閑話1 ヴィルヘル・ターナ・システルの独白
新年明けてしまった…おかしいな…
「じゃあ、元気でねヴィル兄」
「ココオンもね、まだ10歳なんだから無理しないで」
僕は部屋から出て行くココオンーコークを見送った後、沈み込むように椅子に座った。
まさか、こんなにも早く自分がこの椅子に座ることになるとは思わなかった。
目蓋を閉じれば、まだこの執務室の椅子には父が座って執務をこなす姿を鮮明に映し出すことができる。
なぜ父上とアベル様は亡くなられたのか。
なぜこの国は狙われたのか。
なぜ、僕は国王なんてものをやらねばならないのか。
***
3年前、学園を卒業した後成人していた僕は慣習に従い、キオンの城を与えられ北の地を治めていた。
町のものとも交流を持ち、自分で言うのもなんだがなかなか良い関係を保てていたと思う。
敵対しているエーテル帝国も不穏な動きを見せることなく穏やかな時が過ぎていた。
父がおかしいと噂に聞いたのは2月ほど前。急に三公爵を厭いだしたという。
父上とアベル様は学生時代からの親友の関係。そんな2人が仲違いなんておかしいし、他の2人の公爵にしたって父はとても尊敬していた。
変だとは思っても僕はそれを父に確かめなかった。単純に遠い、というのもあるがあくまで噂だと思ったから。噂とはねじ曲がって伝わることが多い。それが貴族社会のことなら尚更だ。
それに、正直興味がなかった。父に興味がない。人に興味がない。国に興味がない。
僕は、人として欠陥品なんだ。
育ててもらったことに感謝している。けれどそこから先の感情を持てないのだ。母が死ぬまでは普通だった気がする。
学園の時のルームメイトに言えば、せめて繕えと言われた。人を観察して、普通を装えと。
それから僕は変わった。感情がないと言われていたけれど学園をでてから変わったと。
それに僕は満足した。なるほど、こうすれば良いのかと。自分が普通でいられることに満足していた。
けれど、やっぱり僕は欠陥品なんだ。変わったと聞いた父の心配をすることもしない。あくまで噂だからだと無視をした。それがこの結果だ。
もしかしたら僕は学園に行けといったあの子を殺すかもしれない。
そうしたら、僕はどう思うだろうか。
僕はもしかしたらこれを機にと…
お読みいただきありがとうございました
モチベに繋がりますので下記より評価していただけると嬉しいです
次から新章、学園編に移ります。
一気に登場人物が増え、主要人物が出揃います。お楽しみに。
また、明日18時に新しい短編を投稿します。ぜひ読んでみてください。