表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見た転生のその先は。  作者: 空静
第2章 まどろみの学園生活
18/22

5.歓迎舞踏会 1

本当は歓迎舞踏会を1話に納めるつもりだったのですが、長くなったために分割します



入学式は終わった(ついでに言うならばティルサに喧嘩を売られた)けれどまだ今日は予定がある。

歓迎舞踏会だ。


学園にやってきた馬車の中でサラが言っていた、年に二度ある舞踏会のうちの一つで、全生徒が身分関係なく着飾りダンスに食事にを楽しむ会だ。


各々準備したらリビングルームに集合しようと決め、早速私も自室で準備をする。


「やっぱり舞踏会と言ったらドレスだよね。1番の上物を持ってきて正解だった」

「…ねえココオン。ココオンって1人でドレス着れるの?」

「何言ってるのサラ。私が持っているようなドレスは使用人がいることを前提にしたドレスだよ?」


上流階級の人間が着るようなドレスは1人で着れるように作られていない。

しかし、学園では使用人の同伴は認められていない。

要するに。


「サラ、頼んだ。いつも着付けしてるところ見てるからわかるでしょ?」

「んな横暴な!」


サラにやらせるしかないのだ。




わーきゃーと準備を終わらせリビングルームに行くと、もうみんな準備ができていたらしく寛いでいた。


「ごめん待たせた!」

「時間にはまだ余裕がございますから心配なさらないで。それにしても歓迎舞踏会はドレスですのね。入学式も軍服でしたのでそのままかと思いましたわ」


ドレスを着た私を見てエリナが私を見て少し驚いたように言った。


「公爵として出なきゃいけない公式の夜会は正式の軍服着るよ。これは非公式の夜会で、求められてるのは公爵(アコルデ)じゃなくて一生徒のココオンだからね」


入学式は他国から来賓も集まる一大セレモニー。全校生徒300人の中からわざわざ私だけを凝視する人なんていないだろうけれど、アコルデ公爵が入学したということを周知させなければならないために、正式な軍服を着る必要があったのだ。上流階級は世間体と見栄でできている。

対して歓迎舞踏会は生徒と先生だけのいわば個人的なパーティー。規模も重さも全く違う。


「それにしても随分とお高そうなドレスやな…いくらするん?」

「値段は…いくらなんだろう、わからない」

「はぁ?!世界最高峰の純血アラクネ製の布やん。さすがは公爵…2着ももっとるとか規格外すぎひんか?正装っちゅう立派な軍服ならともかくドレスまでとは」

「正装のは確かにアコルデ家に代々受け継がれてるものだけど、このドレスは公爵家が仕立てたんじゃないよ。お母様の形見だから王家が作ったやつだし。お母様は前国王陛下の妹だから」


私の今日のドレスは瞳の色と同じ紫。

純血アラクネ製の布は、魔力を流すことでその人にぴったりのサイズに変化する不思議な布だ。さらに、耐久性も高く正しく保管すれば1000年は持つとも言われている。それ故に高い。1着で辺境の城なら買える程度に。

だからこそ、一度着た服はもう着ないと言わんばかりの超上流階級といえども純血アラクネ製の服は何代にも渡って受け継いでいく。さっきまで着ていたアコルデ家の式典用の軍服などまさにそうだ。


「ココオンさんのお母様は元々お姫様ですのね。…あれ、形見とは?」

「ああ、私のお母様は5歳の時に死んじゃってね。だからこれは大切な形見なんだ」

「そうでしたのね…ごめんなさい」


エリナが申し訳なさそうに俯く。

けれど、それは必要のない気遣いだ。貴族の寿命は30年〜40年ととても短い。三公爵全ての血を受け継ぐ王家とはいえ、やはり多少の偏りはある。ヴィル兄ならリルラ家に寄っていて、お母様は貴族によっていたというだけだ。

だから、お父様も殺されたけれど正直にいえばいつ死んでもおかしくなかった。


…あれ、私ってこんなに冷たい人間だったっけ。確か、お父様の死に心から悲しんでいた気がするんだけど。気のせいだっけ…?


