コクカとフル
よし、間に合った。
今回は配下がきます。
配下が欲しくない?と自由に提案された後、自由は地面に魔方陣を描いた。
「えー、これから神樹の配下を召喚したいと思いまーす!皆様拍手ー!」
ドンドンパフパフ。
ここにいるのは僕と美星、真珠と自由。しかも、美星は何かよく分かってないみたい。だから、拍手がなんとなくむなしい。もっと喜んで!あ、真珠。お前には言ってない。
「じゃあ、召喚を始めよー!」
テンション高いな自由さんや。
自由はおもむろに手を宙に軽く上げると、何かを詠唱し始めた。
「我が名は自由、数多の業を負いしモノ。自由の名において、この世の理に干渉す」
自由の言葉が紡がれると共に、目の前に光が収束していく。
「干渉するのは理外のモノ、干渉されるはこの世の理。我が望みは忠実なる僕、出でよ、コクカ、ロウ」
光はやがて、一体の人型、そして一匹の獣を形作った。
「よーし、こんな感じか。それじゃ、干渉完了!」
自由がそう言うと、光は弾けて、黒い巫女服の少女と灰色の狼がこの世に現れた。
これが、僕の配下。
初めての、配下。
「………ふぇっ」
「………ふむ」
その一体と一匹は、おもむろに目を開けると、しっぽを動かしたり前足を動かしたり、ふえぇふえぇと呟いてみたりした。いや巫女服さん、ふえぇふえぇじゃなくて。
「それで、自由さんや」
「なんぞや?」
気になったのが一つ。
「この子達、どんな感じの配下なの?」
配下の能力です。これでショボい能力だったら殴るかんな?
「あー、それね?」
「どうなん?」
自由は苦笑して言った。
「見た方が早いね。おーい、こっち来てー」
自由はこちらに配下を呼んで、目の前に立たせた。
「さて、まず自己紹介どうぞー」
あ、そうだね、名前すら聞いてねぇや。
先に口を開いたのは巫女服少女。
「ふえぇふえぇ。はじめましてマスター、空鯨のコクカです。支援系魔法が得意です。好きなものは魚とマスターです。よろしくお願いです。ふえぇ」
クセが凄い。
そう言い終わり、巫女服少女、コクカはぺこっ、と頭を下げた。
コクカ、支援系魔法が得意、ね。眠そうにこちらを見つめる彼女の感じからはよくわからない。巫女服だからお祈りかな?
「ライバル、か。真珠は負けませんよぉ………?おにーたんは私のモノ…」
約1名、好きなものの所で反応していた奴がいました。呼んでないから。
「コクカ、これからよろしくね」
「よろしくですマスター。はむっ」
握手してみた。
コクカはにこやかに笑って、手を噛んだ。
「「「!?」」」
いやなんだよコイツ!マスターを噛んだぞ!訴えていいかな?でも目を閉じてはむはむしてるのは可愛い。
「あの、コクカ?」
「なんですはむはむマスターはむはむ」
「なんで噛んでるんですかね?」
「お腹空きましたはむはむ」
「そうか、ならそう言ってくれ!」
「…おにーたんはむはむ」
「てめえ呼んでねえ真珠」
出していない方の手を噛みだした真珠を離して、コクカに固めの干し肉をあげた。ちなみにフォーカスさんがくれたおやつです。
コクカはクンクンしてから、幸せそうにはむはむ噛み始めた。よし、放置しよう。
気を取り直し、狼の方に向かう。
「で、君は?」
狼は流暢な言葉で自己紹介を始めた。
「ロウ、クラーケンフェンリルです。主に中距離攻撃です。足を触手に変えれます。好物は特にありません。よろしくお願いいたしますマスター」
なんかヤバそう。
狼、ロウは器用に座ったまま上品に頭を下げた。
ロウ、中距離攻撃。触手とか言ってたからそういうことなんだろうな。いや、襲えってことじゃないけど、その、ちょっと見てみたいなー、なんて?
「触手、見てみたいけどいい?」
「お安いご用ですマスター」
機嫌良さそうに承諾したロウ。さて、どんな感じなんだろう?
すると、ロウの狼の4本の足が光を発して、形がどんどんと変わっていく。腹部からも1対の巨大な触手が生えてきた。
「ふう、ざっとこんな感じになります」
そこにあったのは、異形。
狼の形をした胴体から、6本の桃色の触手が生えている。触手はテラテラと光を反射しているので、何かを分泌していることが分かる。
「………動かしてみて?」
「仰せのままに」
ロウは、触手を伸び縮みさせたり、分割させて本数を増やしたり、地面に突き刺して僕の所まで届かせたり、僕の身体を絡めとったりした。
そしてその結果、僕の身体に触手が巻きついている。どうしてこうなった。
「「「………」」」
ちなみに美星と真珠とコクカは頬を赤らめてこちらを凝視している。コクカは干し肉をはむはむしたままだが。
「ちょっと、待って、やめて、お願いっ、ねぇ!」
「「「やめたらどうするかわかってるね?」」」
「………しかし、」
「「「ね?」」」
「………」
「負けないでロウ、ていうかちょっ、と、服の下は、ら、らめっ」
需要ないだろ男の触手プレイなんて!
そんな僕の心の叫びを無視して、ロウの触手は僕の服の下に侵入してくる。
コクカは干し肉をはむはむするのさえ忘れて見入っている。熱中しなくていいから!
すると、静観していた自由がロウにこう言った。
「ロウさんや、口に触手突っ込んでみ?面白いことになるよ?」
女子勢はいいぞそれやれよ、という目でロウを見ている。やめて?
ロウは申し訳なさそうに、口を開いた。
「………噛まないで下さいね?」
お前!おい!
ロウの触手は僕の口に………
サセッカ、ボケェ!イヤだわ!
僕は渾身の力で触手から逃げ出そうとした。有難いことに口に入ることはなかった。
口には。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
下着の中に触手が入り込んだのだ。
「うええ、ぬめぬめするぅ、ぞわぞわするぅ、やだぁやだぁ、やめてぇ、お願いぃ」
半泣きである。もう男の尊厳が亡くなるかもしれないという最大級の危機だったから、本当に恐怖に襲われていた。怖かった。
「「「ほう、成る程。さて、もう少しいってみようか」」」
女子勢、目に光が無いみたい。
「………」
「「「ん?どうしたのかね?」」」
ロウは悩んでいるようにこちらを伺っていた。
こちらとしてはもう勘弁してほしい。頼む。ねぇ!ロウ!
「………き、今日はこれまで、ということで」
不穏な言葉だったが、とても安心できる言葉でもあった。ロウは僕を選んでくれたのだ!ありがとう、ありがとう、お嫁になるぅ、好きぃ、好きぃ。
「「「そうか、じゃあ明日から毎日頼むぞ」」」
お前ら嫌いぃ。
「とりあえず神樹が完全に回復してからでいいんじゃね?」
自由、だいしゅきぃ。
「「「チッ、しょうがないな」」」
ありがとぉぉ。
ロウは触手を元のサイズまで縮め、狼に戻った。お疲れ様。
こんな感じで、コクカとロウが仲間に加わった。
そして、自由が一言。
「神樹、お前さんにもおんなじことできるわけなんだが、どうする?」
何だと?配下が増えるのか。それはそれは、良いことだね。
「「「!?!?」」」
………やめとこうかな?
コクカはシャチをイメージした食いしん坊です。
ロウは気高い狼にクラーケンの触手を足してみたキメラです。
ちなみに、ロウは真面目な子なので、神樹の貞操(笑)をとるか自身の命をとるかで神樹をとりました。いい子です。
次回、神樹に異変。