壊れた人形姫
とある世界のとある王国に人形姫と呼ばれる王女がいた。
エレーヌと名付けられた彼女は、まさしく人形のような妙なる美しさをもつ姫君であったが、その実、感情も意思も持たぬ欠け者で、赤子の頃は元より成長した現在も他者からの命令がなければ泣き笑いどころか立ちも歩きもせず、という有り様であった。
故に彼女は疎まれ、後に正常な王子王女が誕生したこともあり、十を過ぎるより前に本来高貴な咎人の牢獄として使用される高き塔に隠され、以後、触れてはならぬ禁忌の存在として扱われてしまう。
ただし、国の威信を損なわぬよう、対外的には、王女は非常に病弱で王家所有の保養地にて療養中であると発表されていた。
人形姫というのは、要はエレーヌの名を口にすることを憚られた貴族間で隠語として広まった呼称だ。
憐れな彼女の命はこのまま塔で孤独に朽ちていくものと、真実を知る誰もがそう考えていた。
だが、王女が塔の囚われ人となってより約十年。
運命は、ある戦争が起こったことにより大きく変化を見せる。
古くから大層豊かな農業国であったことが禍し、鉱山を多く抱える近隣の重工業国から目を付けられ、侵略戦争を仕掛けられたのである。
重工業国は国内における必要な食糧のほぼ七割以上を輸入により確保していたのだが、常の取引先となっていた大国で大規模な反乱が勃発したことにより供給が途絶え、取り急ぎの判断を余儀なくされた。
しばらくは他の取引先を探したり、王宮の食糧庫を開放したりと正道での解決に勤しんでいたのだが、状況は一向に改善の兆しを見せず、民が徐々にやせ細り炉の火が落とされていく中で、やがて、ひとつの決断を下すこととなる。
彼らは餓える民の意識を内に向けさせないため、更には口減らしのため、何より今後の安定した食糧自給を求めて、農業国へとその牙を向けたのだ。
単純な保有武力でいえば、重工業国に農業国が敵うものではない。
だが、重工業国においては特に末端の歩兵など、もはや全身鎧を装備する体力すら残っていないようで、反対に一部で畜産業も営んでいる農業国の兵たちは気力体力共に漲っている万全の状態であったことから、実際の戦争は一進一退の様相を呈していた。
互いの国境でいたずらに衝突を繰り返し、ただただ人間の数ばかりが減っていく日々。
そんなある種の膠着状態を打ち破ったのは、農業国出身のとある一人の男だった。
国内のどこにでもある一般的農村に生まれ育ったその男は、しかし、類稀なる巨体を有し、見目以上の剛力と戦場で開花した武の才でもって、英雄と呼ばれるに相応しい数え切れぬほどの戦果を挙げる。
雑兵を塵芥のごとく蹴散らし、肉壁を抉り越え、敵国の指揮官・部隊長をことごとく屠り尽くして、ついには最高司令官までもをその手に下し、まさに一騎当千の活躍で自軍を勝利させてしまったのだ。
これにより、敗戦した重工業国は農業国の属国となり、様々な権利が奪われる一方で、食糧援助を受け、細々と生きながらえる流れとなった。
戦争や餓死により人口が激減したことで、農業国からの施しが不足なく行き渡るようになったという事実は、なかなかの皮肉だっただろう。
勝者の側である農業国にしても、消耗した国庫や働き手を召集したことによる以降の生産力や税収の低下に対応するため忙しなく政に従事していた。
さて、そんな中、英雄となった男がどうなったかというと……農民からすれば大金の、王侯貴族からすれば僅かな報奨金と、一代限りの子爵位、高貴なる女性を妻として下賜され、その上で、他国からの引き抜き等を監視する意味合いも含めて貴族のみからなる王国騎士団中隊長として雇い入れられる。