「実はうちもなんやで、天涯孤独。ひとりぼっち同士仲良くしよや」


その桜の暴露に現実に引き戻された。

子供の時点で両親が亡くなっている、つまり親の庇護がない場合高い確率でその子供はまともな職にありつけない。


公爵家である私のような場合か、既に親ではなく何かしらの組織に庇護されている場合を除いて。


「桜ってもしかして『狐火商会』の関係者なの?」


狐火商会は世界最大の商会。世界を股にかけ、総資産は大国の国家予算を上回るほどだとか。さらに運営しているのは三幻獣人族の一つ、九尾の狐だとか。


「鬼灯国に対して『唯一出店してない』って言ってたし。だからもしかしてと思って。それに色々と目利きしてたし、ご両親が亡くなったのに学園に来れるってことは組織のバックアップがないと難しいでしょ?」


学園へ入学するのは難易度が高い。だからこそ、幼い頃から教育に専念できる上流階級出身の人間が過半数を占めているし、庶民出身だって商会出身の金持ちだったり国のバックアップを受けていたりと、本当の意味でのただの庶民は1人たりともいない。教育には時間と金がかかるのだ。


だからこそ、天涯孤独の身であっても学園に入学、しかもトップ層でだなんて商会の庇護があると考えたのだけれど。


「な、なんでうちが狐なので狐火商会と結べるんや?」

「え?だって狐火商会って九尾の狐が運営してるんでしょ?だから狐人の桜もそうなのかなって思って」

「…狐火商会の庇護を受けているのは否定せんよ。けどな、狐人と九尾の狐の成り立ちはぜんっぜんちゃうんやで?一緒にすると本物の三幻獣人族はキレると思うからきぃつけな?」


桜はニコニコしながら教えてくれたけれども、どこか普段とは違う迫力みたいなものがあった。


「えっと、ごめんね」

「謝る必要はあらへんよ。うちはただの狐人やからね」


「三幻獣人族って確か、妖力を持っている方たちでしたわよね?」


さっきの会話を受けて、昨日の夕食の時を思い出すようにエリナがいった。


「そうそう、獣王国っていう獣人の国を治めている獅子王族。世界最大の商会を運営する九尾の狐。それと…よくわからない銀狼族の3つの種族」

「よう知ってはるんやな」

「まあ知識だけだけどね。実際会ったことあるのは獅子王族だけだし」


獣王国とシステル王国には国交があり、獅子王族と会う機会があったのだ。

獣人族で最も強いパワーを持つ彼ら獅子王族は女王制。なんでも、女性の方が力が強いかららしい。前世のライオンも狩りをするのはメスだった。それと関係があるのだろうか。


「よくわからないって…なんですの?」

「銀狼族はエンヴァーラ氷山っていう北の孤島から出てこないから全然わかんないんだよね…シルディ何か知ってる?」

「い、いえ…なにも。そ、そういえば先ほどのティルサ様とはどんなお方なのですか?なかなか…その…あまりいない感じでしたけれど」

「…随分と急ですわね?ティルサ・フォン・リルラと言ったら魔のリルラ公爵の次期当主でしたっけ?」

「そうそう。リルラ家はじまって以来の大天才で、魔術理論はすでに当主を上回り、実力ではかのルーテシア国王に次ぐって言われてるの。過去に色々あってあんな感じだけど、まあすごく頭のいいやつだよ」


サラを召喚するまでの唯一の友達が何を隠そうティルサだった。

…ああなってしまってからは疎遠になってしまったけれど。


「ルーテシア国王って確か入学式ですごく偉そうにスピーチしてた人ですよね?すごく美形の」

「…自然と聞いてしまう説得力があった。あのカリスマ性は、王にふさわしい」

「そうそう。圧倒的カリスマと最強と名高い魔法の実力で大国ルーテシア王国を治め、そろそろ即位300年だとかなんとか」

「ルーテシア王国の民は長寿ですのね」

「違うよ。ルーテシア国王は光の大精霊とのハーフで、寿命の概念が存在しないの」

「サラよく知ってるね。私も知らなかったのに」

「昔ルーテシア王国にいたから。ルーテシア王国では常識だよ」

「それって、前言ってた昔の契約者?」

「…内緒」


…随分と内緒が多いな。

正直、じっくりと話を聞きたいところではあるけれどももう時間があまりない。余裕を持って到着するためにはそろそろ出ておいた方がよさそうだ。


「じゃあそろそろいこうか」


そうして、私たちは会場へ向かうことにした。



お読みいただきありがとうございます。評価を入れていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。


ルーテシア国王は迫力のあるイケメンです。

300年前に大火事で崩れかけたルーテシア王国を再建し、世界有数の大国までのしあげた有能な独裁者です。

強い有能イケメンと三拍子揃えていますが妻はおらず、王位継承権第一位を火事で行方不明になったルーテシア国王の従妹がもっている上、独裁者のため倒れたらそこで政務の全てが滞るため実は結構不安定な国。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