第4話 体育館裏のデヴィ
放課後。デヴィに言われたとおり体育館の裏に行った。
デヴィは既に来ていた。
「一人よね?」
デヴィが念を押す。
「……ああ」
俺が言うと、フッとデヴィが笑った。意外に可愛い笑顔だ。
「聞き分けが良いわね、下僕さん。別にリジーのパンツもってこいとか、裸の写真撮ってこい、なんて言わないから、楽にしてよ」
とデヴィが言った。
「……リジーを辱めたいんじゃないのか?」
「まーねー。でも、それは何時でも出来るわ。カバデル家の跡取りとしては、それよりも先に人間族との和平を破棄する方が大事なのよ」
「つまり、リジーを連れて帰ると。俺に協力しろ、と言うわけか」
デヴィが首を横に振り、あきれたような顔をした。
「なーんで誇り高き魔族が人間族ごときの手助けを求めるのよ。馬鹿にしないでくれる?」
「じゃあ、なんだ?」
「魔王国の魔導転送機が壊されたって話、知ってるわよね?」
「ああ、アリスさんから聞いた」
「壊したのはこちら側だとというのも聞いているかしら?」
「もちろん」
デヴィの顔から笑いが消えた。
「なら話が早いわ。いい? 和平反対派の魔族でこの世界に来ているのは私だけ。で、私は魔導転送機を壊していない」
アスカが言ったとおりだ。
「で、確認なんだけど。本当のこと言ってよね。リジーが壊したんじゃないわよね? 向こうに帰りたくなくて」
「それはない……と思う。もしそうだとしたら、こっちに来た直後に壊しているだろう。リジーはリジーなりに、むこうに変える手段を確保しておきたかったはずだ」
「そうね。私もそう思う。これではっきりしたわね。魔導転送機を破壊したのは、人間族。こちらの人間族なのか、魔王国の人間族なのか……あるいは両者協力したのか」
俺は尻に付いた砂を手で払う。
「俺たちの世界は無関係だろ? あくまでそっちの事情じゃないか」
「……そうとも言い切れないのよね」
「どういうことだ?」
デヴィが黙り込む。しばらく悩んだ後、
「悪いけど、こっちの世界の人間には言えないわ」と言った。




