第6話 よろしくね、お兄ちゃん! 1
「うっれしいな、うれしいなー♪ 優しいお兄ちゃんもできたしー、ごはんもあるよぉー♪」
楽しそうに適当な歌を歌うリジー。
よく見れば可愛いかもな。成長して胸が大きくなればいい感じかもしれない。
いろいろと。
「お前、いつ『こっちの世界』に来たんだ?」
「一昨日。最初は子供のいない夫婦のとこに潜り込んだんだけど……。すぐに追っ手に見つかってしまって」
「追っ手?」
「そう。私の世話係のアスカ。アスカの魔眼、感度いいのよ。すぐに見つかって。で、次に一人暮らしの若い男性、えーと、確かダイガクセイとかいう種族ね。そこに妹として逃げたんだけど、いきなりおっぱい触ってきて、えっちなことしようとするんだよ! 妹なのに! だから、魔法で異世界に追放しちゃった!」
世の中には貧乳ロリータが好きな性癖の持ち主もいるからな。さらに「妹」という設定に対し、欲望のタガが外れる種類の紳士だったんだろう。
俺はその大学生に同情する。
いきなり猥褻行為に及んだことは反省してもらわなければならないが、だからといって、異世界に追放とは、ほとんど死刑である。
その大学生には異世界転移後、チートでハーレムな第2の人生を謳歌してもらいたいものだ。
「とまあ、アスカから逃げるのに必死でご飯も食べれなかったしで、大変だったのよ。ドラちゃんが特異点見つけるまではね」
ドラゴンが得意そうに、グルゥと鳴いた。
「偶然だったんだよ。リジーがこの建物の周囲を通過した時、ボク、リジーを見失ってね。あわてて魔眼で探したら、リジーの反応がないんだよ! もうびっくり! どうしようどうしようって思っていたら、この建物から離れた途端、リジーの反応が出て来て。それでわかったんだ。この建物に特異点があるって。あ、ボクも魔眼持ちなんだ。ドラゴンの魔眼は魔族より強力なんだよ! 魔眼について知りたい?」
「いや、いい」
話が長くなりそうだし、どうでもいい。
ドラゴンはやや不満そうにしながらも、話を続けた。
「で、いろいろ調べたら、この建物のなか、特にキミの住んでいるこのあたりが強力に見えにくいんだ。もしかしたら、キミ自身が特異点なのかもしれない」
「そう! だから、ここに住むの。よろしくね、お兄ちゃん!」
ジャムトーストを食べ、牛乳を飲みながら、リジーが言った。
なんだ、俺自身が特異点て。よくわからんな。