10.そうして運命の歯車は動き出した
前の投稿日をみたらすごく前でびっくり
即位式も終わり、今後の話をするために私は国王の執務室を訪れていた。
重厚な執務机に座るのはヴィルヘル王。
即位式の時の威厳のある王の姿は鳴りを潜め、今は18歳の好青年にしか見えない。その歴史を感じる椅子に座らせられているようだ。
「久しぶりだね、ココオン」
「5年ぶりでしょうか、陛下」
「もうヴィル兄ってよんでくれないのかい?コーク」
コークとは私の愛称だ。陛下しか呼ぶ人はいないけれど。
多分、お父様はどこぞの飲料を思い出したから呼ばなかったのだろう。普通に家族にはココオンと呼ばれていたから。
キラキラと期待の視線を向けてくる陛下に向かって盛大にため息をつく。
「…はぁ。公の場では普通に陛下って言うからね、ヴィル兄。これで満足?」
実は、ヴィル兄とは従兄弟だったりする。
前王の妹が私のお母様だ。本格的にアコルデの訓練が始まる3歳まではよく一緒に遊んでいた。
まあ、たった7年前の話だけれど。
「それで、どうしたの?わざわざアポイントを取って。ひさびさに会いにきた…てわけじゃないんでしょう?」
「当然でしょう。実はー」
私は、三公会議でワーファ公爵に言われたことをヴィル兄に話した。
***
「というわけなんだけど、学園に行ってもいい…?もちろん、アコルデ公爵がつねに動けないことに対する危険性はわかってるよ。だから無理なら無理って言って。納得するから」
「別にいいよ」
「うん、やっぱりそうだよ…え?今なんて言った?」
「学園、行けばいいじゃん。学園、楽しかったよ。新しい価値観を知ることもできるしココオンだって行くべきだ」
「自分で言ってなんだけどいいの?」
「ワーファ公爵が行けって言ったんでしょう?それならそれが正解だよ」
ワーファ公爵のスキルー『真実への道』は求める真実を知る方法を教えてくれる。
「前国王並びに全アコルデ公爵を殺した大罪人は国の威信にかけても探してとらえなきゃいけないし。相手の戦力が未知数である以上、国で最も戦闘力を持つアコルデ公爵が赴くのは理にかなっているしね」
***
無事ヴィル兄への報告も済み、公爵邸の自室に戻ると、入り口にサラがぷかぷかと浮いていた。
「あ、サラ!即位式の間どこいってたの?探してたんだよ」
「いやー、ちょっとね」
あははと笑うサラに怪訝な視線を送る。
「いや、ほんとだって!わたしだって精霊だし色々やることがあるんだって!」
「ふーん、まあいいけど」
「それで、どうだったの?」
「あっさり許可が出たよ。びっくり」
「そりゃあヴィル君だって父親殺されてるわけだしね。仇は取りたいでしょ」
「…そっか、そうだよね」
「サラ、私頑張るよ」
「応援してるよ、公爵様」
これで1章は終わりです、この後人物紹介と閑話を1話挟んで第2章に行きます