戦後の厳しい現状と貴族連の平民に対する軽視や嫉妬が、彼を必要以上に祀り上げることを良しとしなかった。
ちなみに、妻となった高貴な女性というのは、くだんの人形姫である。
身分という一点のみにおいて最高位に立つエレーヌだが、彼女の性質上、体の良い厄介払いであったことは言うまでもない。
天上人である王から下賜された以上、離婚も叶わぬ相手ということで、生意気な平民に対する一部貴族たちよりの嫌がらせも兼ねていた。
相手方の意図はどうあれ、元農民の倅ごときが御上に逆らえるものではない。
男は謁見から間もなく、褒賞金で王都中流区に二階建てのマイホームを購入し、家事と王女の世話のため派遣商会から一人の壮年女性を雇って、独りよがりの新婚生活を始めた。
立つ、座る、手を上げる、歩くなど、簡単な動作であれば、姫君は他者からの命令によって行うことができるため、世話役が一人といえど、早々手のかかる場面というものはない。
物言わぬ妻に対し、彼は不満をぶつけるどころか、むしろ、繊細なガラス細工の置物にするように至極丁寧に彼女を扱った。
有り体に言ってしまえば、一目惚れだった。
見目だけは極上に美しい人形姫に、彼はけして叶わぬ恋をしたのだ。
いつかその空ろな目に自身の姿が映ることを夢見て、男は穢れなき妻を飽くことなく慈しんだ。
暇さえあれば、彼女を眺め、他愛ない言葉を掛けて、艶やかなプラチナブロンドの髪を梳り、時に手を取り生に安堵し、時に跪き愛を乞う。
ただし、夫婦としての接触は皆無だった。
彼は、エレーヌがエレーヌ自身の意思で彼を受け入れない限り、肌を暴くことも唇を寄せることも己に禁じている。
負い目もあった。
高貴で美しい妻に並び立つには、卑しい身分も厳ついばかりの見目も到底相応しいと言えるものではない。
男はなかば主に絶対服従の従者のように、一身に姫君に尽くし続けていた。
時折、心ない者から人形遊びに夢中の気狂いよ軟弱者よと揶揄されることもあったが、無言で巨体を寄せ頭上から見下ろしてやれば、大抵の者は口を噤んだ。
さて、そんな歪な新婚生活も日常化した、ある夕暮れ時のこと。
日中の勤務で汗や泥に汚れた身体を清めるため、姫君を迎える際に奮発して作った風呂場で、湯を沸かす手間を惜しんで水を浴びていた男。
が、そこへ家屋内から何やら物音が聞こえて、彼はタオル一枚を腰に巻き、剣を手に浴場を飛び出した。
すでに派遣の家政婦は本日の業務を終え帰路に着いている。
他に音の立つ状況といえば、招かれざる者の存在以外に考えられなかった。
水滴を散らしながら真っ先に男が向かったのは、当然、何よりも彼が大切にしているエレーヌの元だ。
常の通りならば、彼女は二階の自室にいるだろう。
そこに実際に侵入者がいても、いなくても、微動だにせぬ様子でカウチに腰掛け続ける姫君の姿が男の脳裏に浮かぶ。
「エレーヌ様っ!」
駆ける勢いのまま乱暴に扉を開きながら、彼は人形姫の名を呼んだ。
応える声はない。
だが、視界の先に不穏な輩も見受けられない。
僅かに安堵の息を吐きながら、それでも警戒を緩めず、男はエレーヌに一言断りを入れてから室内を検め始めた。
カーテンの陰や、窓の外壁、ベッドと床の隙間、机の下に、箪笥の中や裏など、彼は蟻の子一匹見逃さぬといった鋭い眼差しで検分を進めていく。
本人は至って大真面目なのだが、「腰にタオルを一枚巻いただけの厳つい大男が、美女の目前で色々と危うい体位を取っている」という光景は、中々に倒錯的であった。
やがて、部屋中の確認を終えた彼は、カウチに座す人形姫の正面に片膝を立てて跪き、粛々と声をかける。
