第5話 デヴィと抱き合う
「でも、あなたが私の下僕になるなら、色々教えてもいいわ」
デヴィが意地悪く笑う。
「……こっちに一人で来たから、あたし、いろいろ困っているのよ。下僕がいると助かるわ」
甘い声でデヴィが言った。
「いや、遠慮しておく」
「ふーん」
デヴィが俺に抱きついてきた。
「デ・カスト・カバデル!」
直後、俺とデヴィは転移魔法で移動した。
「やはりね。肉体を密着させれば、魔法力無効関係なく転移魔法できるわね」
抱きついたまま、デヴィが言った。
「ごめんね。ちょっと確認したかったのよ。あら? なにこれ?」
デヴィが俺の下半身を見た。
「ちょっ、変なとこ固くしないでよね! ふーん……あたしにそういう欲望あるんだ?」
「あのなー、健康な男子高校生だったら、女生徒にこんなことされたら誰が相手でも多少は下半身に変化が起こるんだよ」
「……じゃ、あたしのお尻見たときはもっと固かったんだ?」
ぐ……。俺は返事が出来ない。顔が赤くなったのが自分で分かった。
「冗談よ。面白いわ、顔真っ赤よ。あなた、意外にまじめなのね。……じゃあ、リジーのおもちゃってわけでもないのね?」
デヴィが意地悪く笑う。
「ああ。君の言うおもちゃの意味はよく分からないが、とりあえず、俺はリジーの下僕でもおもちゃでもない。兄として、彼女を世話している」
「ふーん」
デヴィが興味深げに俺を見る。
「……あの、そろそろ離れてくれないか?」
「えー? もう?」
デヴィは俺が困っているのが楽しいようだ。
だが、俺はいろんな意味で限界だった。
デヴィの胸は割と大きい。その胸がさっきからずーっと俺の胸に当たっている。
彼女の両手はずっと俺の腰の上を触りまくっている。足も微妙に絡めてきている。
こんな姿を他の生徒、特に花子に見られたら最悪だ。
だが、その最悪が起こってしまった。
花子がいた。俺を探して、体育館裏にまで来たのだろう。
「おい、デヴィ、離れてくれ!」
俺はぐいっと力を入れ、デヴィの身体を俺から引き離す。
意外にもデヴィはすっと離れた。
「ご、ごめん、マメ君。……お、おじゃましました!」
「待ってくれ花子!」
体育館入口付近で花子に追いついた。
「ご、ごめん、二人がそういう仲って知らなかったから、じ、邪魔しちゃったね。あ、でも、ああいうの、先生に見つかったら怒られるから、えーと、そう、カラオケボックスとかでやると、い、いいんじゃないかな?」
花子は俺の目を見ないで早口でまくしたてた。
「じゃ、これで。えっと、明日、私、用事があるから迎えに行けないけど、ごめん。リジーちゃんによろしく」
駆け足で去ろうとする花子。俺は花子を追い抜き、彼女の前に立ちはだかった。
「待ってくれって言ってるだろ? 誤解しないでくれ、俺はデヴィとそういう関係じゃないんだ」
「……誤解って、別に……。あ、もしかして、なんか勘違いしてる? ち、違うよ! 私、マメ君のことえーっと、なんとも思ってないし!」
「……花子」
「もー、もしかして私がマメ君のこと好きだから、デヴィさんとのこと見てショック受けたと思った? 違うよー! ……私とマメ君、幼馴染だからさ、好きな人とかできたら、すぐに教えてもらえると思っていただけだよ!。か、彼女出来たなら、出来たって、言ってよね、マメ君!」
笑顔で花子が俺に言ったが、小刻みに肩が震えていた。
「違うんだよ、違うんだ」
「違わないよ。……放課後に体育館の裏で抱き合っていたんだから」
だからそれは俺が魔法力無効だから、転移魔法のためにデヴィが俺に身体を密着させたわけで……。
って、この説明花子にしたところで、分かってもらえないよな。
と、その時だった。デヴィがものすごい勢いで俺に飛びついてきた。
「え? おい、なんだよ!」
「デ・カスト・カバデル!」
デヴィが叫ぶ。直後、俺、デヴィ、そして花子は転移魔法で移動した。




