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女神回収プログラム ~口外できぬ剣士の秘密と、姫への永誓~  作者: 呂兎来 弥欷助


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【48】やさしい夢

 普段と変わらぬ光景に忒畝トクセは安堵していた。今日は月に一度の、図書室での定例会。

 前には君主代理の充忠ミナルがいる。はっきりとした二重を持つ彼は、女子からの人気が高い。その人気は忒畝トクセと二分すると研究所内では囁かれている。愛想のいい忒畝トクセと、愛想笑いをしない充忠ミナル。二極化するのは、当然かもしれない。

 右には助手の馨民カミン。垂れ目の彼女はやさしく大人しい性格に見られがちだが、思いの外、言いたいことをしっかりと言う。ふたりとも、忒畝トクセとは長い付き合いであり、親友だ。

 ひとつの大きな机に集まっている彼らは、白衣を着用している。机の上には資料とあたたかいアップルティー。仕事中であっても、忒畝トクセの心が安らぐひとときだ。

「じゃあ、充忠ミナル。これをお願いね」

 忒畝トクセは笑顔だ。しかし、言われた方はおだやかではないようで、

「ちょ……忒畝トクセ、最近俺に振るの多くねぇ?」

 と苦笑いを浮かべている。

 定例会といえど、かしこまらずに気さくな口調で話すのが彼らだ。忒畝トクセは満面の笑顔を浮かべて楽しそうに言う。

「優秀な人を代理で持つと幸せだね」

「よかったわね、充忠ミナル。君主が認めてくれてるわよ」

「はい。とても光栄です」

 冗談ばかりのやり取りに、忒畝トクセは声を出して笑う。

「お兄ちゃん、これで全部?」

 悠穂ユオが五冊の本を抱えて来た。

 確認するように忒畝トクセがのぞき込むと、悠穂ユオは机の上に本を並べる。

「そうそう、これ。ありがとう、悠穂ユオ

 忒畝トクセは笑顔で返す。──そのとき。


忒畝トクセ

 聞こえたのは、悠畝ヒサセの声。


「あ……父さんが呼んでる。行かなくちゃ」

 忒畝トクセは立ち上がる。

「まぁた、お前は」

 充忠ミナルは笑う。

「ちょっと、行ってくるよ」

 忒畝トクセは笑って言うが、悠穂ユオが止める。

「お父さんも、来てくれれば……」

悠穂ユオ、またね」

 妹の声を遮り、忒畝トクセはうれしそうに駆け出す。


忒畝トクセ!」

 馨民カミン充忠ミナルが叫ぶ。


 ふと、忒畝トクセは振り返り、叫び返す。


「大好きだよっ! みんな、ありがとう! またいつか会おうねっ!」

 無邪気に大きく手を振り、背を向ける。


 その姿は、光の中に消えていった。

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