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第7話 一緒に行く

「気にする気にしないの問題じゃないんですよ。これだけ大騒ぎになって、どう誤魔化すんですか?」

「造作ない。これを使う」

 クリストファが指輪を俺に見せた。


「あ、その前にデヴィ、彼に魔法障壁を頼む。もう魔法力無効(キャンセレーション)固有技能(スキル)は無くなったからな」

「わかりました」

 デヴィが俺の側にやって来て手をかざす。光のドームが俺を包み込んだ。


「ではいくぞ」


 クリストファの指輪から虹色の光が放射状に伸びる。無数の光の筋が週の人間に向かって突き進む。


「ご存じ、ディオロニスに伝わる心理魔法の指輪だ。彼らはここで見たことを全て忘れる。さらにその証拠となる映像は全て削除だ」

「ネットの動画とかもですか?」と俺が聞く。

「もちろん、自主的に削除だ」


 クリストファの指輪の威力は凄かった。俺たちを取り囲む人々が無言でスマートフォンを操作だした。証拠画像をどんどん削除しているようだ。

 実際、インスタ、ツイッターから関連映像がみるみるうちに消えていく。当然、個人の機器からも消えているだろう。


「でも、誰かが画像やら動画やらを保存、そして再アップしたらどうなるんですか?」

「サイアップ? どういう意味だ?」

 クリストファが首を傾げた。このへんの語彙力が欠けているようだ。


「どうにかなるわ。ここにいる皆の記憶から消されれば、いくら動画がネットに再アップされても大丈夫。YouTuberの面白動画って思われるから。ほら、あるじゃん。有名RPGのキャラになりきってショボい動画作る人たち。あれと一緒」

 デヴィには俺の言葉が通じたようだ。えらく楽観的だが。


 まあ、なんとかなるか。


 たぶん。


 報道機関のヘリはいつの間にか消えていた。警察官達もうつろな目で帰って行く。ものの数分で、いつもの学校の様子に戻っていた。


「凄いっすね、クリスト……えっ?」

「何を驚いているのかな?」

 クリストファがいつの間にかモブキャラ眼鏡男子に戻っていた。

「えっと、名前なんでしたっけ。倉本? 倉木? 倉山田?」

「倉敷だ!」


 そうそう、倉敷だ。クリストファが変身魔法を展開していた。


「この姿でないとさすがに目立つからな。問題は変身魔法中は他の魔法が使えないことだが、敵は倒したようだし、大丈夫だろう。サキュバスもいることだしな」

 アスカを見て微笑む。アスカが頬を桜色に染めた。


「さてカバデルの娘よ。約束だ。リジーを連れてきてくれ。あとドラゴンも」

 クリストファ改め倉敷が言った。

「分かったわ。クリストファ様」

 デヴィが言った。

「さ。リジーの下僕さん、一緒に行くわよ」

「え? なんで俺が?」

「あたりまえじゃない。リジーは私とクリストファが和解したこと知らないのよ? 私が現れた途端、攻撃するに決まっているじゃない。下僕のあなたが事情を説明しないと、言うこと聞くわけないでしょ?」


 なるほど。そりゃそうだ。


「じゃ、リジーを送り込んだ先に行くわよ。えーっとどこだっけ……」

 デヴィの目が赤く光る。

「ああ、ここね。わかった」

 デヴィが俺に抱きついてきた。

「ちょ、なんだよ一体」

「あ、そうか。魔法力無効(キャンセレーション)無くなってんだっけ」

 意地悪くデヴィが笑う。

「でも、本当は嬉しいんでしょ? リジーより私の方がいい女だしね。また固くしてる?」

「バカ言うな」

「ふふ。ま、いいわ。デ・カスト・カバデル!」


 俺を抱きしめたまま、デヴィが呪文を唱えた。ジェット機がエアポケットに落ちたような、高速エレベータで一気に下降するような浮遊感が襲ってきた。思わず目を閉じる。

 奈落の底に落ちるような加速を感じた次の瞬間、ストンと地に足が着いた。


「着いたわ」

 デヴィが俺から離れる。俺はそっと目を開けた。

 ヨーロッパ中世の街のようだ。だが、人の気配がしない。よく見ると建造物はかなり傷んでいる。見知らぬ文字が書かれている。


「この異世界では近代化する前に人類が滅んだようよ」

 デヴィが解説する。

「生命反応が全くないの。私とあなた、そしてリジーを除いてね。さ、ついてきなさい」

 デヴィが向かった先は比較的崩壊の少ない建物だった。扉や窓は壊れていたが、内部は綺麗だった。ホテルだろうか。大きなソファが何個も置いてある。 


「ほら、そこに寝てるわ」

 デヴィが一つのソファを指差す。俺はゆっくり近づいた。リジーはどこからか見つけ出したであろう布きれにくるまり、ソファの上で寝ていた。


「おい、リジー、起きろ」

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