飲みカップル END
終わりです
呼び鈴が鳴って私は急いでドアを開けた。
目の前には大量の薔薇の花。
何事?
私は花束の向こうに居るツッキーさんを見た。
「花さん!俺と付き合って下さい」
突然の言葉に私は、一回ドアを閉めてみた。
何だったんだ?
花束に告白?
………告白?
私は、慌ててドアを開け直した。
垂れ下がる花束にうつ向くツッキーさん。
やっちまった!
「つ、ツッキーさんあの、えーと、とりあえず中にどうぞ」
「………はい。すみません」
うわ!凹んだツッキーさん可愛い。
って、駄目だよね?
好きな人から告白されたのにドア閉めたら。
ツッキーさんは花束をこたつの脇に置くとテーブルの上に日本酒と焼酎と赤ワインを置いた。
たっぷり飲む気満々だ。
「………花さん、一回家に帰って良いですか?」
「どうして?」
「………気まずい花束をゴミ袋に突っ込んできます」
「………もらいます」
ツッキーさんは顔を両手で隠すと呟いた。
「気まずい!」
私は、とりあえずお風呂場の洗面器に水をはって花束を水に浸した。
「ツッキーさん、ありがとうございます」
「………完璧なスルーをされると死んでしまいたくなります」
ツッキーさんはこたつに頭をのせて私の方を見ずに、今にも死にそうに呟いた。
「ツッキーさん、付き合うのって昨日の事思い出したからでしょ?」
「へ?」
「自分は危ない男だから警戒しろって言ったり責任とるから嫁に来いって言ったり好きだから抱き締めたいとか言ったりキスしてきたり首に噛みつくしキスマークつけるし………だからって責任感じて告白とかいらないです」
「………」
ツッキーさんは耳まで真っ赤になっている。
言葉にされると恥ずかしいよね!
言ってて私も恥ずかしい。
「うぁ~マジか!」
ツッキーさんは頭を抱えた。
抱えた指先まで真っ赤だ。
「まあ、気にしない気にしない!飲みましょう!」
私は、とりあえず赤ワインを手に取った。
その手をツッキーさんに掴まれて、私は首を傾げた。
「待って下さい」
「はい?」
「飲むの、ちょっと待って下さい。俺の話を聞いて下さい」
「?」
ツッキーさんは深呼吸を一度すると言った。
「昨日言った事は本当です。俺は花さんが好きです。花さんが好きだから抱き締めたいし、キスしたいしそれ以上も出来たらいいなって思ってて………それを全て可能にするには花さんが俺の彼女じゃないと駄目なんです!」
私は、驚いて掴まれている手を見つめた。
「花さんほど好きな人は居ません!これからも、出来る気がしない。だから、俺と付き合って下さい!」
ツッキーさんの真剣な顔に自分の顔に熱が集まるのが解った。
ツッキーさんから色気が漏れ出ている気がする。
「そんな可愛い顔されると、酔ってなくても襲いたくなる」
「えっ!あの、ツッキーさん」
「俺は花さんが好きです。強く拒まないなら調子にのります」
それ、最初にキスされた時も言ってた!
ツッキーさんの顔が近づいた。
キスされる!
そう思ったが、ツッキーさんはこたつに座っているし、私は、ワインのビンを掴んだ手をツッキーさんに掴まれている。
私の唇とツッキーさんの唇はとどくわけがないのだ。
「こたつが憎い」
ツッキーさんの呟きに思わず笑ってしまった。
ツッキーさんは私の手を離すとこたつに突っ伏した。
「俺は何でこたつに座ってしまったんだ~!」
「癖ですよ」
「習慣が憎い」
ツッキーさんは怨めしそうに私を見上げた。
「俺、諦めるつもりないんで警戒して下さい。隙があれば襲いますから」
「襲わないで下さい」
「無理です」
「何で!」
「好きだからです」
ツッキーさんは困ったように笑うと言った。
「好きな人が自分の前で無防備だと、男は勘違いして浮かれてしまうんですよ」
ツッキーさんは困ったようにヘニャっと笑った。
ああ、やっぱり好きだ。
私は、ゆっくりとツッキーさんの唇に自分のを重ねた。
ああ、これが襲いたくなる気持ちなんだな。
解ってしまった。
好きな人が無防備にしていたら、そりゃ、男じゃなくてもキスしたくなるよ。
「は、花さん?」
唇が離れると、ツッキーさんは目を丸くしていた。
「ツッキーさん、どうしよう!私、ツッキーさんが好きです。ツッキーさんが無防備にしてたら襲いたくなる。ツッキーさんは肉食女子嫌いでしょ?」
ツッキーさんは顔を両手で隠すとこたつに足を入れたまま倒れた。
「何それ、鼻血でそう」
「ツッキーさん?」
「好きな人から好きだって言ってもらって嫌いになるわけないでしょ?」
言われてみればそうだ。
ツッキーさんに好きだって言われて、私は嬉しかった。
「う、嬉しい?」
「当たり前でしょ」
「私も嬉しい」
「うっ」
思わず笑顔を作ると、ツッキーさんは息を飲んだ。
どうしたんだ?
思わずツッキーさんの顔をのぞきこむと、ツッキーさんに腕を掴まれて引き寄せられツッキーさんに抱きついてしまった。
「花さん、可愛過ぎます」
「へ?」
「花さんは何処もかしこも柔らかくて美味しそう」
「つ、ツッキーさんのドエロ!」
「そう、俺はむっつりだしドエロです!触らせてください!」
「ストレートに言った!」
「言わなきゃ解らないでしょ?俺がどれだけドエロか?教えるので受け止めて下さい」
「あ、あの」
「大丈夫、優しくするから」
「えっ!あの………怖い」
「………」
ツッキーさんは真っ赤になると私の肩に額をのせた。
「煽りすぎ」
「あお、煽ってなんて」
「煽った」
「煽ってない」
「俺しか知らない顔も声も独り占め出来ると思ったらたぎる」
「た、たぎる?」
私はツッキーさんの腕の中で思わず赤面してしまった。
「可愛い!全部俺んだ!」
「ツッキーさんキャラ違くないですか?」
「花さんの前だけです」
ツッキーさんはそのまま私にキスをした。
お酒の匂いがしないキスは別の意味で酔ってしまいそうだと思った。
「花さん、幸せにします」
「その前に兄と戦っていただくようになると思います」
「………お兄さん?」
「極度のシスコンなんです。一樹は比になりません」
「………強敵あらわる?」
「まあ、強敵です」
「………花さんと幸せになるためなら、死ぬ気で頑張ります」
私は苦笑いを浮かべた。
「私も一緒に戦います」
ツッキーさんは蕩けるような笑顔で私を強く抱き締めてくれた。
「じゃあ、ツッキーさんが買ってきてくれたお酒飲みましょう」
「花さんはお酒が大好きですね」
「ツッキーさんの方が好きですよ?」
「お酒は後にしましょう」
「嫌です!ワインが飲みたい」
「俺は今すぐ花さんを味見したいです」
こうして、ツッキーさんと私は飲み友達から飲みカップルにクラスチェンジしたのであった。
END
終わってしまいました!
今まで、お付き合いいただいてありがとうございます!




