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夢見た転生のその先は。  作者: 空静
第2章 まどろみの学園生活
22/22

8.初日のSクラス 2


前の投稿から約3ヶ月も空けていて申し訳ない…。



その後まだ少し教室はざわついていたが、ワーファ先生の顔を見た生徒から徐々に口を閉ざし30秒もすれば教室は静まり返った。


目が、笑っていないのだ。


ワーファ先生は人が良さそうな顔立ちをしている。笑顔を浮かべて優しそう。今だって顔には笑顔、けれど目があまりにも怖い。


この30秒で教室のみんなは理解した。この先生を怒らせてはいけないと。そしてまさしくワーファ公爵家(権力者)の人間なんだと。

背が高いことも相まって威圧感がすごい。無言で人を従えるタイプだ。




「さて、これで話がしやすくなります。まずは学園での絶対のルールを。学園内では外の権力をみだりに振りかざすことは自分の出身国を揺るがす可能性があるのを忘れないように。過去、ある生徒が敵対している国の生徒に対してイジメを行った結果起きたのがアルデーア戦争です」


教室に緊張が走るのがわかる。

今話に出たアルデーア戦争は前世で言うと第一次世界大戦に匹敵するレベルの大戦争だ。世界が許す魔法の中で最も威力の高い究極魔法、つまりは世界破壊寸前の魔法『悪夢(ナイトメア)シリーズ』と呼ばれる魔法がバンバン放たれた。おかげで世界で最も大きい大陸、ユーラステ大陸(システル王国もユーラステ大陸にある)の中央にはどでかいクレーターが空いている。そこには昔国があったとかいうけれど今は跡形もない。前世で言う原爆ドームのような負の遺産だ。




なるほど、確かに世界最高峰とあってこの学園には権力者の子供が多い。余裕があればあるほど高度な教育を受けさせられるからね。だからこそちょっとした諍いが大戦争の火種となり得るのだろう。

だからってスケールが大きすぎる気もするけど。




「まずこの1週間の予定から説明します。基本はオリエンテーションだと思ってくれて構わないよ。九ノ月1日目に入試を受けその1週間後に入学という都合、まだ備品が揃っていないからね」


前も言った通り、この学園は世界中から人が集まる。当然、このシステル王国に来るまでに何ヶ月もかけなければいけないような超遠方から来る生徒もいるため、試験から入学まではあまり日が空かないよう設定されている。だから試験から発表、入学までの大体2週間は王都の宿屋がそれはそれは賑わう。


遠方から来る生徒は、生活に必要な荷物全てを持ってくるのが難しい場合も多い。そういった生徒には学園から日用品を買い揃えるために一定額の支度金が支給される。もちろん見栄で生きている特権階級の生徒は受け取らないことも多いけれどそれはまた別の話。うちの部屋からもシルディは給付申請をしていた。





「さて、じゃあ最後はみんなお楽しみ新年はじめのビッグイベントについての告知だ」


そう言ってワーファ先生が黒板を叩くと(正確には前世のものとは原理もなにも違うんだけど似たようなものだからそう呼んでいる)文字が浮かび上がった。


そこには『ワード参加に関する要項』とはじめにかかれ、その下には細かい字で相当な文字量が書かれていた。

世界共通語がシステル王国の公用語で本当によかったと思った瞬間だ。公爵令嬢として主要な言葉の読み書き話しは勉強させられているからある程度できるけど、せいぜいある程度。この文字量だったら読むのに20分は固い。前世で解いた英語の長文読解を思い出す……。

やめよう、思い出したら頭痛くなってきた。


「通称ワード。本当は外泊型宝物捜索大会というんだがそう呼ばれている。これは君たちにとって初めての加点イベントだな」

「加点イベントというと、部屋の点数が追加されるということですか?」

「ああ。総合優勝には300点、2位には200点、3位には100点、学年優勝には50点が与えられる。総合優勝はすなわち学年でも優勝しているわけだから350点手に入る」


この学園は全学年ひっくるめて部屋別で点数を争っている。順位が良ければその分いい部屋が与えられ、逆もまた然り。卒業時に1位の部屋出身だった生徒は上流階級出身ならば宰相を、そうでなくとも国の幹部級は確実に出世できるほどの名誉があり、野心のある生徒は死ぬ気で目指す。

点数はテスト以外にもこういったイベントで獲得することができる。今回は単純に点数をもらえる加点イベントだけれど、他にも色々と違う形式のものがあるらしい。



このワードというイベントのルールを簡潔に説明すれば、ワードと呼ばれる解錠の鍵となる5つのキーワードをフィールド内から見つけ出し、それを宝物が隠されている洞窟に描くことで宝を手に入れ、そのタイムを競うというもの。要は宝探しだ。

ちなみにそのワードはフィールド内に隠されているだけではなく、全生徒内での武術試験得点1位から5位の生徒には1つずつ先に配付される。つまり、どこにあるかわからないのを探すよりも確実に持っている人間を襲うのが手っ取り早いよねというある種のハンデでもあるらしい。


うちの班には武術5位のシルディがいるため、まあ狙われる対象になる。

武術の学年首席はキリエかと思っていたけれど、今から少しした後シルディのその戦い方を見た時その評価に納得した。シルディは異常なまでにスピードに特化している。一方キリエは間違いなく強者であれど、あくまで一流。シルディのような圧倒的ポテンシャルは感じなかった。その代わりと言ってはなんだがシルディはその…学業に伸び代があるらしく、そこで首席はキリエになったようだ。


そのほかにも、大量の文字が黒板に埋め尽くされていることからもわかるようにルールはたくさんあった。

例えば、フィールドのものを破壊してはならない。破壊した場合失格とすると妙に大きな文字で書かれていたり。



「去年の優勝は…2年女子10班な訳なのだが…」


そのワーファ先生の苦虫を噛み潰したような言葉で私はなんとなーく察してしまった。


2年女子10班に所属するのは皆さんご存知ティルサである。絶対やつが何かをしたに違いない。




「2年女子10班…正確にはティルサ・フォン・リルラが宝物が隠されている洞窟を魔法で吹き飛ばして手に入れたんだ。ルールに洞窟を吹き飛ばしてはいけないなんて書いていなかったから認めざるを得なかったのだが、まあ二度とこういうことが起きないように今年は暗黙の了解であったルールを全て明文化するはめになったんだ」


通りで異常に文字数が多いわけだよ。

ティルサ…あんたなにやってんのさ…。





宝物が隠されている洞窟は普通の魔法じゃ傷一つ付かないように守護魔法が張られています。

それを吹き飛ばしたのがティルサ。それから先生たちの頭痛と腹痛の毎日がはじまるのであった。まる。

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