第4話 AVどころの騒ぎではない
「これでも喰らえ!」
デヴィの目が光る。スパスパと何かが切れる音がした。
「きゃー! せっかくの制服なのに! 昨日買ったばかりなのに!」
リジーのスカートが裂けた。
裂け目からリジーの細いふとももがよく見える。真っ白だ。
あと、ピンクのフリルの付いたパンツが見える。パンツも一部破れていて、見えてはいけないものが少し見えている。
俺は確信した。
リジーは脚だ。こいつのふとももエロい。ビリビリに裂けたスカートと、ピンクのパンツのコントラスト、最高じゃないか。
リジー。お前、意外にやるな。見直したぞ。まあ、殿堂入りは無理だがな。
「よくも制服を……お兄ちゃんに買ってもらったのに……こうしてやる!」
リジーが両手をバッと挙げた。
デヴィのスカートが更に上へ、尾てい骨からくるっと前方に巻き込まれている尻尾も、ぎゅーっと上へ引っ張られた。
「い、痛い! 食い込むぅ!」
ノーパンの股間にどんどん食い込む黒い尻尾。黒髪美少女の苦悶の表情。
AVどころの騒ぎではない。
俺の理性は風前の灯だ。
「食い込んでるって言ってるでしょ! やめてよ! 許さないんだから! あああ、そ、そんなに強くしちゃ……だ、だ、だめぇ!」
必死でスカート裾と尻尾を押さえるデヴィ。
「えい! えい!」
それをさらに上へ上へと、これまた必死のリジー。
それをオカズの殿堂に入れるべく網膜に焼き付けている俺。
この膠着状態を破ったのはドラゴンだった。
「リジー、スカートなんかどうでもいいから、こいつを異世界に転送するんだ!」
余計なこと言うな、ちびドラゴン。もう少しでデヴィがひっくり返って超絶セクシーポーズになりそうだったのに。
「わかった!」
リジーが手を下ろす。デヴィのスカートと尻尾がもとに戻った。
「デ・カスト・ディオロニス! 異世界へ行ってしまいなさい!」
リジーが右手をデヴィに突き出す。リジーの目が青く光り、手から光線。
「デ・カスト・カバデル!」
デヴィも呪文。直後、デヴィの姿が消える。
「お兄ちゃん、後ろ!」
「え?」
俺の後ろにデヴィがいた。瞬間移動の魔法を使ったようだ。
デヴィは俺を羽交い締めにする。見た目と違い、かなり力が強い。
俺の背後からデヴィが語りかけてきた。
「あなた人間族ね。リジーの下僕?」
俺はもがきながら言った。
「は、離せ!」
嘘である。本当は離してほしくなかった。
下半身を注視していて気が付かなかったが、デヴィは巨乳だった。デヴィに羽交い締めにされた俺は、もがくふりをしつつ、背中でその柔らかく大きな乳房の感覚を堪能していた。
「お、お兄ちゃん! お兄ちゃんを離せ!」
リジーが叫ぶ。大丈夫だ、離さなくていいんだリジー。俺はこのままがいい。
「お兄ちゃん? あなたの兄、すなわちディオロニス家の長男はクリストファでしょ?」
デヴィが不思議そうに言った。
「てか、こいつ、人間族でしょ? 下僕でしょ? あ。もしかして、そういう……設定? 性奴隷? さすが魔王の娘、いやらしい。人間と和平といっても、結局こういうことね!」
「ち、違う! とにかく、離して!」
デヴィがにやりと笑った。
「ふーん。たいそうお気に入りなのね、この下僕。見たとこ貧相な体だけど。魔王の娘ともなれば、特殊性癖なのかしら。そっかーそんなに大事なんだ、このオモチャ。……だったら、こーしてやる!」
デヴィが邪悪な目で俺をにらみ、更にきつく締め上げた。おお、胸の感触が……。
「……ディオロニス家の異世界転送は、攻撃魔法だったわね? どこに行くのか当てずっぽうでしょ?」
デヴィが不敵な笑みを浮かべた。
「カバデル家の異世界転送は空間転移魔法よ。自由に転送先の異世界を選べるの……デ・カスト・カバデル! 異世界への扉よ、いざ開かれん!」
俺の目の前に扉が現れた。バン、と開いたその先は砂漠だ。うわあ、なんか過酷な異世界だな。
「じゃあね、オモチャさん」
デヴィが俺の背中を押した。
俺は異世界への扉に吸い込まれた。
が、砂漠の世界には行かなかった。扉の向こうは階段踊り場だった。
魔法力無効の俺だからな。こうなると思っていた。
「え? なんで? 扉に飛び込んだわよね? どういうこと?」
状況を理解できないデヴィは混乱している。その隙をリジーは逃がさない。
「今よ、ドラちゃん!」
「わかった!」
ドラゴンが青い火炎を吐いた。火炎はまっすぐデヴィに向かう。
「ふん!」
デヴィが魔法をつぶやき、壁を作る。火炎が壁に激突。火炎はかなり強く、壁をじわじわと溶かしている。
つえーな、このチビドラ。
「かかったわね! デ・カスト・ディオロニス! 異世界へ行けー!」
リジーの手からビームが出る。それをデヴィは避けられない。瞬間移動できない。
どうやら魔法は同時に一つしか使えないようだ。心理魔法は指輪の魔法だから別枠なんだろう。
デヴィはドラゴンの火炎を防ぐ防護壁の魔法を解除できず、まともにリジーの異世界転移魔法を浴びてしまった。
……デヴィは消えた。
「いえーい! 勝利!」
無邪気にはしゃぐリジー。だが、俺は改めてリジーが魔王の娘ということを思い知らされていた。
リジーの破れたスカートからピンクのパンツを眺めながら。




