プロローグ
冷蔵庫から卵を2つ取り出し、テフロン加工のフライパンに割り入れたその時、声がした。
「卵焼いているの? あ、それ目玉焼きだよね、知ってる。へーこれが。あっちにはなかったな。こういう調理もありかー。あ、卵2つだ。私の分も焼いてくれているの? お兄ちゃん」
やや舌足らずなアニメ声が俺の後ろから聞こえた。
振り向くと、金髪ツインテールの少女がニコニコ笑いながら立っていた。
「……誰だ。お前」
俺の中学時代の体育用ジャージ上下をだぶだぶっと着ていた。
「もう、お兄ちゃんたら、妹のこと忘れたの? お兄ちゃんの妹、エリザベスよ。エ・リ・ザ・ベ・ス! いつもリジーって呼んでるじゃない!」
青い目で俺をじーっと見つめる。
「は? リジー? 外人かお前?」
「そう、リジー。お兄ちゃん! 忘れたの? こんなにかわいい妹なのに、忘れたの?」
なんだ、妹か。よかった。
……。
………………。
………………………………。
よくねーーーっ! 俺は一人っ子だ。
妹がいたとして、エリザベスなんて名前にするわけがない。両親とも日本人だ。
そう、俺の名前は遠藤雄飛、日本人。高校2年生。
どこにでもいる17歳。一人っ子だ。断じて、一人っ子だ。
趣味らしい趣味などない。もちろん、特技もない。あるやつ、表へ出ろ。
運動は苦手だから運動部は論外。
てか、運動部に入ったら脳みそが筋肉になって死ぬ。
文化部? キモオタニート養成所なんかに用はない。
ってことで部活動には所属していない。
そんな普通の男子高校生だが、なぜか両親はともに単身赴任中。ファミリー向け3LDK分譲マンションに絶賛一人暮らし中だ。
妹などいない。
繰り返す。妹など……いないのだ!
6月中旬の爽やかな日曜、朝9時。いきなり目の前に現れた自称「俺の妹」エリザベス。愛称リジー。
金髪ツインテール。碧眼。
よく見ると、けっこうかわいい。
だが、ひとつ残念なところがある。
見事に貧乳だ。見事なまでにつるぺた。
(俺より胸無いよな?)
じっと胸を見る。お? 両方に小さな突起が見えるぞ?
なるほど、ノーブラか。これはなかなかいい。悪くない。ちっちゃなかわいい乳首の形が丸わかりだ。
だが惜しい。俺は巨乳派だ。
貧乳でなければもっとエロかったのに。
実に惜しい。このエロいシチュエーション。
エロいシチュエーション……?
日曜の朝、いきなり自称妹の貧乳ノーブラ娘とふたりきりだと?
……あ、夢だこれ。えっちな夢だ。なーるほど。そっか。
「じゃ、ヤらせてもらうか」