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年越し

日本酒飲みたい!

 紅白って偉大だと思う!

 誰もが見てしまう番組であり、興味のない歌も結局見てしまう。

 日本酒を徳利にうつし、レンジでチンして熱燗にしたものをこたつまで運ぶとツッキーさんはこたつでヌクヌクしながら紅白を見ていた。


「熱燗ですよ~」

「わ~い!あ、エイヒレと乾燥ホタテの貝柱買って来たんで食べましょう」

「わ~い!ホタテの貝柱好き!熱燗すすむ!」


 二人で紅白見ながらまったり晩酌の姿は端から見たらどんな風に見えるんだろ?

 こんなにまったり出来るのなんて実家に居るみたいじゃないか?

 

「実家に帰らないと紅白見られなかったから、今年は本当に助かりました」

「ツッキーさん実家に帰らないんですか?」

「俺の家族は海外旅行に行ってて実家はもぬけの殻です」

「寂しいですね」


 私の言葉にツッキーさんはヘニャっと笑った。

 

「今年は花さんが居るので寂しくないです」


 天然たらしか?


「私も今年は実家に帰らないんですよ」

「なぜ?」

「兄が仕事で鹿児島に住んでるんですけど、親達旅行がてら会いに行くんですって!私、お節嫌いなんでラッキーだったんですけどね」


 ツッキーさんは首をかしげてから言った。


「お節嫌いなんですか?」

「ほら、あの、ピラニアみたいなやつとか嫌いです」

「ピラニア?………田作りですか?俺も苦手」

「一緒だ!」


 私が笑いかけるとツッキーさんは困ったように笑った。

 

「花さん、後少しで今年も終わりですね………乾杯しませんか?」

「します!」


 私たちは笑いながら、お猪口に少し冷めた熱燗を入れて持ち上げた。


「「乾杯!」」


 テレビを見ればいつの間にか『ゆく年くる年』になっていて慌ててチャンネルを代えた。

 

「ツッキーさん……紅白どっちが勝ちました?」

「………見てなかったです」

「駄目じゃん!」

「面目ない」


 私達はお互いに顔を見合って笑ってしまった。

 ツッキーさんは気になる歌になるとつい歌ってしまうみたいで面白かった。

 私もツッキーさんが恥ずかしくないように口ずさんだりした。


「カラオケ行きたくなる」

「解る!今度カラオケ行きましょう!奢ります」

「ツッキーさんお金使いすぎ~」

「でもね、お金を使わないとストレスなんて無くならないだよ」


 それってヤバイやつじゃ?


「ストレス社会怖い!」

「花さんもすぐに仲間入りですよ」

「大人になりたくない!」

「なら、酒は飲めませんね」

「う、うぁ~ん!お酒は飲みたいよ~」


 ツッキーさんは面白そうに笑った。

 

「今は俺のストレス発散に付き合ってくれるだけで頼もしいので、奢るぐらい…させてください」

「奢りは助かります!けど、使いすぎて私が悪いみたいに言わないで下さいよ!」

「言いません。花さんには助けられてますから」


 ツッキーさんはニコッと笑うとまた、テレビに視線をうつした。

 この格好良い人が私の彼氏になるなんて考えられないけど、ツッキーさんは何となく親戚のお兄さんみたいに私の中で家族のような存在になっているのは間違いなかった。


「ツッキーさん、次は日本酒熱燗と冷酒どっちがいい?」

「あ、悩む………冬だし……熱燗?」

「了解です!」


 最初に会った時よりしゃべり方も少しずつ砕けてきているし、サラリーマン姿じゃないツッキーさんはカッチリした髪型じゃない。

 見た目固めに見える髪の毛を洗いざらしにしたかのようなボサボサの頭に少し寝癖まである。

 こんなに気をゆるしたツッキーさんは他に見られないと思うし、得してる気分だ。

 目の保養である。


「花さん、初詣行きます?」

「一緒に?」

「嫌なら良いです」

「嫌じゃないです!甘酒飲みます!」

「俺も!近くの神社のそばの和菓子屋さんが八海山で甘酒作るらしくて、気になってたんですよ」

「なにそれ!今すぐ行きましょう!」

「朝8時から、らしいから今はやってません」


 思わず口を尖らせてしまった。


「花さんは可愛いですね。男はほっとかないと思う」

「え~、男の人って合コンとかでカシオレ飲む女が好きじゃないですか!あと、バーニャカウダとか好きです~みたいな女が好きじゃないですか!私みたいに最初から焼酎の水割り頼む女は眼中に無いですよ!」


 ツッキーさんは首をかしげて言った。


「焼酎の水割りか~たぶん、ガード固そうに見えるからじゃない?」

「簡単に持ち帰れるとも思ってほしくないじゃないですか!」

「合コンに行くような男は持ち帰れる子が良いんだよ」

「マジか!」


 合コンでタダ酒を飲みまくる私に話しかけてくる強者なんてあんまり居ないのはそう言うことか。


「だから皆私を合コンに連れていこうとするのか?」

「え?」

「私の壁が高いなら、他は飛び越えられるように見えるってことでしょ?」

「ああ、レベルが高い子一人いるだけで次の合コンも期待できそうな気がして次を繋げやすいしね」

「レベル高い?」

「花さんは可愛いからレベル高い」


 イケメンが私をヨイショしている。

 本当にレベルが高いなら、私は今彼氏と年を越しているんじゃないだろうか。

 騙されないぞ!


「レベル高いツッキーさんに言われたくない!」

「俺は面倒なので合コンは行きません。それに、俺によってくる女ってブランド志向の強い人ばっかりだから………面倒臭い」


 ブランド志向?

 ああ、ツッキーさんは顔がブランド品レベルって事か!


「うわ、大変」

「そう、大変なんですよ!クリスマスは高級ディナーにアクセサリーのプレゼント、正月には旅行、バレンタインにチョコやったんだからブランドの財布寄越せとか誕生日なんだからブランドのバック買ってとか………彼女とか面倒臭い」


 可哀想。


「ツッキーさんが金銭感覚おかしいのは、そんな女に狙われているからか……」

「花さんと一緒にいるの落ち着く。花さんにも彼氏ができなきゃ良いのに~」

「うわ!呪いをかけたな!」

「呪われろ~」


 私達はそんな話をしながら、年を越したのだった!

皆様にとって今年が良い年でありますように!

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