はじめまして、魔王さんですか
ニリとんです。
召喚された神樹達ですが、その目の前にいた人物とは……?
「「「………ふぉう。ここどこ?」」」
召喚され、着いた先は広間だった。そして、床には同じ魔方陣があった。どきどき。そこにいたのは1人の男。角が生えている。どきどき。ちなみに他は誰もいない。
僕らは目の前に立っている、銀髪ロン毛のダンディーが自分たちを召喚したことを察し、期待の目でそちらを見た。どきどき。ちなみにおっさんというのは言いやすかったのでその呼称にしたわけであり、パッと見は美青年である。チッ、爆発しろぉ!
すると、見られていることに気づいた彼はこちらを見て微笑みを浮かべた。
「召喚に応じてくれてありがとな。俺がこの世界の魔王、名をフォーカスと言う」
本物の異世界召喚だ……。そしてまさかの魔王サイドだ………。僕らは、魔王を前にしてそんなことを思った。いやいやいやいや。マジかよそりゃないよ………!魔王は放心状態の僕らに苦笑していた。いや、あんたのせいよ。
そして、魔王は僕らに顔を向け、話し始めた。
「さて、俺が君達を召喚した理由なんだが………」
魔王が指を鳴らすと、3人の前にとある男が映し出された。スクリーンもないのに、である。あったらあったで驚くけど。
そこに気付いた僕は、少し期待を持った。そりゃまあ、アレでしょアレ。魔なんとか。
「ちょっといいっすか?」
「なんだ」
僕は、そんなとても大きな期待があったので、魔王フォーカスに質問をした。どきどきどきどき。
「この世界って、魔法とかありますか?」
「無論、あるぞ?」
「「「うおしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」
やはり魔法があるというのは興奮するぜよ。3人揃ってジャンプした。同時にジャンプした。息合いすぎかな。うへへ。
「ど、どうした?………ああ、君たちの所には魔法が無かったのか」
「そうっすよ!いやまあこれで僕も無双ができる……………………ではないか」
ちょっと待てよ。決めつけるのは早い。
「あ、これスイッチ入ったかも?」
「おにーたんの慎重過ぎスイッチだねー」
事前に何回も見ている真珠と美星はもうこの時点で察してしまったが、魔王、フォーカスは何が起こるのかと不思議そうにしている。そんなことどうでもいい。魔法が使えない可能性はあるのだ。
「まず第一に適性があるかないかとかがある。これは確実だ。その時にないと出たら終わりだな。あったとしても、次は何の適性かが分かると思う。それで何か、例えば家庭用魔法みたいな弱っちい魔法の場合、無双とかは無理だな。そして、魔力。これが異世界特典とかがなかった場合、そもそも魔法ができない。あと考えられるのは………」
常に悪い思考をしておく。それがさらに幸せを感じるための極意。僕の人生指針の1つ。ネガティブ思考をすれば、幸せはより大きく感じられる。大体その後に鬱になる。まあいい。
「………………彼はいつもこんな感じなのか?」
「基本ほっとけば戻りますから、大丈夫です。あ、こっちの自己紹介がまだでしたね、私は聖魅美星と言います」
「真珠です。潮上真珠。あと、あそこのおにーたんが碧雷神樹、おにーたん」
「お、おう。ずいぶん冷静なんだな………」
時間は有効活用する、というのが彼女等の基本理念だということを僕は知らない。
「5分たちましたし、そろそろ直してきますね。今回長めだなー…」
「おお、すまん」
すぐに魔王と仲良くなった美星はコミュ力高過ぎなのではないだろうか。普通はそんなに順応できるはずはない。それもこれもやはり僕が最底辺の人間だからかな。いやそもそも人間じゃないか。そうですそうですハハハハハハハハ……………ハァ。
「……神樹、使えなくってもいいさ。人生は人それぞれだからね」
「…はっ!そうか!そうだな!ありがたいよ美星たん!愛してる!」
その考えはなかった。使えなくても別にいいんだ!高い理想は捨てよう。………え、待て、声に出てたの?きゃー恥ずかし。
ちなみに「美星愛してる」で真珠が過剰な反応をしたので一度沈めておいた。
「で、話の続きなんだが…」
フォーカスが言うには、この世界は『魔王を倒した勇者が、次の魔王となり、勇者に倒されてしまう。そして、倒した勇者が次の魔王に』というループが起こっていて、その事実は一握りの者しか知らない。どうにかしてそのループを自分の代で終わらせ、平和な世界にしたい、ということだそうだ。魔王のクセに、良い奴じゃないですか。フォーカスさんって呼ぼう。ていうかそのループめっちゃめんどくさいな。
そして、僕らにはその事実を勇者に知らせて説得し、停戦をしたい、という魔王の伝言を受け入れさせてほしい、ということである。パシリでしょうか。うーん。
「ちなみに、そのループ現象を知ったのは?」
「魔王を倒すと同時に頭に流れ込んできてな。俺がリーダーだった当時の魔王討伐パーティーの皆には、それを伝えて国に帰らせたんだ。流石に他人には言わないように言っておいた」
「うううううあうあうあう………真珠は魔王さんに同情しちゃいますぅぅぅ!」
「ま、まあ、落ち着いてくれ。そういうわけで、君たちには勇者を説得してきてほしいんだが、いいか?」
そう、フォーカスさんが言った途端。唐突に目の前の床が輝きだし。
『儂等からも頼むぞ』
『頼むぜ』
白髪の老人と黒髪の青年が現れて、そう伝えた。どっから出た……?
「あ、あのぉ、フォーカスさん、ど、どちら様で?」
「俺もこの2人は知らん。………貴様ら、何者だ?」
フォーカスさんですら知らない人がいきなり来たことに動揺が隠せなかった。ちょっと無理して大丈夫なふりをしているが、冷静過ぎなフォーカスさんにはバレバレのよう。その上で僕らを守ってくれてるからいい人すぎる。
すると2人はこう言った。
『ああ、儂等か?儂は神じゃ』
『俺ぁ悪魔だ』
魔王の前に、世界の管理者と欲望の象徴が降臨した。おっほぉ、これですよこれ、転生モノっぽくなってきましたよ!すごいヒトたち!わーははははは。何でこんなとこにいるんだろうか………?
「こ、これは………お初にお目にかかります、魔王のフォーカスと申します」
『ああ、ええよ別に、自然体じゃ自然体』
『そうだな、それに俺等が本当に用があるのはあっちだしな』
そう言って、悪魔は僕達を指差した。
「「「え?こっちですか?」」」
第三者視点で聞いていた僕らは、悪魔の発言に綺麗なハモりで返したのだった。他人事だと思ってるときのフリはマジで怖い。
最近風邪気味です。
喉が痛いんです。
……へっへっへっ。
多分カラオケが原因だね。