年末の約束
紅白見てます!
クリスマスの次の日、呼び鈴が鳴り覗き穴を覗くと見知った男の人が立っていた。
あれあれ?ツッキーさん?
遊びに来るペース早くないですか?
ドアを開けるとツッキーさんは私に日本酒の一升瓶を見せた。
「同僚からもらいました」
「!飲みましょう!」
「言うと思いました」
ツッキーさんを家にあげると私は首をかしげた。
「ツッキーさん、今日はお風呂良いんですか?」
ツッキーさんは眼鏡をクイッと人指し指で押し上げると言った。
「今日は早めに帰るつもりなので」
「そうなんですか?」
「はい。一杯飲んだら帰ります。明日は忘年会なので一杯で我慢しようと思って」
「そうなんですか………」
私は湯呑みを2つ出すと、昨日の残りのおつまみも一緒に出した。
後、夕飯用に作った玉子焼きも出した。
ツッキーさんはコートとスーツのジャケットを脱ぎながらこたつの上に置かれた玉子焼きを見つめて言った。
「あ、玉子焼き美味しそう」
「どうぞ美味しいって思ったら今度は玉子買ってください」
貧乏女子大生に玉子を恵んでくれ。
「玉子ですね。他に必要なものはありますか?」
「………ツッキーさんは女性に騙されるタイプですか?」
「違いますよ。花さんの望みが低額だからですよ。勿論バック欲しいとか言われたら断ります」
「………エコバックなら欲しいかも、中が銀色の保温効果のあるやつ」
「エコバックは買っても良いですよ」
「駄目ですって!」
「何十万もしないでしょ?」
「二千円も出せば良いのが買えますけど………」
「了解です」
「駄目ですってば!」
ツッキーさんはハハハっと笑うと言った。
「じゃあ、出来る時にお返し下さい」
「お返し?」
「はい。今日の玉子焼きみたいなお返し」
何ていい人なんだ!
バイト先からもらったおかずも分けてあげよう!
「解りました!私にまかせてください!」
「期待してます」
ツッキーさんはこたつに入るとはぁーっと息をついた。
「明日、忘年会嫌だ~」
「へ?何でですか?少ないお金でしこたま飲めるじゃないですか?」
「そうなんですけどね~」
ツッキーさん用に出した湯呑みに持ってきてもらった日本酒をついで渡すと自分の湯呑みにも日本酒をついだ。
「上司のご機嫌とったり、酔っ払いの看病したり大変なんですよ」
「それは、気持ちよく飲めないですね」
「嫌でも行かない訳にはいかないので明日は楽しくない酒で我慢します」
ツッキーさんは湯呑みを口につけチビチビと飲み始めた。
私もツッキーさんの向かいに座ると言った。
「私も、友達に忘年会したいと言ったんです。そしたら、彼とデートだから無理って言われて………年末は1人で紅白見ます」
「あ!なら、年越しで一緒に飲みますか?カマボコにわさび醤油で一杯したい」
「うわ!それ美味しそう!年越しは番組何見ます?」
「紅白からのカウントダウンライブですかね?」
「一緒です!一緒に年を越しましょう!」
私とツッキーさんはお互いに年末の約束を取り付けたのだった。
今年一年ありがとうございました!
来年も宜しくお願いいたします!
皆様良いお年を~!