8.三公会議 2
リルラ公爵とワーファ公爵は私がこの場にいることに対して訝しんだ様子を見せた。
それも当然だろう。慌てて来てみればそこにいたのはお父様ではなく娘だったのだから。
「お久しぶりです。リルラ公爵、ワーファ公爵。私がここにやって来たのは亡くなった父と、国王についてお話があるからです」
「どういうことだ…?」
「まさか、そんな」
2人が驚愕の色に染まるのを見て、私は口を開く。
「そのことに関して、三公会議の開催を提案します」
***
ワーファ公爵が懐中時計を取り出し、なにやら呟くと向かい合うように置かれた3セットの机が出現した。
おそらくそれはワーファ公爵家が代々持つ家宝『神器 時空の懐中時計』による能力。それは空間を操ることを可能とする神の道具。
空間収納…地球ではメジャーな能力だけれどこちらでは超希少。ワーファ家当主とあと1人、空間収納のスキル持ちが我が国にいると聞く。
地味だけど便利なスキルだ。
そして全員が椅子に座ったのを確認し、私はあの出来事について話し始めた。
国王が何者かに操られ、殺されたこと。王城付き騎士団も同様に操られ、お父様が応戦し最後にはみんな、死んでしまったこと。
話し終えた時、リルラ公爵とワーファ公爵は唖然としながらもどこか納得のいく表情をしていた。
「確かに操られた可能性を考えなかったわけでは無いが…歴史を見れば宰相と国王の対立による追放宣言は何度かあったんだ。けれど一月もすれば頭も冷えてその度に撤回されていた。だからこそ此度の追放宣言も深く考えなかったんだがな…クソが。知恵を司るワーファ家がその程度も見抜けないなんてな…」
「我々リルラ家は純血のエルフたる『ハイエルフ族』。エルフという種族は魔法に特化した力を持ち、同時に魔法耐性が高い。だからこそ、慢心していました。その結果がこのザマ…国王を失い、武のアコルデの当主を殺してしまった」
「…気を、引き締めなければならないな。これからオレたちのやるべきことは2つ。次期国王の任命と国王並びに公爵殺しの犯人探しだ」
「そうですね、まずは早めに任命状を書いてしまいましょう。殿下を呼び戻し、急いで戴冠式も行わなければ」
国の頂点たる国王が不在となれば間違いなく隣国エーテル帝国はこれを好機と攻めてくる。
ただでさえ国王とお父様を殺した謎の敵で手一杯なのにそんなのところに手を割くわけにはいかないのだ。
王家と公爵家に限り当主は長子存続が絶対のルール。だから次の国王も自動的に決まる。18歳の長男、ヴィルヘル殿下だ。
***
『次期国王をヴィルヘル・ターナ・システルに任命する』
そう書かれた紙にアコルデ公爵としてサインし、ヴィルヘル殿下の居城に届ける準備をする。
15歳の成人を迎えた王族は自分の城を持ち、そこに住みその地を治める慣習がある。
ヴィルヘル殿下が住むのはエーテル帝国にほど近い城塞都市、キオン。馬で北に2日ほどの距離だ。
普通に行けばの話だが。
「よし、空間移動で届けてこよう」
そう言ってワーファ公爵は消えた。
『神器 時空の懐中時計』は時と空間を操り、瞬間移動など余裕でこなす。
少し羨ましい。
読んでくださりありがとうございます!
瞬間移動が欲しいです。
そしたら朝ギリギリに起きても余裕で始業に間に合うじゃないですか…
モチベに繋がりますので下から評価入れてもらえると嬉しいです!