俯きがちな彼女の視界に映ろうと思えば、自ら身を沈めるのが最も早い。
ただ、仮にもし、エレーヌが健常人で、一般的な貴族令嬢と同等の感覚の持ち主だったとすれば、セクシャルハラスメントも甚だしい行為だった。
「失礼しますた。
まんず、こん部屋ば異常ねぇですけ、安心すて下せぇ」
そこまで言うと、男は一度深く頷いてから、おもむろに立ち上がる。
粗い生地のタオルの下で、無防備な雄がフラフラと揺れた。
「したら、オラっちさ、こんまま他んドゴも見回っちぇ来ますけぇ、もうちくっと待っちょっ……」
「……………ぅ…………………」
いつものように自己満足に浸りながら一方的に語りかける最中、彼以外の存在を発生点とする微かな振動が耳に届く。
数秒、男はそのあからさまな音の出処を理解することができず沈黙した。
在り得ないと、そう強く思い込んでいたがため、現実を現実と受け止めるまでに若干のタイムラグが生じてしまったのだ。
「へ?」
やがて、信じられないような気持ちで改めてエレーヌへと顔を向ければ、男の勘違いでも聞き間違いでもなく、真実、彼女の声だったのだと、薄く開かれた瑞々しい桃色の唇が証明していた。
これまで、人形姫が食事摂取や口内洗浄のため命令された場面以外で、一度たりと動かされすらしなかった口元が、確かに今、緩んでいたのだ。
「なっ、えっ、えれっ、エレーヌ様……っ?」
どうか夢や幻であってくれるなと、内心でそう強く懇願しながら、彼は動揺と感激の狭間で姫君へと無骨な手を震わせ伸ばす。
が、その指が届くよりも早く、エレーヌは唐突に自らの髪を引き千切るかのごとく強く掴んで、瞼を限界まで開いて鼓膜を刺すような高く悲痛な叫びを上げた。
「っぁぁあっきあぁあああああああああああぁああああ!!」
瞬間、パンッと空間に大きな破裂音が響く。
慌てて男が視線を回すが、異常はどこにも見受けられない。
やがて、カウチにぐったりと身体を倒した彼女へ、彼は心臓が潰れそうな思いと共に呼びかけた。
「エレーヌ様っ!? ご無事だべか、エレーヌ様!」
必死の声とは真逆に、男は慎重に人形姫の肩に手を添える。
「あぁっ、えれ、エレーヌ様っ、医者、医者ば連れっち行ぎますけぇ、す、すぐ、医者ばっ」
言いつつ、もう一方の腕をやはり慎重に伸ばせば、その手首を姫君のか細い手が意外な力強さで掴んできた。
驚きに息を飲み全身を硬直させていると、男の目の前で彼女がカウチに伏せていた上半身をゆらりゆらりと立ち昇らせる。
そのまま、視線がぶつかった。
それまでの人形ぶりが嘘であったかのように、空虚さのカケラもない、さながら炎でも宿しているかのような燃え盛る瞳でエレーヌは男を見つめている。
彼の額から脂汗が流れると同時に、その喉が大きく上下した。
「エ……レー……」
「胸筋! 腹筋!! 大臀筋んんーーーーーーーーーーーッ!!!」
瞬間、姫君は甲高い奇声を発しながら、目にも止まらぬ早業で男の胸に飛び込んでいた。
「はぁぁん、しゅごいいい! 爆裂筋肉マックスメガ盛りスペシャルぅぅ!
あぁーーーくんかくんかペロペロペロくんかくんかペロペロペロペロペロ」
「のえぇぇぇえええええええええええッ!?」
エレーヌは意味不明の言葉を垂れ流しながら、狂ったように彼の身体をまさぐり頬ずりしている。
唐突かつあまりに理解不能の出来事にパニックを起こし、そのまま思考を停止させてしまった男。
彼はもはや、姫君に陵辱されるがまま口から喘ぎを溢すことしか出来なかった。
「うひょー! パーフェクトマッスル! パーフェクトマッスル!
