~Ⅰ章 あなたが……ゼロ……~
俺の1日は実に平凡だ。高校2年生なので3年生みたいに慌てず1年生よりリラックスできる。高校までは徒歩5分で着くというサービスもある。
「おはよう、零君」
後ろから声を掛けられ振り返るとこちらに向かって走ってくる1人の小柄の女子が見えた。
彼女は夏目雪子、俺の腐れ縁的な奴だ。特徴としては小柄で短めの茶髪ツインテールかな……。一応言っておくが『坊ちゃん』で有名な夏目漱石さんとは全く関係ないので注意が必要だ。
「うっす、雪」
「もぉ、あたしは雪子よ、せ・つ・こ!」
「別にいいじゃねーかよ、アカ名も《YUKI》だし」
「実名は実名、アカ名はアカ名!」
雪子は頬を膨らませた。どうやらご機嫌斜めみたいだ。
「そういう零君はアカ名じゃん」
「まんまだけどな」
「人のこと言えないじゃんゼロ」
「まあな」
ちなみにだが、雪子はうちの学校の『四大美女』の1人だ。俺には分からんが……「歌がうまい」しか分かんねー。
「じゃあ、あたしはここで」
「あ……あぁ」
そういえばコイツ2年6組だったということを今思い出した(ちなみに俺は2年5組です)
♪
教室に担任の長門が入ってきたので朝のSHRが始まった。
「今日から入ってきた新しい転校生を紹介する……入ってこい」
「転校生か……」と零はため息をついた。入ってきたのは身長が平均より少し低めの銀髪ロングのブルーアイのいかにも外人っぽい女子だった。
「初めまして、皆さん。私の名前は歌井姫です。この神と目と肌の色は生まれつきですので気にしないでください。よろしくお願いします」
「じゃあ、席は加藤の隣だ。加藤、後で校内を案内してやってくれ」
「……え……あ……はい……」
姫は俺の左隣の席に着いた。
「よろしくね、加藤」
「零でいいぞ」
「分かった、じゃあ私も姫でいいよ」
初めからそうさせてもらうよ。
♪
昼休みは1人で、ある教室に籠るのだが今日はそうにもいかない。
「ここが放送室だ」
俺は今、姫のために校内案内をしている。
「ねえ、零」
「なんだよ。ここが、第1実験室だ」
「部活は何に入っているの?」
「俺は演劇部だけど……」
「へー、そうなんだ」
……コイツ……何がしたい……
「零、ここって何?」
「展示室だ」
「何が展示してあるの?」
「アニメグッズ」
「……は?」
「アニメグッズ」
「私の空耳かしら?今、アニメグッズって言った?」
「言ったけど……」
姫はポカーンとした。まあ、普通そうなるわな。
「この学校が舞台となった《セイント・オブ・スタート》って超有名なラノベのグッズがあるんだ」
「《セイント・オブ・スタート》てあの!?」
驚くよなー普通。この展示室はオタクにとっては神聖な場所だ。
「入るか?」
「入る‼」
即答だった。まあ、そうだわな。
ポケットから生徒用カードキーを取り出しロックを解除し入る。
「普通は入れない場所なんだぞ」
「でも、今そのカードキーで……」
「俺は特別なんだよ」
「権力でもあるの?」
「いや、《セイント・オブ・スタート》の作者が俺だから」
そしてさらなる長い沈黙が流れる。
長い沈黙は第3者によって終わった。
「やっほー、黒ゑ先生」
そいつは雪子だった。ナイス、雪子!
「乙です、スノーガール先生」
雪子改め《スノーガール》は《セイント・オブ・スタート》の担当イラストレーターだ。紹介してもらったときは正直驚いたものだ。
「黒ゑ先生、この人は?」
「あぁ、転校生の歌井姫だ」
「はじめまして」
「姫ちゃんかー。私は、夏目雪子、スノーガールの方が分かるかな……よろしく」
「あ……はい」
「ここには2人と学校のお偉いさんしか入れないから入りたかったら言ってね」
「あ……はい」
もう少し気を使ってやれよ……
「姫ちゃん、LINE交換しよ」
「はい‼」
「お……俺も……」
「いいよー♪」
なんで俺だけ態度が違うんだよ……
姫とLINEを交換した時ふと姫がつぶやいた。
「あなたが……ゼロだったんだー……」
「何かあったか」
「い……いえ……何でもないです」
嘘かどうかわからないが姫の表情が明るかった気がした。