第3話 取り戻した「経験と記憶」2
そっか、この女子高生が俺の上に乗っかって痴女プレイか。やるな俺の想像力。
でもさっきのドラえもんシチュエーションは余計だぞ。
とりあえず、ベットに寝転がってお任せすることにした。
「じゃあ、目を瞑って」
ラドアが言った。来たね。これ。俺は言われるままに目を閉じた。
「ちょっと痛いかもよ。我慢してね」
おいおいラドア、ドSかよ。てか、そんな設定の夢見るなんて俺はMだったんだなあ。
あれ? 夢の中で痛覚ってあったか? 激痛がないだけで軽い痛みあるんだっけ?
ラドアが細く冷たい指で俺の顔を撫でだした。おーこれが前戯というやつか。顔を撫でられるだけでは何も感じないな。まあ、これが(俺の想像上での)大人プレイってやつだ。
「……ここが脳に近いか」
ラドアが俺の鼻の穴に指を入れてきた。
うーん。正直微妙……。
どうだろう。これ、エロいか?
「視床下部と前頭葉にアクセスしやすそうね」
ははーん。なるほど。お医者さんごっこか。でも、耳鼻科って地味だな。どうエロティックシチュエーションに持っていくつもりなんだろう。
両方の鼻の穴に指を突っ込まれたせいで、口呼吸になる。はあはあと息が荒くなる。これは少しエロいかもしれん。
「じゃあ、奥の方までっと」
それ、どっちかというと俺のセリフだよなあ……って、おい、ラドア、どこまで指突っ込むんだよ、そんな鼻の奥……ててててて!
「痛てー! 痛い! な、何してるんすか!」
思わず目を開けた。真ん前にラドアの顔がある。真剣な顔で両手の人差し指を俺の鼻の穴に突っ込んでいた。
「少しだけ我慢……はい終わり」
ラドアが俺の鼻の穴から指を抜いた。なかなかのSプレイだ。かなり痛かったぞ。
「無事脳神経に接続できたわ。この装置はね、君にある固有技能を与えて対魔族ブービートラップに改造するんだよ。一時的にね」
残念な展開始まった。
「ふふ、何言っているのかわからないって顔ね。大丈夫。スイッチオン!」
ラドアがつぶやくと、俺の鼻の奥でブウンとかすかに音がした。
「その機械はね、人間の微弱な生体電気を動力源にしているの。君が生きている限り、動き続けるわ」
「あのー、そういう話は面白くないんですよ。そろそろベッド・インしましょうよ」
「まったく、この世界の人間族は低俗ね。まーいいわ。その調子でもうすぐここに来る魔王の娘と仲良くしてよ」
「魔王の娘ですか?」
新キャラ登場というわけか。
「そう。この付近一帯に装置を仕掛けて特異点を発生させているの。あ、特異点というのは魔族の呼び方で、私達は対魔眼防御シールドって呼んでいるわ」
「特異点? 魔眼?」
「いいのよ、わからなくて。とにかく、ここを自然発生した特異点と信じて魔王の娘が来る。そして、ここに住みたいと言うわ。そしたら、言うことを聞いてあげてね。そう、住まわせてあげるの。あ、でもいきなりオッケーしたら不自然だから、適当に抵抗してよ?」
「……適当に抵抗?」
「うん。ま、最終的には君が折れるんだけどね」
ラドアがベッドサイドから立ち上がり、机の方へ歩いていく。机の引き出しに手をかける。
「そろそろ帰るわ。計算では間もなくここに来るからね。あ、君に仕掛けた装置のこと教えておくね。すぐに忘れるけど、潜在意識で理解しておかないと、作戦が失敗するのよ。いい? その装置で君はごく一部の魔族が持っている、魔法力無効の固有技能を手に入れることが出来るの」
「無効化?」
「そう。魔族は我々人間が魔法力無効装置作ったなんて知らないから、驚くでしょうね。まあ、開発には2万年かかっているんだけどね。まだ出来たばかりの装置。あなたが装着したのが事実上の初号機よ」
「はあ」
うーん。話がつまらんぞ。えっちしないのかな?
「その魔法力無効の固有技能には恐ろしい能力があるの」
「へー。どんな?」
「……この固有技能は魔法力を無効にするんだけど、発せられた魔法力を消すことは出来ないのね。ある意味力を閉じ込めているだけなの。で、何かの拍子で固有技能が失われると……例えば死んだりとかすると、封じ込めができなくなり、一気に魔法力を放出されてしまう。つまり今まで受けた魔法を吐き出してしまうのよ」
「そりゃ大変だね」
「いきなり全部放出したらね。まあ、それは死んだりしないとありえないわ。固有技能を失っても、生きていれば魔法力を段階的に放出することが可能なの」
「すまん、もっとわかりやすく言ってくれ」
ラドアがはーっとため息をついた。「こっちの人間は魔法知らないもんね」と独り言をいって苦笑いする。
「つまり、固有技能喪失後、今まで自分が無効化した魔法を使うことができるようになるのよ。火炎攻撃を1回受けたなら、火炎攻撃が1回できるようになるってわけ」
「……それ、えっちと関係ないじゃないか」
なんてつまらない夢なんだろう。全然エロくない。もう、襲おうかな。
「あーこっちの人間は本当に下劣ね。まあいいわ。その下劣さを魔王の娘に発揮しなさい。で、どんどん魔法攻撃されたらいいわ。魔王の娘が魔法力無効の固有技能って気がつくまで、できるだけ強力な魔法を受けてね。そして、ちゃんと魔王の娘殺すのよ! 国王陛下もきっと分かってくれるわ! テロって素敵! じゃね!」
最後にラドアが「ブービートラップモード発動」といったのを最後に、俺は寝てしまった。
そして、朝。
目が覚めると……俺は……完全にラドアのことを忘れていた。