天にまします我らが父よ、マッチョの園は本当にあったんだーーーーー!」
「あひぃぃ、そごはっ、エレーヌ様、そごはいげねぇだーーあッーーーーー!?」
数分前までの歪な日常から一転、室内に未曾有のカオス空間が形成されている。
ただひとつ幸運があったとすれば、この変態的光景を見せ付けられる第三者が存在しなかったことに尽きるだろう。
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「ハッ! ここはどこ、私は誰、貴方は理想の筋肉達磨」
「へぁ……?」
いつしか床に仰向けに倒れ、息も絶えだえ撃沈状態になっていた男は、ようやく肉を愛でる手を止め何事か語り出した姫君に対し、光なき目で気の抜けた声を漏らした。
呆けた様子の彼を案ずる素振りも見せず、彼女は屈強な腹筋に大胆に跨ったまま小首を傾げている。
「ええっと、ええっと……私、私は……」
「あ、あのぅ、エレーヌ様?」
「エレーヌ?」
焦がれ続ける愛しい人が困惑に憂う姿を目にして、いくらかの正気を取り戻した男が、疑問符混じりに名を舌に乗せた。
彼の呼びかけに、エレーヌは重そうな睫毛群を三度瞬かせ、それから僅かに瞼を広げて、口元に片手を添え、こう呟く。
「エレーヌ、エレーヌ。あぁ、そう、そうだわ、思い出した。
私はエレーヌ。この国の第一王女エレーヌ。
感情を意思を持たず産まれ、疎まれ、幽閉され、英雄と呼ばれた元農民のパリスに嫁がされ王位継承権を失った、今はただ彼の妻として有るだけのエレーヌ」
ブツブツと独りで言葉を紡ぎ続ける姫君へ、今度は男がその分厚い瞼を瞬かせた。
身体に乗り上げられていることも忘れて、彼は人形姫たる由縁を突如爆発四散させたエレーヌへ唖然と視線を送っている。
「……そして、貴方はパリス。私の旦那様」
「おほぅ!?」
男の頬に両手を滑らせて、微笑みと共に彼女は彼の顔を覗き込んだ。
一目で虜になった麗しの姫君の急接近、しかも、これまでにない柔らかな笑みまで浮かべているとあって、パリスは反射的に奇妙な鳴き声を上げてしまう。
緊張に全身を強張らせる夫へ、エレーヌはさながら可愛らしい仔猫を見つめるように目を細め、そこへ慈しみの感情を乗せた。
「どうやら貴方の献身が、真摯な愛が、私の心に奇跡をもたらしたようです」
「へ?」
「パリスのおかげで私は夫を愛する気持ちを、そして、ごく普通の様々な感情を手に入れました」
「んなぁ!?」
彼女の説明を聞いて、パリスが咄嗟に戸惑いの声を上げる。
「んんん、んだども、オラっち何もっ、エレーヌ様さ好がれるようなこつ、何もすてねぇですっ」
「いいえ、貴方は報われぬと知りながら物言わぬ人形であった私を愛で続けてくださいました。
それは他の誰にも出来なかったこと、何よりも素晴らしいことです」
笑みを深めながら、エレーヌは指の位置をずらして夫の頭髪に差し入れた。
彼女の愛撫に、彼は首から上を真っ赤に染め上げて、目尻に羞恥の涙を溜めていく。
「そっ、そっただごと……」
「私の言葉は、信じられませんか?」
「信っ!? エレーヌ様ば嘘吐ぐわげねぇ! 信ずます!」
元農民らしい純朴さで、姫君の問いに全力の頷きを返すパリス。
ほんのつい先ほど、当の彼女から狂人さながらの態度で一方的に襲われていた事実は、すっかり記憶の彼方らしい。
彼の力強い回答に感激し、エレーヌは夫の太ましい首に噛り付いて大仰に歓喜の声を響かせた。
「あぁ、ダーリン! 私の運命のマッチョ様!
これからも私を妻として、たっぷり可愛がってくださいませ!」
「えっエレーヌ様っ!」
床に転がったまま熱く抱擁を交わす二人。
ちなみに、パリスが浴場を飛び出すキッカケとなった物音は、近所で飼われていた鳥が小屋掃除の隙に逃げ出し、換気に少しだけ開けていた二階の窓から侵入、そのまま近場の部屋へ飛び込んでペン立てを倒した、というのがその顛末で、捕獲し飼い主に引き渡した際など大層感謝されたらしい。
そんなこんなで、程なくして身も心も完全な夫婦となったパリスとエレーヌ。
その後、まずは二人きりの生活を目指して派遣の家政婦から家事を習ったり、外出先で他のマッスルに目を輝かせる妻へ夫が嫉妬も露わに自らの上半身をさらして「オラっちだげ見でけろ」「ひゃぁあん、いっぱいちゅきぃぃぃもうダーリンの筋肉しか見えないよぉぉぉ」などと常軌を逸したやり取りを公衆の面前で繰り広げたり、人形姫が人となったことで今更ながら彼女の血を惜しんだ貴族にちょっかいを掛けられるも、夫が英雄と呼ばれるに相応しい暴力性を発揮しズゴンと解決、ついでにエレーヌ当人が異常な筋肉愛を見せ付け「人形姫が壊れた」とドン引きさせるなどして事無きを得たりと、波乱万丈の騒々しい日々を過ごしながら、やがて三人の雄ゴリマッチョにも恵まれ、死が二人を別つまで、いつまでもいつまでも幸せに暮らしたのだという。
めでたし、めでたし
おまけ~裏事情的な天界話~
「ダメです、祓っても祓っても筋肉への欲望が……穢れが落ちません!」
「これだけ浄化を続けて変わらないなんて、なんてぇ執着だよ!」
「あぁ、この魂の循環期限はもうすぐそこだってのに!」
「しかも、次は人への生まれ変わりが決まってる……このまま下界に転生させたら、未曾有の筋肉的嫌がらせ嵐の小宇宙ことマッスルハラスメントハザードが……!」
「筋肉という筋肉が恐怖に脅え引きこもり、果てには世界中からゴリマッチョという存在が消失してしまう!」
「そうだ封印だ、封印しよう!
