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損した気分?

期待はずれでしたらごめんなさい。

「うっ、あったま痛て~………花さんおはようございます」

「………」


 ツッキーさんが起きたのは次の日の朝7時15分。

 私は、一睡もしていない。

 ツッキーさんは頭を押さえている。

 

「ツッキーさん」

「はい」

「昨日の夜の記憶はありますか?」

「昨日の夜?………一樹君が帰って沈黙のまま飲んで………………俺、なんかしました?」


 やっぱり覚えていない。

 この何も覚えていないツッキーさんに、貴方は私に大人なキスしたんですよ!って言ったところでどうなると言うのか?

 下手したら付き合いたいからそんなベタな嘘をついているなんて思われてもおかしくない。

 何なんだ!覚えていないなんて………

 ファーストキスだったのに!

 ツッキーさんは私を見ながら不安そうな顔になっていっていた。


「俺、何しました?」

「覚えてないなら良いです」

「良くないです」

「ツッキーさんが忘れてるなら私も忘れますから大丈夫です!」


 ツッキーさんは少し驚いた顔の後、青くなった。

 

「ヤバイ事しましたか?」

「………」

「何したんですか!教えてください」

「………言いたくないです」


 更に青くなるツッキーさんは何時ものツッキーさんだ。

 昨日のツッキーは格好良くて色っぽくて可愛くて怖くて………ちゃんと男の人だった。

 これを言ったらツッキーさんはもう家に来てくれなくなると思う。


「花さん!」

「ツッキーさんは記憶が無くなるまで飲むの禁止!」

「はい!」

「でも、飲まないのも禁止!」

「はい?」

「だって、つまんないし………」

「花さん………次からはセーブします。だから、俺が何をしたか教えてください」


 ツッキーさんは真剣な顔でそう言った。

 言いたくないんだよ。

 ツッキーさんと一緒に居たいから。


「花さん!何ですか?押し倒したりしました?」


 押し倒すよりはマシなのだろうか?

 どこまでなら言っても良いんだろ?


「押し倒したりはしてないです」

「良かった………じゃあ、調子にのって抱きついたり?」


 調子にのって、二回目のキスをしました。

 なんて、言えるか!


「言いたくないです!」

「抱きついたりしたんですね!大丈夫でしたか?」

「してないです!もうこれ以上は、黙秘権を行使します!」


 ツッキーさんは納得いかない顔をした後、こたつから出て私に向かって土下座した。


「覚えてなくて、申し訳こざいません」

「や、やめて下さい!居たたまれなくなる!」


 ツッキーさんは眉毛を下げて申し訳無さそうな顔だ。


「ビックリしただけですから!」

「……ビックリ?………まさか、あの、キスとか………」


 ツッキーさんの言葉に思わず顔が熱くなる。

 それに反比例して、ツッキーさんの顔が真っ青になったのが解った。

 ああ、ファーストキスだの何だのと言ったらツッキーさんは死んでしまうかも知れない。

 私はその時本気でそう思った。


「び、ビックリしただけですから!気にしないで下さい!お願いします!」

「でも」

「でも、じゃないんです。私はツッキーと一緒に飲むのが好きなんです!だから、忘れますからまた一緒に飲みたいんです!」


 私の主張は通じたようでツッキーさんは苦笑いを浮かべて頷いてくれた。

 忘れられるわけないけどツッキーさんとは一緒に居たい。


「花さん、お腹空きませんか?どっかで朝飯食いませんか?奢らせて下さい」

「じゃあ、いっぱい奢ってもらおう!」

「勿論、喜んで」


 ツッキーさんは蕩けるような笑顔を作った。

 そんな笑顔困る!

 心臓がドクリと音をたてた。

 私は顔に熱が集まるのが解った。

 ああ、普通じゃ居られない。

 

「どうかしましたか?」

「ツッキーさんは狼男です」

「はあ……?何の話ですか?」

「昨日、ツッキーさんはバンパイアだと思うって話をしたんです………でも、狼男の方が似合います」

「………野獣的って事ですか?」


 ツッキーさんのキスは野獣的でした!

 口が裂けても言えないけど。


「花さんは小動物みたいですよね」

「そ、そうですか?」

「はい。フワフワしてそうで撫でたくなる」


 うわ~ん!

 ツッキーさんの言葉が全部卑猥に聞こえる!


「花さん、何を食べます?洋食?和食?中華?」

「………お粥食べたい」

「なら、中華粥なんて良いかも知れないですね。穴場を知ってるので行きますか?」

「……はい」


 私はコクりと頷いた。

 ツッキーさんは玄関に向かい。

 私はそれを追いかけた。

 玄関で靴をはいたツッキーさんと目があった。

 ああ、ドキドキする。


「………俺、花さんにキスしたのか。覚えてないなんて損した気分だ」


 真面目な顔でツッキーさんが呟いた。

 小さな声だったけど、聞こえてしまった。


「………えっ?」

「いえ、何でもないです。行きましょう」


 ツッキーさんは私が聞こえなかったと思ったのかニコニコしながら玄関のドアを開けた。

 ど、どうしたら良いの?

 わ、私、このままツッキーさんと一緒にいたら心臓が壊れてしまうかも知れない。

 私は訳の解らない動悸と息切れに死にそうだと思いながらも、ツッキーさんを追いかけたのだった。

なんか、どうしたら良いのか迷走中です。

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