ?さっき女神のばかぁとか言ってなかった?」

「馬鹿は言ってないよ。それより、もっとテイムについて教えてくれないか?」

「うん、いいよ。なんかぁ、無差別テイム(半分)って名前だね。あとは・・・」

 半分は、俺とたまちゃんで分け合ったからだろう。無差別は・・・女の子ならだれでもいけるぜっ的なノリかな?


「男(未使用)」

「あのさ、テイムのこと聞いてるんだけど!?そういうの良いからっ!」

「あ、うん。というか、性別のところに未使用ってなってるのなんで?」

「知るかっ!女神のいたずらでしょ!」

「ふ~ん。あ、テイムの話だったね・・・・」


 俺は、一通りテイムについて聞いた。




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