僕たちで力を合わせて、精神に最上級の封印を施すんだ!」
「けどっ、そんなことしたら、この魂を入れられた器はまともに生きることも出来ないんじゃ……!」
「世界を丸ごとひとつ混乱に陥れられちまう方が問題だろ!」
「大丈夫、この一回の生の間だけ凌げれば良いのです!
きっと、ご主神様もお見逃しになります!」
「早く早く、もう時間がないよぉ!」
「あぁーーもぉっ、後で怒られたって知らないからね!?」
「う、嘘でしょ!?」
「僕たちの最上級の封印が!」
「破られちゃったんですけどーーーーーーー!?!??」
「どんだけ筋肉に執着してんだよおおお!」
「逃げてーーーマッチョたち超逃げてーーーーー!!」
「いやっ待て! コレは!
あの世界で一番の筋肉達磨が偶然にも夫の立場にあったおかげで、しかも、その夫が結構なヤンデ……ヤキモチ焼きな性格だったおかげで、あの魂の無限とも言えるマッスル欲がいい感じに消化され、かつ、余所に目を向けさせない!」
「おぉ、なんて素晴らしい生贄……じゃない、偶然があってくれたものなんだ!」
「良かった、マッスルハラスメントハザードは起こらないっ!
世界は……救われた……っ!」
「こんのバカモンどもがッーーーーーーーーーー!!!」
「キャーーーー!?」
「ご、ご主神様ぁ!?」
「お主らの愚かな企ては全てまるっとお見通しじゃ!」
「ひえーーーーっ!」
「だから、僕、止めとこうって言ったのに!
だから、僕、止めとこうって言ったのにぃぃ!」
「で、でも、あの、ご主神様!
どうしても、穢れが落ちなくて、もう僕たちあぁするしかっ」
「そうだぜ、俺たちは世界のために仕方なく……ッ」
「何が仕方なくじゃ、このバカ弟子共が!
やって良いことと悪いことの区別もつかんのかーーーーっ!」
「ひゃーーーーっ!?」
「お主らが手前勝手に無茶な封印なんぞ施したおかげで、あの魂は二度と再生叶わぬ深き傷を負うところじゃったんじゃぞ!!」
「ええっ!?」
「そんな!」
「じゃ、じゃあ、もし、あの筋肉の人に偶然出会ってなければ、今頃……?」
「ええい、どこまでもトボけおって!
あの邂逅を偶然の産物と思うてか!」
「ふぁっ!?」
「違うのか!?」
「ワシが因果律を操作しておったに決まっとろうが!
お主ら、今まで一体何を学んでおったんじゃ!!」
「うわぁん、ごめんなさぁい!」
「すみませんでしたーーーーー!」
「これが謝って済む問題か!
全員、罰として滅亡待機世界最下級労働千年巡りの刑に処す!」
「いやだぁーーーーーー!」
「ご主神様、それだけは! それだけはお許しくださぁい!」
「ならん!
あの魂が封印を掛けられたままに傷付いておれば、彼女はもはや天に戻ること叶わず無の狭間で永久の苦しみに苛まれるところじゃったんじゃぞ!
己らが犯した所業の罪深さを知り、ゆめゆめ反省するが良い!」
「そんなぁーーーーー!?」
「ヤッダァァバァアアアアァアアアアアッ!」