2.自己紹介
「えっと、自己紹介でも…しますか?」
「そうだね、初対面ですし」
おずおずと小さなけもみみの子が言ったので同意する。
自己紹介なんて前世以来だ。と言っても前世でも名前とよろしくお願いします、くらいしか言っていないけれども。
「どう順番にするん?」
「寮に着いた順、とかどう?順番が分かりやすいし」
と提案するとじゃあわたくしから、と茶髪の子が手をあげた。
「わたくしはエリナ。種族的には人間ですが、土属性の精霊体質ですの。年は15ですわ。よろしくおねがいいたしますわね」
そう言ってふんわりと笑う彼女に、何故か前世の親友の面影を見た。
ああ、そうか。親友の名前もエリナだったっけ。死んだあの日、じゃあねと別れて二度と会えなくなった、大切な友達。
大学生になったらこうしよう、ああしようって未来のことを何度も何度も語って笑い合っていた、その日々が永遠にこないことを思い出してしまった。
「急に泣かれて、どうなさったんですの…?」
「ああ、ごめんなさい。会えなくなった知人に似ていて」
そうだ、落ち着け私。エリナさんは絵里奈じゃないんだから。と気持ちを整理することに成功した。
「それにしても精霊体質なんて珍しいもんやなぁ。精霊みたいに魔法を無尽蔵に使えるんやろ?」
「世界に5人しかいないですからね。といっても他は普通の人間とは変わりませんわ。空を飛べるわけでもありませんし」
と少し残念そうに言っていた。
「僕は、シルディ・ロロエです。13歳の獣人で、えっと…山に引きこもってる種族出身です。よろしくお願いします」
ぴょこんと揺れるけもみみ。ふわふわの尻尾。身長はおそらく140センチほど。そして僕っ子。
「かわいいなこのわんこ…」
「僕は狼ですっ!」
ムッと口を尖らせている様子もとてもかわいい。
「ちっちゃいは正義…?」
「お言葉ですか僕よりあなたの方が小さいと思います」
…だって私、まだ11歳だもの。まだまだ成長の余地あるもん。
「うちは九重桜。14歳や。シルディはんとおんなじで獣人で見ての通り狐や、よろしゅう」
糸目でにっと笑った桜さん。なんというか胡散臭い商人みたい。
「壺は…買わないから…」
「なんの話や?」
「私は…キリエ・シュバルツ。14歳。種族は…幽鬼族。別に…仲良くしにきたわけじゃないから…最低限の関わりだけでいい」
「ゆ、幽鬼族?!それってうちらが唯一出店をしていない『暗黒大陸』の…」
「暗黒大陸なんかじゃない!鬼灯国というきちんとした国名が」
あまりの迫力に桜さんは気圧された。
いや、桜さんだけじゃない。全員、その圧力に恐れを抱いた。
そして私は直感的に感じた。この人は自分よりも強いと。
「っっっ、すまんなぁ。堪忍してや」
「別に…どうだっていい」
再び興味がなさそうな顔に戻ると桜さんは少しほっとしたようだ。
逆鱗は放置するのが1番だ。
「私はココオン・フォン・アコルデ。11歳です。こっちは契約精霊のサラです」
「よろしくー」
さて、自己紹介が済んだ…
「いやいやいや?!待ってくれへんか?!」
「アコルデってシステル王国のですわよね…?武のアコルデの」
「すごいんですか?」
「すごいも何も、世界最大規模の王国の公爵様やで?学園もシステル王国の王都にあるように発言力は相当や。それの武力の一切を司ってるんやで?やろうと思えば世界とだって戦争できる、そんな恐ろしい家やで…」
「システル王国は自衛しかしない主義なんだけど…」
「でもやろうと思えばやれるやろ?」
「うーん…そうだなぁ…」
システル王国は確かに規模がでかい。つまり人口も多い。すると兵士も多い。戦争において数はそれだけで有利だ。お父様がそれで死んだように。
「まあできなくは…ないと思うけど」
「ほらな!言うたやろ!恐ろしいわぁ」
精霊体質の子に、世間知らずの子、謎に関西弁の子と幽鬼族の子。
この部屋、ものすごくキャラ濃いな…。
「ココオンさんには言われたくないなぁ」
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一気に人が増えました。寮の同室の皆さんです。
種族に関しては今後説明を入れる予定です。
新キャラの自己紹介簡潔版
エリナ
お嬢様口調の子。土属性の魔法なら無限に使える。
シルディ
敬語の僕っ子。狼で低身長。
桜
関西弁の子。糸目で胡散臭い。
キリエ
異常に…が多い子。とてもつよい。